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3 2と同じ時代の、オリエントの気候と地理

目次

オリエントはどこ?

  地理的位置

  含まれる地域は?

オリエントの自然

  気候

  地理

オリエントの産業

  農業

  牧畜

  商業・交易

  地中海交易

オリエントの政治体制

オリエントの諸民族

  セム語系

  エジプト語系

  インド=ヨーロッパ語族

  語系不明の謎民族

ーーーその1「オリエント」はどこにある?ーーー


<1>地理的位置


オリエントというのは、ギリシア語で「ヨーロッパの東」という意味。

だから、西にヨーロッパがあり、その東にオリエントがある。

これは、分かりやすい。


推理小説で有名なオリエント急行は、終点がトルコのイスタンブール。

トルコは微妙な位置にある。トルコ共和国はEUには加盟していないが、NATOには加盟している。地理的には、ヨーロッパ地方とアジア地方にまたがっている。

イスタンブールの市街も、両地方の境界であるボスポラス海峡をはさんで東西にまたがっている。市街の半分が、オリエントだ。

だからオリエント(方面と行き来する)急行のネーミングは、間違っていない。

ただヨーロッパでは、東の方角自体をロマンの対象にしていて、東欧の地域内が終点でもオリエント急行と呼んだりしている。


この特定の方角への憧れは、世界史ではよく見られる現象だ。

ヨーロッパ人にとって東とは、オリエント、そして黄金の国ジパング。

アメリカ人にとって西とは、金鉱。

ロシア人にとって南とは、凍らない港がある場所。

古代中国人にとって西とは、仏陀ブッダの有難いお経がある場所。三蔵法師と孫悟空たちの天竺てんじく(インドのこと)への旅だね。


<2>オリエントに含まれる地域はどこ?


参考にしている教科書には、「エジプト」「メソポタミア」「シリア」「パレスチナ」の4地域しか、載っていない。

シリア・パレスチナは、西のエジプトと東のメソポタミアとをつなぐ中間地域。メソポタミアとのつながりが三日月みかづきの開いたところを下にしているように見えるため、「肥沃ひよくな三日月地帯」と呼ばれる。


それでは、イランは?トルコは?サウジアラビアは?アフガニスタンは?

実は、この4地域も広義ではオリエントに含まれる。というか、オリエントそのものといってもよい。

これらの4地域にも、数千年前から人が住んでいて独自の文化が発達していた。なぜこれらの4地域を教科書では除外しているのか?


それは、現代文明とのつながりがあるかどうかだ。

この後4地域の数千年前の文化は、現代文明とのつながりがない。

それに対し前4地域の文明は、現代文明とのつながりがある。太陽暦とか、楔形文字とか、ユダヤ教(キリスト教はこれに対する改革から生まれた)とかだ。


あと、上記にさらっと区別して書いたが、後4地域は文化で、前4地域は文明。

前4地域が生み出した物質は、量がとても多くて巨大である。いわゆる「高度な文明」だ。


そして、後4地域には大河がない。この辺りの乾燥気候で大河がないのは、農業生産の安定と物質文明の発展を阻害する。

前4地域のうちのシリア・パレスチナには大河がないが、その代わり、地中海というあまり荒れない穏やかな海に面している。海は、船を利用した商業・交易のメイン場面である。農業生産が安定しなくても、交易に活路を見出すことが可能な地域なのだ。


ーーーその2 オリエントの自然ーーー


<1>気候


この、エジプト・パレスチナ・シリア・メソポタミアの4地方の気候の特色は、「冬」に「雨」が多くはないが降ること、夏に「雨」がほとんど降らないことだ。

草木が最も生育する季節は、夏である。

その夏に水不足がちであることで、この地域の産業が限定されることになる。


<2>地理


幸いこの地域には、「大河」とその「流域」の広大な「平野」がある。

その水を引っ張ってくる灌漑かんがい施設を作ることができれば、安定した農業生産が可能になる環境だ。

「ティグリス川」と「ユーフラテス川」の2つの川の間という意味の「メソポタミア」地方、「ナイル川」流域の「エジプト」地方だ。


また、大河はないが比較的降水量が多い平野部が、存在する。

それが、「シリア(南部)」「パレスチナ」だ。

(現在のシリア北部は、ユーフラテス川の流域である。古代史的なシリアは、現在のシリア南部に当たる地域)

この地域は土壌が肥沃ひよくで、水さえあれば農業生産が安定して行える。

(なおパレスチナには、現在のイスラエルの領土も含んでいる)


