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【第五章完結】現代魔術は隠されている  作者: 隠埼一三
Episode Ⅱ『ディヴィッド・ノーマンの残党編』
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7.クレア・フォードはメイド服にうるさい⊕

「……疲れたな」

 

 香月はそう呟きながら、魔術空間から現実へ戻って来た。L'ami(ラミ) de(ドゥ) rose(ローゼ)の店内の奥にある事務所の中だ。

 まだ新しい術式に慣れていないせいか、魔力のコントロールが上手くできていないらしい。心なしか少し身体が重いように感じる。

 

「お疲れ様、どうだった? 新しい術式は」

 

 いつの間にか大人の姿に戻っていた陽子が尋ねてきた。

 

「ああ、良い感じだ。これならどんな奴にでも対抗できる気がする」と香月は答えたが、すぐに付け加えるように言った。「ただ、まだ使いこなせる自信は無いが……」

 

 香月がそう言うと、陽子は軽く笑みを浮かべて答える。

 

「君なら大丈夫だよ。とにかく、使える魔術を増やす所から始めよう。まずは自分の身近に居る人を解析してみると良いんじゃないかな」

「身近な人?」

 

 香月が聞き返すと陽子は頷いた。

 

「うん、君の所属している日本中部支部の構成員(エージェント)……例えば、君がこのお店に連れてきた子とかね」

 

 なんだよ、それも把握されてるのか。そんな事を思いながらも、香月は陽子の発言に納得する。

 

「……確かに、清香姉(さやかねえ)の回復と空間跳躍の魔術は覚えておいて損は無いな」

「でしょ?」

 

 陽子は笑って言った。そんな彼女に香月は言う。

 

「……そういえば、聞きたい事があったんだけどさ」

「ん? 何かな少年?」と陽子。

「いや、大したことじゃないんだが……俺って夜咲く花々の廷(ナイト・コート)の中でどんな感じの扱いになるんだ?」

 

 その言葉に陽子は少し困った様に苦笑いをしてから答えた。

 

「うーん、それは答えるには少々難しい質問だね……」

 

 そして彼女は続ける。

 

「とりあえず今の所は教える事ができない……と言っておくよ。君の事は夜咲く花々の廷(ナイト・コート)の中でも一部の人にしか知らせてない。だから、君の事を知ってる人は限られているんだ」

「そうか……」

 

 香月がそう答えると陽子は言った。

 

「でも、君はとても重要な人物だよ。それだけは言わせて。……それにね」

 

 彼女はそこで一呼吸置くと言った。

 

「……君の存在は、魔術協会(ソサエティ)の日本中部支部にとってもいずれ大きな意味を持つ事になるだろうからね」

 

 そんな彼女の物言いに香月は少し引っかかるものを感じつつも頷いた。

 

「わかった。覚えておく」

「うん、その意気だよ」

 

 そんなやり取りを交わしていると、店の入口のドアが開いた音が聞こえた。

 どうやら客がやって来たらしい。L'ami(ラミ) de(ドゥ) rose(ローゼ)の開店時間のようだった。

 香月は陽子に挨拶をしてから部屋を出ていこうとした時、陽子が思い出したように言った。

 

「あ……そうだ。忘れる所だったけど……霧島麗奈の事だけど──」

 

 その言葉に香月は足を止める。すると陽子は続けた。

 

「──予言しとく。私にわかる限り、今日から三日以内に霧島麗奈の方から行動を起こしてくるはずだよ。君は霧島麗奈に襲われる。それまでに準備を整えるんだよ。ただし、この予言と夜咲く花々の廷(ナイト・コート)の事は今の所は身内相手でも他言するのはできれば避けて。色々と懸念する事はあるから。君ひとりの力だけでどうにかするんだよ」

「わかった。ありがとう、陽子さん」

 

 香月がそう返すと陽子は言った。

 

「どういたしまして。……それじゃ頑張ってね」

 

