表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/22

始まりの回帰

当作品は、以前携帯HPに掲載したことがあります。

また、コミケにもコピー本で無料配布で置いたこともあります。

数年経ち、続きのイメージができてきたので、もう一度公開したいと思いました。

文章や表現の一部が変わっています、一応念のため。


読んでいただいた方が、小笑いしてくれたり、物語に出てくる誰かに、少しでも感情移入していただけたら幸いです。

紅く、赤く、あかく、アカク…

磔にされ、槍に貫かれた身体は、燃え上がる炎に包まれていく。

天の使い…『天使』と呼ばれた二人の人間が、焼けていく。

一人の少年が、その姿を遠くから見ている…


この時から十数年前、西の各国では、伝承に残るだけの筈の強力な多数の悪魔や悪霊、堕天使による侵略が始まっていた。一人のある狂った聖職者が、世を恨み、悪意ある者の召喚の儀式を行ったのだ。

その人間は喰われ、制御を失い暴走した方陣の中から、あらゆる悪が溢れ出した。

彼らによる略奪、破壊、強姦…人々には為す術もなかった。


しかし、神や天使はそれを黙って見ているわけにはいかなかった。地上人を守るため、舞い降りて来たのである。

だが、悪魔達の群れは彼らの想像以上の力を持っていた。神格者や上級の天使は立ち向かえるものの、下級の天使では歯が立たない程強力になっていたのだ。


神格者や上級の天使から下級の天使に力を分け与えることは、力の大きさが違うだけで同じ力を持っていることになるため、受け入れる器がない。だが、何の力も無い人間に『奇跡』を与えることはできた。

そして、神々は、力を受け入れることのできる器を持つ、適応する人間に、後に『天啓』と呼ばれる力を与えた。その証に、それぞれことなる『刻印』を身体につけたのである。



『天啓』を受けた人間には、天使の力を使役することができる能力、そして類い希なる運動能力・視覚・聴覚が備わった。人によってそれぞれ使役できる天使は違うが、それぞれが小さな力でも、人に備わっている潜在能力と天使の力が、悪魔達に対抗できる程にまで強まったのである。

当時より伝説とされていた聖ベテルギウスや聖ジャンヌ・ダルク、聖母マリアといった、死してなお高潔な魂をもつ英雄達が、神の力により顕現し、人々を救ったと言うのも有名な話である。

戦いは長くは続かなかった。『天啓』を受けた半数近くの人間の力が、あまりにも強大だったからである。その力は、上級天使に勝るとも劣らないものであった。人の未知なる力と天使の力が合わさるのだから、その爆発力を考えれば当然、という解釈だろう。何せ、神の為すことは人々には理解しがたいことであるから…。



戦いは終わり、地上には戦いの傷跡と、『天啓』を受け、力を持つ者が残った。それから数年、神や天使達は地上に顕現することが、ぱったりと無くなった。確かに、神格者や天使達の力は、大きい。だが、戦いという物は、かくも厳しい物である。来るべき次の「聖戦」に備え、休養に入ったのである。そのようなことを人々は知る由もない。そうしたことから、地上に姿を現さなくなった天使達。後に、『天啓』を受けた人間を、だんだんと人々は天の使い、『天使』と呼ぶようになる。

大衆により、『天使』と呼ばれるようになった『天啓』を受けた人々。彼らはどこへ行っても、英雄として崇められるようになった。力を持つことにより、自分の国の王に呼ばれ、側近として働くようになった者も多い。

しかしそれ故、彼らを良く思わない者達もいた。『天使』と呼ばれる人間が城に入ることにより、それまで王室に仕えて、『天使』に立場を追われる形となった者が、各国より7人集まり、ある作戦を実行した。


大衆は、周りに流されやすく、上に逆らえない、それでいて結束力のある人間の集まりであることを知っていた彼らは、それが強みであり、利用する手段だった。

彼らは、とある森の中にある使われてない一軒家を、人が暴れたかのように細工した。

そして、『天使』そっくりな格好をした実行犯が、一人のターゲットの町人を誘拐し、薬で眠らせた。

同時に、その『天使』を、ターゲットとなった町人になりすまし、同じように誘拐し、薬で眠らせた。


それから2日後。

一人の町人と『天使』が、町から消えたという噂が、近隣に行き渡る。いくらかの目撃者は、正しいことを言っている。しかし、違う場所、同じ時刻に、両方がお互いをさらうという怪奇としか思えないこの事件は、混乱した情報を多々生み出した。


まさにそれが、彼らの狙いだった。

後は、森の中の一軒家で、『天使』が町人を殺したように工作して、まるで『天使』が町人を殺したことを後押しするように、「森で友人数人と狩りをしていたら、近くに一軒家を見つけた。ちょうどいいから休もうと思ったら、変なにおいがした。何事かと思って中を覗いたら…」とでも言って、自分たちが、無関係の第一発見者にでもなればいい。怪しまれることなど、何もないのだから。

計画は最終段階に入った。あとは、町人を殺し、自分達がやったという証拠を無くし、『天使』が殺したように見せかけて、通報すればいい…。


『天使』を椅子に座らせ、その前で町人を殺そうとした、その時だった。

『天使』が目を覚ましたのである。やはり、普通とは違う人間。それを分かっていて、通常の倍以上の濃度の睡眠薬を使ったのだが、『天使』の血は免疫力・回復力も長けていたのだ。

『天使』の目の前では町人が殺されようとしている。

『天使』は彼を助けようとし、斧を持つ殺人計画者に対して力を使う。

だが、しばらく薬で眠らされていた所為で上手く力が制御できなかった。


衝撃が、全員を襲う!


標的でなかった誘拐被害者はかすり傷程度で済んだ。だが、悪魔に対抗するために授かった力で・・・人を殺してしまったのである。原形をとどめないくらいまで無惨に切り刻まれた幾つかの死体。ひどい悪臭に、誘拐被害者までもが目を覚ました。目の前の『天使』は、何かに怯えるように立ちつくしていた。『天使』も町人も、大量の返り血を浴びている。町人の傷までもが隠れるくらいに。

町人は逃げだし、その有様を警邏隊に伝え、『天使』は捕まった。


『天使』を罪人に仕立て上げようとする計画は、実行犯が死ぬという波乱含みだが、奇しくも成功したのである。このとき、一軒家の外で見張りをしていた二人は逃走したが、その後捕まり罰せられたという。

それから、『天使』の裁判が始まった。誘拐に関しては、死んだ7人の遺留品の中に変装道具と凶器があったことから、咎められなかった。しかし、『天使』の証言から、捕まったとはいえ、見張り以外の人間を5人も殺したのは事実。その『天使』は、危険な力を持つ罪人として、数日後に処刑されたのである。


事件の話は、時間をかけることなく各国へ広まっていった。似たような手口で『天使』を罪人にし、処刑したという事件も起こった。その度に、『天使』達は畏れられ、ついには存在自体が罪と言われるようになった。一つの事件と噂が、大衆を動かす。作戦は、ここまで見越してのことだった。その成果を、彼らが見ることはできないのだが…。後に、この後に続く連鎖的事件は『天使狩り』と呼ばれた。


各国各地で、『天使』は磔にされ、槍で突かれ、焼かれた。

そして、『天使』達が『天啓』を受けてから十数年の後。

最後といわれた二人の『天使』が、焼かれていった…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