それ以外の地域は、「山地」と高原だ。

「乾燥」気候であるため、砂漠地帯と化している。

ただ100%砂漠というわけではなく、ところどころに地下水脈がありそれが地上に現れるところにオアシスが形成されている。

農業は、難しい。


ーーーその3 オリエントの産業ーーー


<1>「農業」


大河の流域平野やシリア・パレスチナなどの平野部では、「小麦」や、乾燥に強い「オリーヴ」やかんきつ類などの作物が「栽培」されていた。

雨が降るといっても多くないので、日本のような稲作はできない。

小麦は、乾燥に強い作物。

小麦からはパンができる。オリーヴからは油が抽出できる。

またブドウの栽培もおこなわれ、酒が造られた。


<2>牧畜


人類は、獣肉も食べる。

この地域は乾燥ぎみなので、大量の水と大量の草が必要な牛の飼育は無理だ。

乾燥に強い動物は、「羊」である。飲む水は少なく、草も少し食べれば十分。

大食漢のウシさんと、少食のヒツジさんだ。


羊からとれるものは、肉以外に、乳、毛、皮がある。

出る乳の量は牛に比べると少ないが、栄養分が豊富なため飲料よりもチーズなどの乳製品に加工されるのがほとんどだ。

羊毛ようもうは、ウールともいう。保温力が高く、冬服に適している。

羊皮ようひは、後には字を書きつける紙として使われた。

(当時は、文字を書きつけるというか彫り付けるのに、粘土板が使われた)