 その言葉に香月は頷くと店を後にした。


     ◆


 L'ami(ラミ) de(ドゥ) rose(ローゼ)から出てくる香月の姿を遠目から見つめる二つの影があった。

 

『まさかカヅキがあんなお店に通ってたなんて……しかも連日……』

「大神君、奇譚調査(きたんちょうさ)の時にたまたま入ったあのメイドカフェ……そんなに気に入ったのかな……」

 

 クレアと清香(さやか)である。

 この二人がこうやって様子を(うかが)っているのは、この二日間行く場所をはぐらかしながらどこかへ行く香月を怪しく思ったクレアが、清香に相談を持ちかけた事が原因だった。

 

『カヅキの様子がおかしい』というクレアの一言に、清香は「どうせ、クレアちゃんの早とちりだろうなあ」と思いつつ調査したいというクレアの進言に対して面白がってついてきたのである。

 

 二人は香月が店から出てきたのを見計らい、隠れるようにして様子を観察していた。そしてどうやら今の所は追跡に気付かれてなさそうだと判断すると、そのまま二人並んで歩き出した。

 

『ねえ、清香さん。カヅキはあのお店で何してると思う?』

 

 クレアがそう問うのに清香は少し考えてから答えた。

 

「うーん……やっぱりメイドさん目当てなんじゃないかな。前に行った時に接客してくれた子が気に入ったとか」

『でも、カヅキって……そういうの(うと)そう。ボク感覚だと、カヅキって日本人気質なのかシャイってイメージだし』

「それは、偏見じゃない?」

 

 清香が言うとクレアはムッとした表情になる。

 

『そんな事無いよ! カヅキだって男だし、女の子に興味がないって事は無いと思うけど、そんな異性に積極的になってくタイプじゃないし!』

 

 そんな彼女の態度に呆れつつ清香は言う。

 

「……まあ、確かにね〜。でも、それならあのお店に連日出入りしてるのはどう思う?  やっぱお気に入りのメイドさんができて、会いに行ってるって話にならないかな? 大神君が取られてクレアちゃん大ピンチって話になっちゃいそうだけど」

 

『う……』と少し言葉に詰まるクレアだったが、すぐに反論するように言った。

『清香さんが前に言ってたけどさ。男ってメイドさんとか、可愛い女の子に弱いんだって。そうじゃないと思いたいけど……やっぱりカヅキもそうだったりするのかなあ……?』

「う〜ん……それは人によると思うけど……」

『そう! ボクが思うにカヅキの方からじゃないと思うんだよ! だから、きっとあのお店のメイドさんがカヅキをたぶらかしてるんだ!』

 

 そんなクレアの言葉に清香は苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

「大神君が恋愛に関して積極的になるとは思えないしね〜。同年代の子で比べたらかなり硬派な方……というかだいぶ奥手な方だし。……まあ、何にせよもう少し様子を見ようよ」

『むう……』と不満げな表情になるクレアだったが、ふと何かを思いついたように普段の乏しい表情にハッとした顔を浮かべた。

 

『そうか……! 英国(イギリス)に居た頃には気づかなかったけど……カヅキってメイド服が好きなのかもしれない』

「まあ、あのお店の場合はメイド服にゴシックロリィタの要素混じってるけどね……」

『ボクが気に入らないのは、そこだよ』

 

 清香の発言に、クレアがビッと指をさして言った。

 

「え? どこ?」

 

 清香がポカンとしていると、クレアが(おも)いの(たけ)を吐き出すように言った。

 

『よく聞いて、清香さん。ボクはね、ゴスロリ風の要素が入っているのがどうも気に入らないんだ。まるでアフタヌーンティーセットにマカロンが入ってるみたいな異物混入感がコレジャナイって感じるんだ。メイド服というのは、英国の伝統と誇りが詰まったもので、ヴィクトリア朝時代の優雅さと厳格さ、その両方を象徴する歴史ある服飾文化なんだよ。だからこそ、シンプルでありながらも露出を抑えた美しいデザインが重要なんだ。フレンチメイドなんて受け入れられない。やっぱりメイド服はヴィクトリアンスタイルで、スカートはロングスカートに限るんだよ。流行に左右されずに、あるべき姿を守るべきだとボクは思うんだ。そもそもメイド服というのは──』

