✧俺の日常と妹のみっちゃん
※2025/12/27 一部追加修正済
☆ ☆ ☆ ☆
このコンビニはイートイン・コーナーがあって店で買った物を店内で食べれる。
お惣菜が豊富でシュートの好きな卵焼きや肉じゃがもあるから、チンして温められるしサラダもある。
コロッケや唐揚げもその場で揚げてくれるので、シュートはコンビニで夕ごはんを食べるのが好きだった。
今日は珍しく俺だけ。ビール缶を片手にから揚げとポテトフライのみで済ましていた。
なぜ今夜シュートが傍にいなくて、ぼっちで飯食って、暇そうなケンちゃんとダベってるかというと、今朝、手作りケーキでシュートが俺にへそを曲げたせいだ。
なまいきシュートの反抗というべきか。
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さっき保育園にシュートを迎えにいったら、保育士さんが俺が迎えにきたのを見て、びっくりした顔をした。なんでも既に、俺の母さんがお昼寝後にシュートを迎えに来たんだと。
「え?」
慌てて俺はスマホを見たら、母さんからラインがずっと前に入っていた。
やば、気付かなかったよ!
ラインを見たら──。
15:10
『シュートがパパの家に帰りたくない、おばあちゃん家がいい!と泣き出したと保母さんから連絡来ました。なので保育園へは私が迎えにいきました。今夜はシュートをこちらへ泊まらせます』
17:05
『シュートが明日はファミレスに私たちだけで行きたい、パパとは会いたくない。ハンバーグとパフェが食べたいというので、明日もこっちで預かります。夕方までには、お父さんが車で送るので安心していいよ。
ユウちゃんも大変だね。たまには土日くらい、子育て休憩してはめ外しなさい』だって。
へえ母さん、メール細かく打てるようになったなと、内容よりも変なことに感心する俺。
まあ還暦近いとはいえ母さんは見た目も若いしラインも使用してるしな。
あん、シュートの奴、まだケーキのことでへそを曲げているのか。
両親はシュートを目に入れても痛くないくらい可愛がってくれてる。
雪奈が死んでから『早く実家に戻って一緒に暮らせ!』と最近やたらと父さんたちは煩い。
まあ、両親は父子家庭の大変さを考慮して、俺のためだとは重々承知してるが。
シュートの育児はけっこう大変だが、雪奈と婚約した時、借りた、このマンションで、シュートと2人で暮らしていたいんだ。
この部屋には雪奈がいた頃の思い出がそこかしこに詰まっている。家具も殆ど生前妻が住んでいた時のままだ。
だから──俺はこのマンションに帰るとホッとするんだ。
☆ ☆
ケンちゃんの妹、みっちゃんはシュートの大のお気にいりの女の子だ。
保育園からマンションに帰らないで、ここに寄るのは、シュートがみっちゃんに、とても懐いているからだ。
ほらあれだ、よく飼ってるワンコの散歩途中でワンコが好きな店に入る。
そこへワンコの大好物の餌をくれる女の子が現れて、ワンコは女の子に向かって飛びつく。
ふふ、シュートはそんな女の子に尻尾をフリフリするワンコみたい。
息子を犬扱いはどうかと思うが、俺はみっちゃんに抱きつくシュートを見ると、女の子にじゃれつくワンコを想像しちゃうんだ。
いつもの俺とシュートのコンビニの日常。
※─※─※
『みっちゃん、こんばんはあ~!』
シュートが保育園の青い帽子を被って、みっちゃんに深々とお辞儀をする。
『あ、シュート君、おかえりなさい!今日保育園どうだった?』
『うん、たのしかった!みっちゃん、それでね~!』
と、みっちゃんがレジ番をしてる時でもシュートはおかまいなしに保育園であったことをペラペラしゃべりだす。
そんなシュートをみっちゃんはうんうんと優しく聞いてあげている。
その後、店のイートイン・コーナーでコンビニで買ったご飯を俺とシュートは食べる。そして決まってシュートは食べ終わるとみっちゃんにおねだりをする。
『ねえ、みっちゃん、だっこ!だっこ!』
『あ、待ってて。もうすぐ休み時間になるから、ね!』
『みっちゃん、いいよ。こいつにかまわないで』
『やん、パパだまってて!』
『おいシュート、いい加減にしろ!みっちゃんは働いてるんだぞ!』
『ううっ……』とシュートが唸ってふてくされる。
『ふふ、ユウさんいいのよ。私もシュート君、大好きだから』
と、みっちゃんは休み時間になると夕飯を食べ終えた俺達の席にきて、にこにこ笑顔でシュートをあやしたり、時には肩車までしてくれる。
『みっちゃん、かたぐるま!』
『OK!』
みっちゃんは軽々とシュートのお尻を両肩に乗せて、小さな両足をしっかり掴んで、そのまま立ち上がる。
『わあ、高い高い!シュート君、高いよお!』
『キャハハ、キャハハ!たか~い』
『ほら、廻るね~!』
と、そのままくるりと旋回までする。
『わぁー、回った!みっちゃん、もっともっと!』
『いいよ、いくよお!』
と何度も旋回する。
シュートはみっちゃんに甘えっぱなしだ。
──ほんとに困ったやつ!
それにしてもみっちゃんは凄い!
俺はシュートを肩車してるみっちゃんに、いつも感心する。
幼児といえども4,5歳ともなれば、男の俺でも肩車は重く感じる体重だ。それも旋回だと!
みっちゃんは見た目は中肉中背の女の子なのに、けっこう軽々とシュートを抱きあげる!
みっちゃん、君の肩は鋼鉄で、できてるのかな?
あいや~女子プロレスかって──!
※
『ユウちゃん、あいつの見た目に騙されんなよ、みっつは中身は猛者だ、結婚したら亭主を尻にしくタイプだ』
なんでもみっちゃんは高校時代、ソフトボールのキャッチャーをしてたらしい。
ソフトボール部の? それもキャッチャーだと?
すげー!
ケンちゃんは妹のことを『みっつ』と呼びながら、スマホを片手でポチポチ叩いていた。
──おい、この男、俺と話しながら小説書いてるぞ、なかなか器用な奴だ。
『みっちゃん、いくつになった?』
『え、う~んと23かな、忘れた』
『彼氏はいないんか?』
『知らん、お互いあんまり干渉せんからな、でも時々、休みは友達と映画、絵画展?へ観に行ってるみたいだ』
『それって彼氏じゃない?』
『わかんね~、ていうかあいつは俺にはそういうの、しゃべんないし⋯⋯よし出来た!』
ケンちゃんは小説書きに夢中で俺の話もそぞろだ。
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みっちゃんは市内のデザイン専門学校に入学して広告代理店に就職をしたが、そこはブラック企業だった。
『これまで辛抱強く働いてきましたが、面接でおっしゃってた職務内容とは全く違います!』
と半年足らずで退職届を突きだしてそのまま去った。
なおかつ、その足で労働基準監督署、いわゆる『労基』に働く友人に退職した理由を洗いざらい話して相談にのって貰う。
その後ブラックな広告代理店は1年もしない内に、内部告発の摘発を受けて、社員の無償残業やら上司のパワハラ等社長以下上層部は解任となったそうだ。
あわわ、すげーな、おい!
これって多分、みっちゃんが、退社後、内部告発したからだろう。
俺はケンちゃんからその話を聞いて、確かにみっちゃんて猛者女だけあると恐れ入った。
いやあ、中々若い女の子には出来ないガッツさだ。
正義感の強い行動力のある女子だと、俺はみっちゃんに感心しっぱなしだった。




