夜空からの贈りもの
春の夜ふけ。あたたかいやさしい風が時々吹いてきて、カーテンをゆらします。ミエは、電気を消したあと、部屋の窓から空を見上げていました。空には、お月さまと無数のお星さまがきらきらと輝いていました。
(きれいだな。だけど、お月さまやお星さまは、どうしてあんなにきれいに輝いているんだろう。)
ミエは、心の中で思いました。
すると、それに答えるかのように、不思議な声が聞こえてきました。
「こうやって光っているんだよ。」
ミエは、はっとしてうしろをふり返りましたが、部屋にはミエの他には誰にもいません。おかしいなと思いながらも、もう一度、空を見上げました。
と、その時です。ミエは、空から何かが降ってくるのを見ました。雨でも雪でもなく、ゆらゆらと揺れながら、ゆっくりと降ってくるのです。一つ二つ三つ………。もっともっと降ってきます。ミエは、目をこらして見ていました。やがて、それは近づくにしたがって、姿がはっきりしてきました。
驚いたことに、それは小さな小さな人間、つまり小人でした。それぞれ違った色の傘をさし、肩に白い袋をかついでいます。ミエが目を丸くして見ていると、小人たちは、そのまま次々とミエの部屋に入ってきました。
「こんばんは。きみ、星や月がどうして光ってるのか知りたいんだろう?」
「私たちが教えてあげるわ。」
小人たちはそういうと、口をあんぐり開けたまま窓のそばに立っているミエの前の床で、傘を閉じて袋を肩からおろすと、ひもをときはじめました。すると、それまで暗かった部屋の中が急に明るくなりました。小人たちの袋の中から、光があふれ出しているのです。
小人たちは、袋の中に手をつっこむと、中から何かすくい上げました。小人の手の中には、小さなかけらが、まぶしく輝いていました。
「うわあ、きれい。」
ミエは思わず声をあげました。
「これは光のかけらだよ。月や星は、光のかけらがいっぱい集まってできているんだ。」
「星がまたたくのは、私たちがこうやって光のかけらをばらまいているからなのよ。」
小人たちは、袋の中の光のかけらを部屋中にばらまきだしました。赤、青、緑、だいだい、ピンク、紫、金、銀と、色んな色の光のかけらが、そこら中に飛びちって輝き、まぶしいほどです。
ミエは、だんだんうれしくなって、小人たちといっしょに光のかけらをばらまきながら、部屋の中をくるくるとおどりまわりました。そのうちに、部屋の中だけではもの足りなくなってきました。すると、小人たちは、おどりながら傘をぱっとひろげると、窓から外に飛びだしました。それに続いて、光のかけらも外へ出ていきます。
いつのまにか、ミエも窓の外に出ていました。それも、空中に浮かんでいるのです。その上、うつくしい金色の傘までさしていました。ミエは、なぜかそれを不思議に思いませんでした。ただもう楽しくて楽しくて、小人たちといっしょにおどり回っているのでした。
☆
ミエの部屋のとびらがそっと開きました。お母さんです。お母さんは、足をしのばせて部屋の中に入ると、そっとベッドに近づきました。ベッドの上では、ミエがぐっすり眠っています。
「……ありがとう……」
「えっ?」
お母さんは、ミエが突然しゃべりだしたのでびっくりしました。
「この光のかけら、大切にするね。」
お母さんはミエの顔をのぞきこみました。しかし、ミエは気もちよさそうに寝息をたてているだけです。
「夢を見ているんだわ。」
お母さんはそうつぶやくと、ミエのふとんをかけ直し、入ってきたときと同じように、そっと部屋を出ていきました。その時、窓の外でコトリと小さな音がしたのに、お母さんは気づきませんでした。ミエの机から、かすかな光がもれていたのにも……。
☆
次の朝、目を覚ましたミエは、窓からさしこむ光とはちがった不思議な光が机をつつんでいるのに気がつきました。どうやら、その光は、一番上のひきだしからもれているようです。ミエがひきだしを開けると、中に、あの光のかけらが一つ。
「夢じゃなかったんだ。」
ミエは、光のかけらを手にとると、窓にかけよりました。そして、空を見あげてつぶやきました。
「小人さん、ありがとう。」
ミエの目に、一瞬、空の上で光のかけらをばらまいている小人たちの姿が浮かびました。小人たちは、ミエといっしょにおどったときと同じように、楽しそうに光のかけらをばらまいていました。




