或る感想 ~てにをはに関する誤りの事例~
てにをはに関する修正推奨箇所
誤:「トリスタン、フィンを助けて! こっちは僕が相手 に する!」
正:「トリスタン、フィンを助けて! こっちは僕が相手 を する!」
解説
これは言い回しの意味的な問題なので、ちゃんと日本語が分かってない者が間違える。
例文:ぼくは彼女を相手にしなかった。
のように、「相手にしない」ことができるのは、問題なく容易にあしらえる、謂わば無視できる、そんな場合に限られる。「相手にする」のは、本来は別に相手にしなくてもいい(無視できる)ところを、わざわざ相手をしてやる(ここでは「相手 を する」のように「を」を用いる、だから日本語での用例に充分に慣れていないと混乱するのか、なるほどね……ラノベでないまともな読書が充分に必要なわけだ)ような意味が入る。
例文:ぼくは彼女の相手をしなかった。
この例文の意味は先の例文の意味と同じ。つまり、ぼくは彼女がぼくに言い掛かって来るの に 取り合わなかったのである。無視したのである。
今言い換えたが、そこでまた煩わしいのが、「取り合う」でなく、例えば会議の席上で誰かが発言したこと を 「取り上げる」か否か、みたいに「を」用いる言い回しもあり、そこら辺でてにをはがしっかりできていないと、下手な類推をして錯誤が生じる可能性があることである。
例文:ぼく が 暴漢の相手 を した。
暴漢は「話せば解る」が通用するような相手ではなく、問答無用で暴力を揮い、こちらを傷つけ、場合によっては死に至らしめる相手である。なので無視ができない。だからこそ腕力(舌先三寸での誤魔化しではない、実力行使)が必要な相手であり、「相手 に しない」わけには行かないのである。「相手 を し」なくちゃいけない相手である。なので誰かが相手 を してやらなくちゃならないことは明白であり、問題はじゃあ誰 が それをするのかというところが焦点になる。それで「が」が必要になる。
今回は意味的な問題だったが、最近目立つようになったてにをはの誤用に「斬りつける」に関するものがある。
基本的なルールとしては、動詞の根幹に付随する部分とでもいうのか、例えば「彼女の言い分を取り上げる」でいえば、「上げる」ですが、「~ を あげる」わけで、「~ に あげる」じゃないわけですね、だから「を」なんです。もしも後者だったら「はいコレ、飴あげる~♪」みたいな意味の「あげる」になってしまって、同じ「あげる」でも意味が変わってしまうわけです。つまり、そういうことなんです。
なので、なんだか最近急にやたらと目立ち始めた「~ を 斬りつける」という誤用、もうこれを読んでる皆さんには何がおかしいのか分かると思います。「~ を つけ」たりしたら、「え、じゃあ、どこに付けるの?」ということになってしまいますね。「その恋人たちのうちの男の方が、ナイフで橋の欄干 に 二人の名前 を 彫り付けた」という例文がハッキリ示すように、「つける」、この場合は刃によってですが、どこ(目標、標的)「に」切り「つける」のか、これがハッキリ示される必要があるので、「~ に 斬りつける」でなければならないわけで、「~を斬りつける」ではダメなわけです。どうしても誰か を 斬りたければ、そうですね、切り「捨てる」とか切り「払う」にしておいて下さい。
最近やたらと目立つ(あの天下のNHKですら間違いが多い)日本語の根幹たるてにをは関連の誤りに鬱憤が溜っていたので、この機会に吐きださせて頂きました、悪しからず。