表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

大人が綺麗事を言う理由

掲載日:2026/02/18

「大人が綺麗事を言う理由…ですか?」



「ああ、そうだ。今度のコラムのテーマにしようと思ってな。」



「え、でも、コラムは普段、山下の担当なんじゃ…。」



「あぁ、今回はちょっとな、お前に頼んでみたいと思ったんだよ。」



「はぁ。」



「やってくれるか?」



「…上手く出来るかはわかりませんが、とりあえずやってみます。」



「まあ。しょぼかったら別のものに差し替えるから。気負わずやってよ。」



「はい…。」



(………。)



「あ、あの!」



「なんだ。」



「その、『綺麗事』って言っても、色々ありますよね?その、大人が子供に言うものもあれば、大人同士で言うものもあれば、もっと言うと…政治家の綺麗事とか…。本当、色々…。」



「ククッ。そうだな。」



「じゃあ…、『どの』綺麗事について書けば…。」



「はははっ。それはお前に任せるよ。どれか1つに絞るもよし。まとめるもよし。…それ以外でも。」



「わかりました…。」



「楽しみにしてるから。」




#####




「はい、もしもし。斎藤です。」



「あぁ、父さん。僕だよ、修。珍しいね、父さんが電話出るって。」



「なんや、修か。母ちゃんに用事か?今ぁ、風呂入っとるわ。」



「そうなんだ。いや、別に父さんでもいいんだけど、ちょっとさ、聞きたいことがあって。」



「何や、改まって。まさか、美咲さんと別れるちゅー話じゃなかろうな。」



「いやいや、全然、そんな事ないし。うん、仲良くやってるよ。うん、子供達も元気に行ってる。大丈夫だって。でさ、そうじゃなくって、今さ、会社でアンケートみたいなものをやっててさ、色んな人に意見を聞いてるんだよ。」



「ああ、そういう事か。で、何や?何が聞きたいんや?」



「あのさ、えーと、父さんにとって、僕ら大人達が綺麗事を言う理由って、何だと思う?」



「何や、本音と建前の話か。」



「似てるけど、ちょっと違う。そうじゃなくって、なんだろな、例えば、『みんなで力を合わせれば何でも出来る』とか、『努力は必ず報われる』とかみたいな、大人の理想みたいなものさ。それを、僕達はなぜ言うのか、って言う…。」



「なんや、それ。本音と建前と何が違うんや。まぁた、小難しい事考えよって。」



「僕が考えてるんじゃなくて、会社の課題で…。」



「はぁ、そんなん、教育や、教育!日本は単一民族国家やからな、同じ思想が大切なんや。皆で同じ場所に向かって頑張らなあかん!だから同じ理念みたいなもんが必要なんや。」



「あぁ、なるほどね。」



「どうや、良いこと言ったやろ。」



「あぁ…、うん、ありがとう。あの、よかったらさ、母さんにも聞いてさ、もし、違う意見が出たら、教えてよ。」



「なんやと。俺の意見は正しくないってか?」



「いや、そんな事言ってないって。色んな意見が必要なだけだから。それだけだよ。僕も、父さんの意見はもっともだと思うよ。」



「そやろ。なら、それで出したらいいやろ。」



「…うん。そうだね。」



「ほんじゃあ、切るぞ〜。」



「うん。」




(はぁ…。)




#####




「あれっ?修?」



「え?」



「やっぱり修じゃん!オレ、ほら、中学校の時同じクラスだった。」



「え?もしかして、はやっち?」



「そうそう!はやっち!懐かし〜!昔そう呼ばれてたなぁ。」



「はやっち、スーツ着てるって事は、この辺に勤めてるの?」



「あぁ、そう。そこの斜め向かいの◯◯証券ってとこ。」



「すごいな。大企業じゃん!」



「まぁ、就活頑張ったからな〜。でも、入ってからが勝負よ!今もお得意様の所へ行って、ご機嫌取りだよ。」



「そっか。大企業も色々あるんだ。大変だね…。」



「まぁな。あ、そうだ!折角こうやって再開したんだ。二人で緊急同窓会しようぜ。」



「ははっ。緊急ってなんだよ。」



「いいじゃん。あとさ、大山のまっちゃんって覚えてる?」



「あぁ!あの身体のデカかった…。確か柔道部の。」



「そうそう!あのまっちゃんさ、料理人になっててさ、この近くで居酒屋開いてんのよ。今夜、そこ行かね?修連れて行ったら、きっとびっくりするぜ。」



「ははっ。楽しみだな。じゃあ、また。仕事、頑張って。」



「おう!」






「らっしゃいませ〜!!!」



「よう、まっちゃん!また飲みに来たぜ。」



「おう、隼人!いつもありがとな!ゆっくりしてけよ。」



「ふふふ。今日は、特別客もいるぜ!」



「特別客?」



「…ども。」



「…………え?あーーーーー!!!もしかして、修??だよな???」



「うん、そう。久しぶり。お店やってるって、はやっちに聞いて。庶民的でいい雰囲気のお店だね。おじゃまします。」



「なんだよ!かしこまって。美味いもんいっぱいあるから、今日は楽しんでってよ。」



「うん、ありがとう。」






「まっちゃんもはやっちも、すごい立派になってるな。すごいや。」



「なんだよ、修だって、出版社だろ?オレ、書き物なんて昔から苦手で、知ってるだろ?オレの悲惨な読書感想文。」



「ははっ。懐かしいな。でも読書感想文とライターは違うよ。」



「いや、オレにとっては、どっちも一緒だね。修は才能活かしててすごいよ。」



「や…でも今はちょっと、行き詰まってるかな…。」



「なんだよ〜!そんな時は酒だよ!ここ美味い日本酒あるんだぜ。飲もうぜ!お〜い、すみませ〜ん!」





「本当だ。あっさりして飲みやすい。美味しい。」



「だろ?料理も美味いぜ。おすすめはコレとコレと…。」



「なんか、不思議な気分だな。大人になってこうやってはやっちとお酒飲むなんて。しかも、まっちゃんの店でって。」



「なぁ〜。大人になったよな、オレら。」



「もう37かぁ。早いね。」



「昔はさぁ〜、『子供は夢を持て〜!!夢を叶える努力をしよう!!』みたいな感じにセンコーとか言ってたけどさぁ、大人になるとさ、それだけじゃどうしようも無い事も出てくるって、わかってくるよなぁ。」