「わ、わかった。わかったから」

 

 清香は英国原理主義的な彼女の長口上を遮り言った。妙な熱の入りようだ。そんな彼女にはメイド服に対する強い拘りがあるのだろうと清香は思った。

 

『……とにかく』クレアはコホンと言うように咳払いをするジェスチャーをすると続ける。『あのお店のメイド服がヴィクトリアンスタイルで無い事が問題なんだよ。ボクはね、カヅキに真のメイド服を知らしめたい。目を覚まして欲しいんだ』

「う〜ん、でもさ……」

 

 清香は何か言おうとしたのだが、その前にクレアが言った。

 

『だからね、ボクに一つ考えがあるんだ』


    ◆


 二人が香月の自宅兼事務所に戻ってくると、まだ家主は戻っていないようだった。

 ここに来るまでの間に二人はクレアの名古屋での自宅に寄り、何やら荷物をいくつか持ってきたようだが……

 

『清香さん。早速準備を始めよう』

「え? なんの?」

 

 疑問の表情を浮かべる清香にクレアは答える。

 

『決まっているじゃない。あの不埒(ふらち)なメイド服に対抗する為、カヅキを真のメイドとは何かを知らしめるんだよ!』

 

 そう言って彼女はキッチンの奥にある居間へ入っていく。持ってきた荷物と共に行った所を見ると、その奥で準備を始めるらしかった。

 それにしても、クレアの謎の熱意に燃えている。何か悪いモノでも食べたのだろうか?

 そんな事を清香が思っていると、玄関のドアが開く音がした。家主が帰ってきたようだ。

 

「ただいま」と香月の声がした。

「お帰りなさい。お邪魔してるよ〜大神君」

「あれ、清香姉(さやかねえ)? 珍しいな」

「今日はクレアちゃんに色々付き合ってね。おっと、そういえばクレアちゃんは〜……」

 

 清香はそう返すと、リビングから奥の部屋へ入っていく。そこには何やらゴソゴソしているクレアの姿があり、その周りには何着かのメイド服が散乱していた。

 そして大量に持ち込んだメイド服の中からこれだと言う珠玉(しゅぎょく)の一品を見つけたのだろう、クレアはそれに身を包んでいた。

 

「はわ……、きゃ……きゃわ……⁉︎」

 

 その姿を見た清香が言葉にならない声を上げた。

 清香が目にしたクレアの姿は、縁取りに白いレースが入ったフリルシャツの襟元に黒いリボン……そしてその上にはフリルのついた黒いロングスカートのエプロンドレスを身につけている。それは英国式のクラシカルなメイド服だった。

 しかも着ているのが生まれも育ちも英国で、しかも良家のお嬢様のクレアなのだ。似合わない筈がない。



挿絵(By みてみん)


 

『ふふふ……そうでしょう、そうでしょう、可愛いでしょう。やっぱりメイド服はこれが一番だよ』

 

 クレアがくるりとその場で回転すると、ロングスカートがひらりと舞う。まるでワルツのワンシーンを切り取ったかのような美しさだ。

 妙に嬉しそうに言うクレアを見て清香は頷く。

 

「うん、なんかよく似合ってるっていうか……美しすぎるよ……。普段パーカーみたいなラフな格好してるけど、ドレスがめちゃめちゃ似合う……。さすがクレアお嬢様だよ……」

 

 そんな二人の会話を聞いた香月も部屋を覗き込みながら言った。

 

「……何やってんだ、クレア」

『ふふ、カヅキ。これでわかったよね? やっぱりメイド服はヴィクトリアンスタイルこそが至高! やはりロングスカートじゃなきゃダメなんだよ!』

 

