世界の怪剣・奇剣
タイトル元ネタが分かる方、どれだけいるのやら
魔剣。
これは、呪われているとか、そういう禍々しいものではない。
何らかの魔術効果が付与されている、そうした剣を指す。
現代技術では再現困難な、失われた技術の賜物である。
その魔剣が、今ここ、冒険者組合の倉庫に並べてあった。
◆
発見は偶然である。
先日、もう「枯れた」と言われ調べつくされたと思われた遺跡にて、
なんと入口のすぐ近くから隠し部屋が発見されたのである。
隠し部屋が見つかった事で「まだ隠されているものがあるか?」と、
探索や発掘を得意とする大勢の冒険者が押し寄せたのだが、
そんな中見つかったのが、この場にあるいくつかの出土品。
うち魔剣は五本、小剣が三本に大剣が二本。
いずれも何らかの魔力を帯びている。
錆ひとつ浮いていない事も、遠巻きに見ている者達の期待感を上げた。
劣化していないなら、物凄い能力を秘めた魔剣なのではないか…?
いや、入口付近から出たんだぞ?案外しょぼい性能かもしれん。
倉庫には発見者の冒険者一行を含め、多数の弥次馬までが息を吞み、
これから行われる《解析》が使える魔術師の結果を待ち望んでいた。
◆
ようやく魔術師がやってきた。皆の視線が集まる。
実のところ《解析》を使える魔術師は数少ない。
使用する局面は多そうなのだが、見た目が派手な攻撃魔術ではなく、
しかも魔術構成式は複雑で難易度が飛び抜けて高い。
体内魔素の消費量も多いとあって、人気のない魔術だった。
上手く扱えば、大金を産み出す魔術ではあるのだが。
さて、一本目の小剣に魔術師が右手をかざす。左手は紙の上だ。
術が発動したらしい。かざされている紙に文字が転写されていく。
魔術師は長く息を吐いた。《解析》が終了したらしい。
横にいる組合職員が、転写された紙を読み上げる。
「剣の銘は、特になし。製作者は不明。
刀身は、硬化魔鉄合金製。
付与されている効果は、以下の通り。
行動速度上昇、攻撃威力上昇、対象への麻痺効果、不壊」
うおおお、と声をあげる弥次馬達。興奮する発見者達。
これだけの性能、売り払うならいくらになるのか見当もつかない。
魔素回復の水薬を飲み終えた魔術師が、次の小剣に取り掛かる。
途端に静まり返る倉庫。だが中の熱気は高まるばかり。
転写が終わり、組合職員がまたそれを読み上げる。
「剣の銘は、特になし。製作者は不明。
刀身は、硬化魔鉄合金製。
付与されている効果は、以下の通り。
感覚鋭敏化、所有者の自然回復促進、対象の行動予測、不壊」
先程よりも大きな歓声が倉庫内に響く。
これは無理もない。持ち主が戦闘時に圧倒的有利に立てる代物だ。
興奮が収まらぬ間に、魔術師は三本目の小剣を《解析》し始める。
ざわざわと落ち着かない弥次馬達。期待する発見者達。
「剣の銘は、特になし。製作者は不明。
刀身は、硬化魔鉄合金製。
付与されている効果は、以下の通り。
肩凝り改善、腰痛改善、眼精疲労改善、不壊」
…微妙な空気が漂う。辺りのざわめきも熱気も静まっている。
読み上げた職員も、なんとも言えない表情を作っていた。
いや、魔術師も職員も、誰も悪くはない。ないのだが。
そして小剣の性能も、有用なもののはずなのだが。
三本目でこんな効果が付いたものが出てくるとは。
少し落ち着いた倉庫内で、まあ仕事だしと割り切った魔術師。
水薬を飲み、次の対象物である、大剣の一本目へ手を伸ばす。
弥次馬達も「まあ、当たりはずれはあるよな」と無理矢理納得し、
改めて魔術師の《解析》が終わるのを静かに待つ。
職員が読み上げる。
「剣の銘は『ああ青春の一幕よ』。製作者は『愛の伝道師』。
刀身は、硬化魔鉄合金製。
付与されている効果は、以下の通り。
どもり改善、異性に対する魅力上昇、体臭抑制、不壊」
倉庫内は冷めきった。製作者なにもんだよ。
いや、解析されたからわかっているが、それでもなにもんだよ。
告白には有用だな、大剣背負って告白する奴がいるんなら。
確かにすごいよ。すごい効果だよ。うん。だけどさぁ。
そして銘よ。
魔剣「ああ青春の一幕よ」とか恥ずかしくて使えんわ。
武器としても使えるのが救いか?所持したいかは微妙だが。
何故魔剣で作ったのか教えておくれよ『愛の伝道師』。
うおっほん、と空ぜきをする魔術師。まだ一本残っている。
そうだ、まだあるのだ。もう娯楽としてみればなんでもいい。
固唾を飲んで、皆が結果を待つ。
「剣の銘は『キミのヒミツを暴きたい』。製作者は『愛の伝道師』。
刀身は、硬化魔鉄合金製。
付与されている効果は、以下の通り。
対象の弱点看破、透視効果、精力上昇、不壊」
また『愛の伝道師』だよ。
もう弥次馬達は誰も声をあげない。
魔術師も職員も、気まずさを隠さない。
発見者達も、虚無の表情で固まっている。
空気を読まず、職員は告げた。
「《解析》は以上となります。費用は契約通りお支払いください」
◆
発見者達は、長い間もめにもめた。
どれを売り払うのか。どれを手元に残すのか。
小剣二本は、高値が付くだろうが正直持っておきたい。
三本目は、武器として使えはするものの、何か割り切れない。
そして大剣二本は、普段使いどころがない。
しかし、売れるかどうか分からない。
買い手はいるかもしれないが。有用は有用だし。
最終的に、三本目の小剣は売ることになった。買い手も即決定した。
まあ、武器としてでなく必要な人は大勢いるだろう。あの効果なら。
《解析》料金はそれなりに高額だったが、売り上げで利益も出た。
二本の大剣は、冒険者組合に寄贈。貰う組合側も微妙な表情だった。
現在は組合長室の壁に掛けられているらしい。
「対象の弱点看破」は多分、耳たぶとかうなじとかがわかる効果。
二本の小剣も、大剣目線で見ていただくと意味が分かるかと。




