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拝啓 貴方へ

作者: 林 りん

拝啓。桜の花咲く頃となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

突然ですが、先日、学校で不思議な話を聞きました。学校の音楽室に幽霊が出るのだそうです。なんでも、夜学校の前を歩きますと、音楽室からもの哀しげなピアノの音が聞こえるのだそうです。幽霊だなんて子供だましに過ぎませんのに、皆様何を本気になっているのでしょうね。不思議でたまりません。

春とはいえ花冷えの日もございますので、ご用心くださいませ。

四月三日。山田花子。田中太郎様


拝啓。過ぎ行く春が惜しまれる頃となりましたが、その後はお変わりありませんか。

先日の音楽室の件ですが、私は幽霊を怖がってなどおりません!ほんの少しだけ、あなたになぐさめの言葉をいただきたかっただけです。それはそうと、また新しい噂話が出てきました。ピアノの噂を自分の目で確かめようと考えたある生徒が音楽室の方へ向かう人魂を見たのだそうです。その生徒は怖くなってピアノの音も聞かぬまま逃げ出したのだとか。本人は呪われるかもしれない、と怯えて学校にも来れないのだとか。全く馬鹿馬鹿しい。幽霊なんて非科学的存在。いるはずがございませんのにね。

過ごしやすい時季とはいえ、ご無理をなさいませんように。

五月十六日。山田花子。田中太郎様。


拝啓。桜桃の季節となりましたが、お元気でお過ごしでしょうか。

りんごの押し花、ありがとうございました。とてもかわいらしい花ですね。本の栞として愛用しています。

そういえば、一連の幽霊騒ぎの正体が判明しました。音楽室のピアノ、音楽室へ向かう人魂。どちらも音楽の先生が正体だったのだそう。帰宅前に少しだけ弾くことを日課にされていらして、幽霊という噂になり、―あまり気にしていなかったそうですが―人魂の噂で登校出来なくなる生徒が現れて大事になったと思い正体を明かすことにしたとの事でした。やっぱり、幽霊なんて子供だましなのですわ。いるはずがないと言っているじゃない。そう思いません?

そちらでは蛍がみられるそうで大変羨ましいです。蛍狩りが愉しみですね。

六月十五日。山田花子。田中太郎様。

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