 得意げな表情で言うクレアだったが、香月は冷静に答えた。

 

「いや……いきなりそんな事言われてもな」

 

 そんな香月に清香が耳打ちする。

 

「……ちょっと大神君。そこは『可愛いよ、クレア』とか言うべき場面だと思うな?」

 

 しかし、香月はそんな清香に返す。

 

「え……? いや、だってこれってコスプレだろ? いや、確かに普段がパーカーとかだから、こういう洋風な服装ってクレアには似合うと思うけどさ、だからって別に……」

 

 そんな香月の返答に清香は愕然とした表情になる。

 

「え……!?」

 

 そして、クレアの方に向き直ると彼女は言った。

 

「ちょっとクレアちゃん! 大神君が全然反応してくれてないよ! こんなに超絶可愛いのに!」

『ええ〜……』と困惑するクレアだったがすぐに立ち直ると言った。『カヅキがその気ならボクにも考えがある。ボクがカヅキの性癖(フェチズム)の門を開いて正しい方向に導いてみせよう』

「? 何だ……?」

 

 首を傾げる香月をよそにクレアは続ける。

 

『カヅキ。ボクはヴィクトリアンメイドの良さ、その真髄を君に叩き込む為にある魔術薬を使う事にするよ』

「ん? なんだそれ?」

 

 香月がそう聞くとクレアはニヤリと笑って答える。

 

『ふふ……興味を持ってくれてうれしいよ。ボクが将来的にカヅキに挑む時のために秘密裏に開発した感度がン千倍(ぜんばい)になる魔術薬だ。もしボクがメイド服を着てそれを使ったらどうなると思う?』もったいぶるようにクレアが一呼吸置いて言う。『メイドさんを快楽に屈服させて、お仕置きするプレイが実現する!』

「……おい」

 

 ジト目の香月を無視して彼女は続ける。

 

『これこそが英国紳士の(たしな)み。これこそが真のメイド道だよ。そこには淫靡(いんび)な美しさがある。もうボクは誰にも止められないからね』

 

 そう言いつつクレアは、魔術薬の入った瓶を取り出そうとするが──

 

「ちょぉっと待ったあ!」

 

 そんな二人の間に清香が立ち塞がった。

 

『……何? 清香さん。ボクとカヅキの対決の邪魔をしないで欲しいな』

「いやいや、邪魔するよ! 何か方向性が段々とズレてってるよ! そもそも何の対決をするつもりなの⁉︎ だってそれ絶対にえっちな事するつもりでしょ⁉︎ そんなのダメに決まってるじゃん! 怒られるよ、色んな方向から!」

 

 するとクレアは少しムッとした表情になると言った。

 

『別にエッチじゃないもん。ちょっと服を着たまま文化的な何かをするだけだよ。耽美(たんび)とは文化なんだよ。ボクはカヅキにメイドの何たるかを、この身体を張ってでも表現して教えたいだけだよ』

「いやいやいや! 大神君を何に目覚めさせるつもりなの!」

『何って……メイド道だよ?』

「いやいやいやいや、絶対違うでしょ! なんかもう色々間違ってる気がするよ⁉︎ 私の知ってるメイドさんはそんなおピンクでハーレクインでおフランスな感じじゃないよ!」

『いや、そんな事無い。メイドと言えばお仕置き、お仕置きと言えばメイドと相場は決まっているんだよ。でも国王陛下に誓っておフランスだけは否定させて貰うよ』

 

 クレアは頬を膨らませる。

 

「いや……だってさ……」

 

 いや、何なんだよそのメイドに対する歪み切った見方は。

 そんな二人のやり取りを香月が呆れた表情で見ていたのだが、ふとある事を思い出したかのように言った。

 

「……あ」

「ん?」

 

 香月が声を上げたのに、清香が首を傾げる。香月は清香とクレアの二人を交互に見るようにして言った。

 