他に飼われた動物として、ヤギがいる。

ヤギは、羊よりさらに乾燥に強い。ヤギから取れる乳は、羊のそれより量が多く、栄養分も豊富である。


オリエントでは、大河流域の農耕民には羊が好まれ、山地・砂漠の遊牧民にはヤギが好まれた。

大河流域以外の砂漠地域では、草が少ないのでオアシスからオアシスへ草を求めて「移動し」て牧畜をする、「遊牧」が行われていた。


<3>商業・交易


農牧業の生産が安定すると、生産物の余剰よじょうを他の生産物と交換しようという意欲が生まれる。

前に書いた、より良い生活をしようという欲だ。芋だけでは飽きる、卵も肉も食べたいという、あれだ。


この交換行為が、商業なのだ。

物々交換は価値の目利きが面倒くさいので、価値を測る目安としてお金が使われる。

当時のお金は、初めは麦や羊毛だった。やがて金属が使われるようになった。

物の価値を示すわけだから、それに見合うだけの金ぴか色が求められた。いつの時代も、金ぴか色に人は魅せられる。

金はほとんど発見されないので、銀が主流だった。国家が鋳造するものではなく、地中から掘り出した銀そのものだ。


地域同士で行われる産物の交換活動が、交易こうえきだ。

似た言葉に貿易があるが、貿易とは国家同士の貿易という意味で、主に近代以降の時代のものを指す。


物品は量が多くなると、運搬に苦労する。

こういうとき浮力を利用した船が、大活躍する。

現代も貿易の大多数は、船で行われる。

船が行き来するところは、幅の広い「大河」と、「海」である。


<4>「地中海」交易


参考にしている教科書に、地図が載っている。教科書が手元にない人は、地図帳や国土地理院の地図を参照してくれたまえ。

地中海は、ヨーロッパとアフリカと西アジアに囲まれた、大地の中の海。

荒れにくく、穏やかな海だ。交易には、最適の海だ。


地中海の周囲を見てみよう。


「東岸」が、オリエントの地域だ。「シリア・パレスチナ」が、それだ。

内陸部に肥沃な平野部があり、「小麦」や「オリーヴ」の「農業」生産が安定している。

「沿岸」部は山がちだが、そのため深度の大きい良い港が分布する。

農業にプラス、交易も盛んな地域である。


南岸の最東端が、オリエントの地域、「エジプト」だ。

「大河流域平野」が広がり、「灌漑農業」が安定している。

沿岸部に良港が存在し、交易も盛んだ。


北岸の東部は、東にトルコ、西にギリシア。

これらの地域は「山」がちで平地が少なく、農業は可能だが乾燥ぎみで土壌も石灰岩質で良くないため生産力が少ない。

しかし山がちなため、深度のある良港が多数ある。

そこでこの地域は、交易がメイン産業になる。


北岸の西部は、教科書の地図には載っていなくて見切れている。

現在のイタリア・フランス・スペインだ。

なぜ載っていないのか不思議だ。オリエントの一民族であるフェニキア人は、船で現在のスペインに到達しているし。


地中海以外の、近隣の海にはどんなものがあるか。


紅海は、アラビア半島とアフリカの間にある。穏やかな海だ。

黒海は、トルコの北、ウクライナの南にある。穏やかな海だ。

ペルシア湾は、アラビア半島とイランの間にある。穏やかな海だ。

アラビア海は、アラビア半島の南にある。この頃は穏やかな海だ。

いずれも、交易には最適な海。現在も主要貿易路だ。


大西洋・太平洋・インド洋は、穏やかな時もあるが、荒れることが多い海。

そして南緯40度以南の海は、常に荒れ狂っている海。アフリカ大陸南回り、アメリカ大陸南回りは、命懸けだ。

北極海は、凍っている。(近年は氷が解けてきている)


ーーーその4 オリエントの政治体制ーーー


とくに、大河流域では広大な平野の農耕地に、どうやって水を引っ張ってくるかが重要になる。

灌漑施設を作るには、大人数の組織力が必要だ。

引っ張ってきた後も、「水」は貴重なので水争いが起こらないよう厳重に管理する必要がある。


この必要から、組織指導者が強い権力を持つ政治体制が敷かれることになる。

ただ人々は、強い武力に心から従うわけではない。

統治をスムーズにするには、人々の心からの協力が必要だ。

そこで統治者は、信仰の力を利用する「神権政治」を行う。

「自分は、神の言葉の代弁者だ。自分の言葉は、神の言葉だ」

というふうに人々に言い、奇跡のような行いを見せて人々の生活を安定させれば、人々は納得して命令に素直に従うようになる。


ーーーその5 オリエントの諸民族ーーー


民族の上の分類単位で、語族というのがある。

言語系統で見るのだ。

するとこの時代には、大きく分けて2つの言語系統の諸民族が活動していた。


1つは、アフロ=アジア語族。

もう1つは、インド=ヨーロッパ語族。

アフロ=アジアというのは、アフリカとアジアに分布しているという意味。

アフリカといっても、オリエントに近い北アフリカだ。

インドは、アジア地域である。最初にこの語を見たときは、インド人と欧米人が同じ言語系統?と驚いたものだ。


ちなみに日本人の言語系統は、アルタイ語族だ。

現在の中国北東部(満洲)・シベリア東部付近に源流がある。

ただ、日本人は世界じゅう(主に太平洋沿岸)の諸民族の混血・混在状態ともいわれていて、正確には謎言語らしい。


<1>「セム語系(語派)」


アフロ=アジア語族のうちの、アジア地域に主に分布する語系である。

語系というのはこの教科書での呼び方で、他に語派という呼び方もある。


この時期に出てくる民族名でいうと、アッカド人、アムル人、カナーン人、アラム人、フェニキア人、ヘブライ人である。

アムル人とアラム人は、よく似ているのでややこしい。


従事するメイン産業は、「遊牧」だ。

「砂漠」地帯や「山地」が原住地で、草と「豊かさ」を求め「大河流域平野」にしばしば移動・侵入をしていた。

その移動能力を生かして、「内陸」「交」易にも従事。

また「地中海」東岸のシリア・パレスチナ地方に進出した民族は、地中海交易で大発展した。


<2>「エジプト語系(語派)」


アフロ=アジア語族のうちの、北アフリカ地域に分布している語系である。

現在のエジプト人の先祖だが、古代エジプト語を日常会話で話す人はほとんどいない。

(現在は、アラビア語が公用語。ただアラビア半島のアラビア語とは違い、エジプト方言が色濃く出ているアラビア語である)


ナイル川流域平野の農耕民。


<3>「インド=ヨーロッパ語族」


この古代オリエントでは、ヒッタイト人、ミタンニ王国の支配層がそれにあたる諸民族だ。

また古代オリエントと関連する古代ヨーロッパでは、ギリシア人がそうである。

古代オリエントと関連しない古代ヨーロッパでは、イタリア人(ラテン語)、ゲルマン人、スラヴ人も、そうである。


この語族も、古代オリエントでは「遊牧」民である。

戦闘を好んでいた。バトルジャンキー?


<4>語系不明


いわゆる謎の民族である。

シュメール人、カッシート人、ヒクソス人、クレタ人。

謎というと、歴史のロマンとスピリチュアルがふつふつと湧いてくるね。

参考:山川詳説世界史(世界史探究)P20~21

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