「まぁ、みんな自分の人生を歩んで行くよね。」



「そう。同じ努力をしてもさ、上手くいく奴は上手くいく。だけど…どうしても競争社会だからさ。こぼれる奴も出てくるさ。妬み僻みもあるし。でも、オレは負けず嫌いだから、ぜってー同期には負けたくないけど。」



「なんで先生達は、そろって夢を見させたがったんだろうね。現実は教えずに、夢ばかり。」



「なー!オレは、子供のうちから現実を教える方がいいと思うぜ。「世の中嫌なこともある」なんて、抽象的な言い方だけで終わらすんじゃなくてさ、もっと具体的な事例を上げてさ、それに対して、どう解決していくのがいいかっていう。そう、サバイバル能力を今の子供は育てた方が良い!」



「なるほど、サバイバル能力か。そうだよね。」



「だろー!わかるだろ?オレの言いたいこと!綺麗事なんかじゃ世の中やってけねーよ!」



「………。」




#####




「ただいま〜。」



「おかえり!緊急同期会、楽しかった〜?」



「あぁ、うん、なんか、みんな変わってないなぁって。や、立場とか仕事とかはもちろん変わってるんだけど…。」



「ふふ。なんだか、充実した飲み会だったみたいね。良かった。」



「うん…。あの、ところでさ…」



「ん?」



「ちょっと変な事聞いて良い?」



「変な事?良いけど?なに?」



「それが…。」





「え?なんで大人が綺麗事を言うかって?」



「そう。」



「何?それ?子供に対してって事?」



「まぁ、人によって色々だとは思うけど、何か思いつく事ある?」



「ん〜…、そうねぇ…。」



「や、そんな深刻に捉えなくてもいいんだけど、仕事でちょっと意見を集めてて。もし、何か新しい意見が聞けたらなぁ、と思って。」




「あー…。」





(………。)





「…懺…悔…とか?」





「懺悔?」




「そう。過去の自分に対しての懺悔よ。」



「どういう事だ?」



「えぇっと、なんだろ、ほら、誰しも過去にはさ、誰かを傷つけたり、バカにしたりとか多少なりともあるじゃない?」



「うん。」



「子供の時なんて、特にね。周りの影響も考えず、ポンポン言っちゃったり、しちゃったり。」



「うん。」



「それがさ、大人になるにつれて、その事実が効いてくるのよ。例えば、30歳で結婚してなかったら、やばくない?なんて若い頃に言ってたとするじゃない。」



「うん。」



「そうすると、実際自分が30に近づくにつれて、昔の言葉がどんどん自分に刺さってくるのよ。」



「わかるよ。」



「それと同じで、昔、子供の時や若い頃に笑って言ってた何気ない言葉達が、実際、自分が子供を持ってから、刺さってきたりするのよ。」



「……。」



「あの子、なんか暗いよね〜。とか、なんかおしゃべりでムカつくとか、さ。」



「あぁ…。」



「繊細な子供を産んで初めて気づくのよ。あぁ、あの子は暗かったんじゃなくて、学校っていう集団の中に必死に溶け込もうと、戦っていたんだって。それをただ『暗いね』で片付けてた自分は、なんて愚かな子供だったんだろう、って思うわけ。」



「…。」



「だから、私が自分の子供達に綺麗事を言うのは、自分の懺悔であり、未来の子供達に私と同じ様な想いをしてもらいたくなくて、やってるのよ。」



「そうか…。」



「でもさ、私はただ綺麗事を言えばそれでいい、とは思ってないわよ。綺麗事の裏にある理由も、ちゃんと子供達に伝えてる。なぜこの綺麗事が必要なのか、って。今は理解は出来ないかもしれないけれど、伝え続けるわよ。人には色んな背景がある、って事。」




「……すごいな、君は。」




「ふふ。見直した?」



「あぁ。俺も、もっと子供達に向き合わなきゃな…。」



「仕事頑張ってもらってるんだから、パパは遊び担当で良いわよ。あと、美味しいご飯に、家族を連れて行ってもらえれば。」



「ははっ。そうか。それなら出来るな。」



「ふふっ。」



「で、たまにこうやって、夫婦で会話出来たら嬉しい。」



「わかった。ありがとう。」



「いいえ〜。ちょっとでも参考になったかしら?」



「あぁ。すごくなったよ。」





#####




「あの、五十嵐さん。」



「ん?お前か。なんだ?」



「以前おっしゃっていたコラムの件なんですが。」



「おう、出来たのか?」



「いえ、あの、まだなんですけれど、ちょっと相談があって。」



「なんだよ。」



「その…コラムを、ちょっと連載にして頂く事は、可能でしょうか?」



「連載?どれくらいだよ?」



「…。最低でも5回くらいは…。」



「ふ、はははっ。すごい自信だな。なんだよ、良いもんが書けそうなのかよ?」



「あの…はいっ。」



「ふーん。ま、とりあえず初稿寄こせよ。」


最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