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02


「ロベリア付きの侍女たちが?」


 侍女たちが何人か体調を崩して休んでいるという報告に、無理もないと王妃ガブリエーレもため息をついた。自分とて休みたかった。

 しかし、自分には、替えがない。


 この国の頂点たる自分には。


「……構わないわ。しっかりと休ませてあげなさい」

 実家に宿下がりも許可を出した。

 本当に、無理もない。

 彼女たちはこの数日、式の前からもずっとロベリアの側にいたのだ。

 式のあと――夜の準備から、あの騒ぎの最中も。心労どころか、本当に体調を悪くしているというのも仕方がないだろう。

 疲れからか熱を出していたものもいるらしいが、疲れからならば、うつるようなこともないから城でそのまま休むことも良いだろう。動かす方が、心配でもある。

「体調が良くなっても、しばらくは大事をとるように。手当も出してあげなさい」

 城の侍女となるような娘は、身分や後ろ盾もしっかりとしているものたちだ。

 お調べ(・・・)が済んでいるならば、疑うことは失礼にあたる。

 代わりの侍女やお付きを手配するよう指示をした。これもまた、身分しっかりとしたものたちを。


 ロベリアはまだ軽く監禁状態だ。

 といっても、彼女自身も憔悴して、出歩くような気分になれないのだろう。

 まぁ、ロベリアが元気だとしても何かの役にたつだろうかと、ガブリエーレは小さく嗤う。


「……こんなことなら、もう一人くらい産むのだったわ……」


 けれども。出産のあの苦しみをもう一度、というのは自分には無理だった。


 そもそも――子作り自体が。





 この国には、現在「王」はいなかった。


 王ユリアンとその正妃エリーゼは、亡くなった。

 ヨアヒムが三歳をむかえた頃に。


 けれどもヨアヒムはエリーゼの子ではない。

 ユリアンの子であることは間違いないが。


 ヨアヒムは、ユリアンとガブリエーレの子だ。


 ガブリエーレは――側妃、いや第二の王子妃であった。

 正妃エリーゼに子ができなかったことにより、ガブリエーレが城に上がることとなった。


 エリーゼには嫁いで三年、子ができなかった。

 そこで本来、正妃となるべく長く教育されていたガブリエーレが側妃となることとなったのだ。


 そう、元々ユリアンの婚約者であったガブリエーレが。


 ガブリエーレは公爵家の娘として、長年王妃となるために様々な教育がなされてきた。

 学園を卒業し、成人をむかえたら――ユリアンと結婚するはずだった。



 それを、たかが男爵家の小娘が横取りした。



 ユリアンが学園で出逢った一輪の花。


 それがエリーゼだ。


 周りの止める声をユリアンは無視をして、エリーゼを――正妃とした。

 ガブリエーレと婚約破棄をして。

 それほどまでにエリーゼには価値があるとして。


 確かに知識は高かった。

 男爵家の娘であるが、成績順で決まる教室では。高成績クラスに配されていたという。

 美しく、人を惹きつける魅力もあった。

 学園で彼女と――ユリアンのまわりはいつも笑顔であったという。


 彼らより二歳年下だったガブリエーレが学園に入学した頃には、ユリアンの心はすっかりとエリーゼのものとなり。



 もう、ガブリエーレの入り込む隙はなかった。


 ないはずだった。


 隙ができてしまったのだ――子ができなかった。

  

 ユリアンの我儘であろうに、何故か当時の王は二人の結婚を許された。


 王子に捨てられた娘という屈辱を、ガブリエーレには抱かせながら。


 ガブリエーレには多大なる慰謝料を渡されたが。

 たかが慰謝料程度で許せるものか。

 女として蔑ろにされた。

 長年、王妃となるためガブリエーレがどれほどの教育を、努力をしてきたと思っているのか。


 ――ガブリエーレの愛を、蔑ろにされた。



 ガブリエーレに協力するものは、ガブリエーレの生家なるバルグレラ公爵家の他に幾つもあった。


 今現在、ヨアヒムの後見をする家々が。



 ガブリエーレは卑怯であり――正当な手段をとった。





 ――男爵家の娘などの血筋を、王家に入れられるものか。




時々、通院の空き時間にスマホで書いてるところもありますから。誤字や読みにくいところも多々ありますのは、またご容赦くださいませ。

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