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第二話⑫

 4




「空野くん空野くん、ちょっと不思議なのよ〜! いや、ちょっとどころじゃない。とーっても不思議なの!」


 こもれびの杜に戻ってくるなり、筒原さんがそうまくし立ててきた。


「どうしたんすか」


 ガークは俺をここまで送り届けたあと、「じゃあ、また」と言って集落に帰っていったから、事務所の中には一人で戻ったことになる。


「ほら、この事務所内。電気もガスも水道も使えるのよ! それにパソコンやスマホも。……でも、外に出ちゃうとスマホは圏外になるし、いったいどういうことかしらね」


「だいたい俺たちがこんな目に遭ってること自体不思議なんです。いまさらなにが起こったって驚きやしませんよ」


「あら、空野くん、えらくクールね。若者は適応力が高いのねー」


 皮肉を言っているのか、本当に感心しているのか、俺にはよくわからなかった。だいたい、ここに来たばかりのときに、お茶を沸かして飲んでいたじゃないか。俺がそれを指摘すると、「ほら、あのときはいつもの流れで、不思議とは思わずにやっちゃってたのよ」と言ったのだった。


「で、あなたのほうは、うまくいったの?」


「あー……いや」


「その様子だと、成果はあまり芳しくなかったようね」


「話し合いが難航して……ガークも手伝ってくれたんスけど……あっちが俺の話を聞こうともしてくれなくって」


「まあ、よくある話ね」


 年寄りは頑固だ。いきものは歳をとるにつれていろいろな経験が増えるから、自分は若い人よりも知識と体験が多いという自負がうまれる。目の前でおこることや誰かからの提案を、自分の経験に照らし合わせてみて、違うと思ったらゆずれない。


 アヴァリュートは、自分がおかしくなって仲間たちに危害を加える可能性があるのなら、それを防ぐために自ら幽閉されることが最善の方法だと、自分の中で決めた。


 それが竜族の総意なら。心の中に秘めた願望を無視してでも、一度決めたことは全うしなければならないと考えたのだろう。


 だからといって、竜族のみんなに啖呵をきって、俺がなんとかすると凄んだことを後悔するのはまだ早い。可能性の芽を摘まれたわけではない。時間の許すかぎり、俺は何度だって挑戦してやるのだ。



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