「そういえば……二人とも居るなら丁度良いやと思ってさ。二人に解析魔術を使わせて欲しいんだ」

「えっ……⁉︎」

 

 香月の発言に清香が驚いた表情を見せると、急にモジモジと恥ずかしがり始めた。

 

「えっと、その……。私、人に見られる職業ではあるけど……イヴさんみたいにモデルさんとかはやってないから……。いくら大神君からのお願いでも……その……」

 

 そう言って自分の胸元を隠すように腕を交差させる。

 香月とクレアはそんな清香の様子を見て首を傾げていたが、クレアには何か思い当たる事があったらしい。ポンと手を打って何かを納得すると、香月に向かって言った。

 

『カヅキ、ボクはね。最近Dカップになったよ』

「えっ?」

 

 クレアの唐突な発言に清香が思わず驚く。しかしそれを気にせず続ける。

 

『もう〜、やっぱりカヅキはおっぱい星人なんだから』

 

 そう言いながら、どこか楽しげにニヤニヤと目を細めるクレアに清香が詰め寄る。

 

「ちょっと、クレアちゃん⁉︎ いきなり何を言い出すの!?」

 

 しかしそんなやり取りに慌てて香月が口を挟んだ。

 

「ち、違う! そうじゃない! そういう意味で解析魔術を使わせて欲しい訳じゃない!」

 

 そういえば、イヴの特異体質を調べる際に解析魔術を使ったお陰で彼女の体型的特徴の情報まで脳裏に流入してきた時の事を思い出していた。

 あの時は、かりんに情報をバイパスしていて、見えたイメージとかも共有していたせいで過剰な負荷で鼻血を吹いてしまったのをタイミング悪く勘違いされてしまったのだ。

 

「そんなやましい理由で使うつもりじゃない。か、解析魔術とかを色々アップグレードしたから、その試運転に付き合って欲しいんだよ」

「あ……そういうことか……」

 

 清香はその説明で納得したようだった。そして、咳払いを一つすると改めて言った。

 

「えっと、つまり大神君は私達のスリーサイズが知りたかった訳じゃ無いってこと?」

 

 そんな清香にクレアは首を傾げる。

 

『え? 違うの?』

「いや、だから違うって!」

 

 香月は再度否定する。

 すると清香はホッとしたような表情になった。

 

「良かったあ。いくら大神君相手でもそういうの目的だと色々考えちゃうもん……」

 

 そんな清香の様子を見たクレアがちょっとムッとしながら言う。

 

『へえ、色々考えれちゃう余地があるんだ。もしかして清香さん、本当はカヅキにスリーサイズを測られたいの?』

「そ……そんな事無いよ! 私はただ大神君が私の事を知りたいのかなって思っただけで……」

『ふーん……』

 

 クレアがジト目になる。

 

「ほ……本当だよ!」

 

 清香は必死に弁明していた。

 そんな二人のやり取りをスルーして香月は言った。

 

「まあ、そういう訳だから。ちょっと付き合って欲しいんだよ」

 

 そんな香月にクレアが質問する。

 

『それはいいけど、具体的に何をするの?』

「いや、解析魔術をかけさせてくれるだけで良いんだ。それ以上の他意はないしな」

「え? そうなの?」そう言い、清香が意外そうな表情になったがすぐに納得したようにうんうんと頷いた。「まあ、大神君らしいと言えば大神君らしいけどね」

 

 そんなやり取りをしつつクレアはどこかがっかりしたような様子で言った。

 

『ふぅん……そういう事かあ……』

「……なんだよ。なんか残念そうだな」

『べっつに〜』とクレアは少し不貞腐れたように言った。『まあいいや、解析魔術をかけるのは別に良いよ』

 

 そして、少し間を置いて続けた。『でも、その前に一つ条件があるんだけど』

「ん? なんだよ?」

 

 香月が聞き返すとクレアはこう答えた。

 

『カヅキのアップグレードした術式を見せて欲しいんだ』

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