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先ずは服だ。

side 翼


 さて、奴隷商人を倒して、全員を開放した後の話だ。


 全員、何かしらの怪我を負っていたので、どうにかして治療出来ないかと思っていた。そして、グノーにそれを尋ねてみた訳だ。


(彼らを治療する方法はあるのか?)


 それに対する彼の返答は、Yes。


『彼ら自身に治療させればいい。今の君なら、誰がどんな能力を持っているかが見えるはずだよ。誰か一人をジッと見つめてごらん。』


 そう言われて周りを見渡した俺は・・・サッと目線を下に逸らした。


『何をしてるんだい?見つめなきゃ『視る』ことは出来ないよ?』


 グノーはそう言うが、分かって言っているのか!?それとも神様には分からない感覚なのか!?


(周りは全員裸なんだよ!!)


 いくら骨と皮ばかりになるまで痩せ細っているとは言え、女性の裸をジロジロと見るのは問題があるだろう! ・・・・・・っていうか、女性の裸なんて見たのは何時以来だ・・・?確か、去年アイツが着替えをしている時にウッカリ部屋に入って以来か?くそ、彼女いない歴=年齢を舐めんな!どっちにしろ恥ずかしくて見れねえよ!


 だからと言って、男性の裸をジッと見る趣味は俺には無い!何ども言うが、俺たちは元日本人なんだ。そういうことには厳しいと思う。


『成程・・・確かに、僕の配慮が足りなかったね・・・。』


 と言うと、グノーは暫く考えた後、違う提案をしてきた。


『なら、先ずは服を作ろう。』


(服?そんなの作れるのか?)


『簡単さ。服を作ってくれと言えばいい。』


(・・・は?)


『彼らはそれだけの力を持っているんだ。本当は、君の能力を実感させてからにしたかったんだけど、恥ずかしくて見ることが出来ないんじゃ意味がないからね。君の能力については、後で確認しよう。兎に角、試してみなよ。』


 とグノーが言うので、取り敢えず試して見ることにした。


「あの、スイマセン!」


 と俺が叫ぶと、全員が一斉に俺を見た。・・・しょ、正直、ビビッた。こんなに大勢から注目されることなんてなかったし。コミュ力5のインドア派舐めんな。


「こ、この中で、服を作れる人いますか!?」


 だが、ここで怖気付いていたら、アイツを救うなんて夢のまた夢だ。だから、勇気を振り絞って叫ぶ。


 (・・・でも、服を作るとかどうやるんだろう?布も糸もないのに。)


 とか俺が思っていると、何人かが手を挙げた。


「は、はい!材料さえあれば、作れます!」


(でも、その材料がないんだよな・・・)


 と思っていた俺だが、次の人に驚かされた。


「なら、俺が材料を作る・・・・・ぜ。」


(材料を作るって・・・どういうことだ?)


 その男性は、背中に翼を広げた。


「う・・・わぁ・・・・・・。」


 何度見ても圧倒される。その存在感、神々しさ。俺はまた感嘆の声をあげていた。


 その翼は、銀色の光で構成されていた。無数の光が繋がって、一対の翼を形作っている。


(ん・・・?)


 だが、その翼は、先程奴隷商人を殺した男の翼とは微妙に違っていた。色は勿論違うのだが、形や大きさも違うのだ。先程の男の翼は、例えるならば大鷲のようなしなやかさと力強さを持っていた。だが、この男の翼は、陶器のような硬さと、直ぐに割れてしまいそうな儚さを持っているのだ(・・・触って確かめた訳じゃないから見た印象なんだがな)。


 ・・・何を言っているのか分からない人も居るかも知れないが、これ以外に表現しようがない。それ程不思議な光景なんだから。もしかしたら、翼は個人差があるのかもしれない。


「じゃあ、作るぜ。」


 と言って彼が両手を前に出すと、その手の中に、銀色にキラキラと輝く細い糸がどんどん現れる。それは手の中では収まらず、地面に落ちても止まらなかった。結局、数メートル程の山になるまでその糸は出続けたのだ。


「・・・・・・・・・!」


 目の前で起きた幻想的な光景に俺が言葉を失っていると、先程手を挙げた女性が翼を出した。


 その女性の翼は、純白で構成されていた。しかし、これを翼と呼んでもいいのか?まるで、リボンのような翼が、ユラユラと風に揺れていた。


「・・・いきますよ。」


 その女性の翼が、ユラユラと風に乗り、銀色の糸の山に触れた直後、変化は起こった。


 糸が勝手に宙へ浮かんで、自身を・・・編み始めた・・・・・のだ。


 まるで、服飾関係の工場の作業映像を早回しして見ているようだ。だが、当然こんな場所にそんな機械があるはずもない。


 糸は、縦横無尽に飛び回り、またたく間に一着の洋服を作り出してしまった。それは、色が凄く派手なこと以外は現代日本で着ていても全く違和感が無いほどの出来栄えだ。 


 そして、出来た洋服は、裸で居る人達に配られていく。


 こうして、全身銀色の集団が誕生したのだった。




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