どうして外れたし・・・
side 冒険者のリーダー
「し、信じられねえ・・・。」
「リーダー、俺は何か悪い夢でも見ているのか・・・?」
「安心しろ、俺も見ている。」
怪我をした仲間の治癒を終えて、雇い主を救出しに来た俺たちが見たのは、首輪が外れて自由になった『羽根付き』共だった。雇い主である、この辺の奴隷商人の中では一番権力があるフランの姿は何処にも無い。恐らく、逃げたか・・・或いは既に殺されたか・・・。多分後者だろうな。あの豚が『羽根付き』から逃げられるとは思えん。
しかし・・・
「何なんだよ、あいつは・・・!?」
部下の一人が震えながら呟く。だが、今はそれを臆病だなどと言えない。俺たちを身体能力だけで倒したあの『羽根付き』が何かをしたから、他の奴らの首輪が外れているに違いないからだ。
「どういうことだよ・・・?あいつの能力は身体能力の向上じゃねえのかよ・・・?」
一人の『羽根付き』に能力は一つ。それは決まっていることだ。あいつは能力を複数持っているのか・・・?
そもそも、最初から外せない構造になっている首輪をどうやって外したのか・・・?
あれは、『名前を剥奪された神』が作り人間に与えて下さった特別な首輪だ。『羽根付き』だけにしか効果が無く、そして誰にも壊せない。
以前、『羽根付き』を救おうとした馬鹿な連中があの首輪を壊せないかと実験していたらしいが、どんな武器でも、どんな魔術でも壊せなかったらしい。呆れたことに、伝説級の武器を手に入れて実験したらしいが、それでもダメだったと聞いている。・・・まあ、そいつらは薄汚い『羽根付き』を救おうとしたせいで国家反逆罪で処刑されているがな。
「・・・もしや、あいつらの生き残りなのか・・・?」
もし、奴らの組織で処刑されていない奴がいて、そいつらが首輪を壊す方法を発見していたとしたら・・・?
「これはヤバイぜ。国に報告しないと・・・。」
『羽根付き』の力は、俺たち『人間』とは一線を画す。魔術とは比べ物にならないほどの威力を持つ攻撃を、体力が続く限り撃ち続けることが出来るんだ。それ以外にも、『物質創造』や『瞬間転移』など、特殊な力も多い。
『羽根付き』を使った戦争では、『羽根付き』の数が十人でも多い所が勝つとまで言われている。それほどの戦力だ。
その『羽根付き』が、60人。今、首輪の束縛から逃れて自由になっているのだ。これは、早い内に国王に報告して国軍を派遣してもらわなければ、どうなるかわからんぞ。
「・・・撤収だ。早く逃げるぞ。」
俺の指示に文句のある馬鹿はいないようで、俺たちは森の木々に隠れるようにして撤退した。
「・・・・・・くそ、いい稼ぎになると思ったのに、とんだ貧乏くじを引いちまったぜ・・・。」
これからは、『羽根付き』の搬送なんか引き受けねえと、固く心に誓ったのだった。