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何処までも落ちる

side 008番(赤嶺黒兎)



 正直、まだ信じられない。この世界に転生してからもう20年近く経つが、生まれ落ちたその瞬間からこの首に付けられていた忌々しい首輪が、もう外れているなんて。今まで、俺たちは奴隷商人達の目を盗んで、この首輪を壊せないかを試してきた。【能力の使用禁止】や、【自殺禁止】など数々の命令を降され行動の制限が著しいこの生活の中で、何とかルールの抜け道を見つけ出してこの首輪を破壊出来ないかを試してきた。


 幸い、この世界の人間は頭が悪い。教育が行き届いていないんだ。未だに音が空気の振動だと言うことを分かっていないし、この星が丸いって言うこともつい最近判明したことだと言うのだから笑わせる。計算や読み書きが出来るのは一部の貴族や大商人だけで、一般の人間は農業とかで生活をしている。・・・だから、奴らが俺たちに掛けた命令の抜け道なんて幾らでもあったさ。・・・そして、その全てを試して、俺たちは本当の意味で絶望した。


 この首輪は壊れないようになっている。それこそ、どんな事をしても壊れなかった。見た目は唯の革製の首輪なのに、切れないし燃えない。戦闘訓練の時に能力の使用制限が解かれるんだが、その時事故を装って首輪に能力を使用してみた時も傷すら入れる事は出来なかった。


 だから皆諦めた。寿命が来て死ぬ事だけを救いとして、耐えて耐えて耐えた。・・・そして、とうとうこの日が来んだ。


 この少年からは、何かを感じる。未だに翼すら展開していないのに、首輪を破壊することが出来るだけの能力を持つ人間など、見たことも聞いたこともない。そもそも、俺は今まで、『羽根付き』の能力は翼を展開しなければ不可能だと勝手に思い込んでいた。少なくとも、俺が話したことのある『羽根付き』は、全員能力使用の際には翼を展開していた筈だ。俺は、この少年こそ救世主だと思い始めている。・・・だから、俺たちだけじゃなく、まだ『牧場』に残っている奴らも助けたい。この少年・・・いや、救世主の傍に居ることが救いなのだ。俺たちは、やっとこの地獄から開放されるのだ。




 『牧場』に囚われている仲間を助けて欲しいと頼むと、彼は一瞬驚いた顔をして、その後直ぐに頷いてくれた。最初の表情が気になるが、やはり彼は俺たちを救ってくれるのだ。


 だが、ここから『牧場』までは距離がある。歩いて4日位の距離だ。転送系の『羽根付き』がいれば一瞬なんだが、残念ながら今その能力者は居ない。転送系の能力は貴重で戦争時には重要な戦力となるので、国軍などに奴隷として売られるからだ。だが、一刻も早く仲間を救ってやりたい俺は、少年に提案をした。


「俺の能力なら移動時間を短縮出来るから、使わせて欲しい。」


 その言葉を聞いた瞬間、彼は顔を青くして反論し始めた。・・・何故だ?俺の能力を使ったほうが早く着くと言っているのに、何故彼は反対するのか?・・・と思っていたら、彼は突然反論を止めて、渋々といった表情で俺の提案を認めてきた。・・・・・・よく分からない少年だ。


 だが、認められたなら問題ない。俺は、此処に居る全員を一箇所に集めて、先程オリハルコンで糸を作っていた青年に俺たち全員が入れる球体を作って貰う。この青年の能力は”オリハルコン作成”で、貴重なオリハルコンを無限に作成出来ることから金策に使われていた。そのせいで、無限に金を生み出す奴隷として国王自らが飼い主になる筈だった男だ。オリハルコンの硬度はこの世界でも随一で、オリハルコンで創られた武具は伝説級の代物になるらしいからな。一奴隷商人が持っているのは危険過ぎる奴隷だったわけだ。


 ”光操作”の能力を持っている女性に内部を明るくしてもらう。彼に包んで貰った中で、俺は能力を行使した。俺の能力は”重力操作”。重力の強弱や、重力の方向などを操作することが出来る能力だ。俺は、先ずこの球体の内部を無重力状態にして全員を浮かせた。更に、”風操作”の能力を持っている男性にエアマットのようなものを壁一面に張り巡らせて貰う。これで、壁にぶつかっても怪我をしたりはしないだろう。


「さて、じゃあいくぜ!」


 俺は、球体に掛かる重力を進行方向へと向けた。・・・つまり


『う、うあああああああ!!』


 俺たちは、”道の先に落ちて”行った。因みに、球体を地面に押さえつけるように軽く重力を掛けているので、空に向けて落ちていったりはしない。地面を転がりながら、重力加速度に従ってどんどん加速する。


 俺たちは、徒歩なら4日も掛かる距離を、たったの一日で埋めたんだ。・・・まあ、いくら無重力状態っていっても中は結構揺れるから、皆グロッキーになっていたけどな。


 ・・・それより、球体から出てみたら、側面に赤黒いナニカがへばりついていたりしたけど、何だったんだろうなアレ?


彼は一直線に『牧場』に戻る為に、最初からその方向に落ちていきました。つまり、道じゃない所もオリハルコンの硬度に任せて突き進んだ訳です。・・・当然、色々轢きますよね。

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