第二話⑥
「オレは……じいちゃんが、あんな状態になってまで、一族の総意を優先させようなんて思わなくていいと、思ってる……」
「ガーク」
そのときザンドラが口を開いた。
「……お前は優しい子だ。長老のことを想う気持ちもよく分かるよ。だがな、リアズが言ったように、お前が抱いている気持ちは、『我儘』だと思う奴もいる。」
ザンドラは諭すようにそう言った。そこで先ほどガークに難色を示した男は、リアズという名前なのだとわかった。
「長老の身に何かあれば、その皺寄せを被るのは俺たちだ。一族を滅ぼしかねない事態に陥ったとき、お前はどうするつもりなんだ」
ザンドラは周囲の竜族を見渡した。先ほどガークに意見した男を含め、彼の言葉に頷く者は多かった。ガークは何も答えない。いや、答えられないのだ。
「先のことをなにも考えていなくて、いっときの感情で物事を判断しているのなら、頭を冷やせ、ガーク」
ザンドラはガークの頭をポンと叩いた。その仕草がなんだか父親っぽくて、こんな状況なのにちょっと微笑ましい気持ちになったのは内緒だ。
「……コタロー、オレは間違っていただろうか」
ガークがこちらを向いた。彼は縋るような目をしていた。
「俺は竜族のことがよくわからないから、適切なアドバイスはできないかもだけど……」
俺は一呼吸おいて続けた。
「少なくとも俺は、ガークは間違ってないと思ってるよ」
俺の言葉を受けて、ガークは少しだけ微笑んだ。その笑顔に安堵すると同時に、彼のことをなんだか遠くに感じてしまった。




