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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ゆうれいラジオ

作者: 星宮星雅
掲載日:2022/08/24

「恐怖とは自らが犯したことからやって来るものだ」 

                    星宮星雅

 えっ?取材?・・・ああ、何だただの学校新聞か。

へぇ、夏の七不思議特集ねぇ?いい企画だけどウチの学校にそんなのあったかな?

・・・・・・・・・ああ、そういえばアレあったな。知ってるかい?深夜零時の「ゆうれいラジオ」。

ちょっと子どもっぽいネーミングだけど、これは嘘じゃ無いぜ。この学校で本当にあったことなんだ。


 もう何年も前のことだけどな、ウチの学校に1人の男子生徒・・・Aが居たんだ。

Aが朝学校に行って自分の教室に入ると、日直が何日とか何曜日とか書く日誌あるだろ?お前だって何度か書いたことある筈だ。アレが自分の机の上に置いてあったんだよ。

「あれ?俺、今日日直だったか?」

何て言って、ソレを手に取って見てみるとどうも可笑しい。

日直日誌だったら表紙に「日直」って書いてあるだろ?白い記入スペースに筆で書いたような黒い字でさ。

でも、その冊子は違ったんだ。一面紺色の無地で、何にも書いてないんだよ。何だコレ?ってAが不思議に思うのも当然だよな?

だから、Aは中身を確かめようとしてソレを開いちまったんだ。

中には白い紙が1枚貼り付けてあってな。HRで担任が配布するプリントみたいに、パソコンで打ち込んだようなしっかりした黒字の文章でこう書いてあった。

“拝啓A様 この度、貴方は「ゆうれいラジオ」のゲストに選ばれました。

つきましては、本日深夜零時にお迎えに上がりますので宜しくお願い致します。

                                    「ゆうれいラジオ」メインパーソナリティー れい子”

ってな。

でも、そんなこと言われたって信じられないだろう?

「ゆうれいラジオ」なんて子ども向けの本みたいな名前だし、大体、深夜零時って学生を呼ぶ時間じゃないぜ。だから、Aのヤツも「誰か知らないけど、手の込んだ悪戯をするなぁ」ぐらいにしか考えて居なかった。

それで誰に相談することもなく、その日は何時ものように授業を受けて、家に帰って寝たんだ。


 ところがだ。Aのヤツが目を覚ますと、ベッドの中でも自分の部屋でも無いんだ。

俺は実際行ったことが無いからどんな場所かは人伝にしか知らねぇんだが、そこは一面白い壁でな、電気屋でも置いてないような大掛かりな放送設備があって、マイクに向き合うみたいにイスが置かれてたらしい。

そこはウチの学校の放送室だった。

自室のベッドに寝っ転がっていた筈のAは、どういう訳か放送室で立っていたんだ。

「何だ?夢でも見てるのか?」

何て言ってさ。それこそ正しく夢でも見ているような気分だっただろうなぁ、それか狐にでもつままれたか?何にせよ、とても現実とは思えないような体験だったに違いない。

混乱するAを他所に、ガチャリと扉が開いて誰かが放送室に入ってきた。

放送室に入ってきたのはウチの学校の制服を着た女子生徒だった。

日本人らしい黒髪を肩まで伸ばしていてな、色白でまるで白雪姫みたいな美人だったって話だぜ。

でも、その女子生徒はずっと白目を剥いていてな、口からは涎か胃液かも分からない透明な液体がドロリと垂れていて、首には土器の模様みたいに繩で付けた痕がついていてな、グチャッと潰した柘榴みたいな赤黒いドロドロした血が滲んでたらしい。これじゃあ、折角の美人も台無しだよなぁ・・・。

「ドうゾ、椅子に座っテ下さイ。」

操り人形みたいにパクパクと女子生徒の口がぎこちなく動いて、Aは座るように促された。

流石にここまで来ると、Aもなんだか不気味で怖くなってきてな。

(何かが可笑しい。自分は今とんでもないところに居るんじゃないか?早く逃げた方が・・・)

Aは悩んだが、身体は答えを待たなかった。

子どもが遊んでいる人形みたいに、身体が見えない何かに無理矢理動かされて、勝手に椅子に座るんだ。

「・・・ッ!」

Aはいよいよ危険を感じて、思わず悲鳴を上げそうになった。

だけど、何か言おうとしたても口はパクパク動くだけで何の音も発さない。

ジトッと冷たい水滴が身体を流れたのは単なる冷汗か、それとも・・・・・・・・・


 「ミなさン、第ジュッ回ゆうれいラジオのオ時間デす。」

女子生徒がAの隣に座ると、マイクに向かって喋り始めた。

もしかしたら、「ゆうれいラジオ」を名乗るだけあって本当に幽霊が居たのかもな。

放送機材に触っていないのに機材の電源が入って、スイッチがオンになっていた。とうとう、ゆうれいラジオが始まったらしい。

えっ?そもそも隣の女子生徒も人間かどうか疑わしい?

まぁ、確かにその通りなんだけどさ…でも、女子だぜ?

しかも美人だ。殺されたってさ、その時は美人の女子が俺の方を向いてくれるんだ。

だったら、俺は殺されたって別に構わねぇ。願っても出来ないぜ、そんな死に方はよ。

・・・何だよ、その顔は?俺が変なヤツだって言いてぇのか?違ぇぜ、他のヤツらが変なんだ。

まぁ、いいさ。どうせ、話が分かるとは思ってないしな。

・・・俺には理解出来ねぇが、Aのヤツもお前と一緒で女子生徒が恐ろしかったのかもな。

隣で話す声が壊れたCDみたいに不気味で、心臓がバクバク動いて今自分が何をしてるのかもよく分からないまま、Aは泣き叫ぶことも出来ないまま口をパクパクと動かすだけだった。

「メいンパぁソなりテぃーのれい子デす。本日ノげスとハAくンでス。よロしク」

「たっ!助けっ!?」

れい子に話を振られたお陰か、ようやく声がでるようになったAは必死に助けを求めたんだがなぁ。

「助けて」と言い終わる前に、ガンッ!と大きな音が聞こえた。

気がつくと机の上に頭を乗せて昼寝するみたいな体勢になっていて額に鈍い痛みが走って、視界は赤黒く染まっていた。後ろから機材に向かって叩きつけられたと気づくまで少し時間が掛かった。

「ん゛っ・・・がぁ・・・」

訳も分からないまま呻き声をあげるAに、れい子はもう一度言った。

「よロしク」

ゆうれいラジオが始まった。


 「マずハ、おタよリノこぉナぁデす。らジオねぇム『はンタいシょうメん』さンかラノ、おタよリ」

「れい子さン、Aくン、こン二ちワ!はイ、こン二ちわ」

「こ、こんにちは・・・」

「自分はゲストだから、今さえ乗り切れば大丈夫だ。」と、Aは必死に自分に言い聞かせた。

その甲斐があったのか、Aは何とかゲストとして受け答えが出来た。

今にも消えて無くなりそうなぐらい弱々しい・・・・・・車に轢かれたカラスが倒れてるのを見たことがあるか?あんな感じの瀕死の動物みたいな掠れた声だった。

「さイキん、ワたシたチハどノ人間を殺ソうか迷っテいマス。だレか、人間かラ見テおスすメは居マすか?おシえて下さイ。・・・ダそウデすガ、Aくンのおスすメは?」

「えっ・・・・・・・・・?」

Aは答えることが出来なかった。

まぁ、当然だよな。普通のラジオでも言い難いのに「ゆうれいラジオ」だもんなぁ。

下手しなくても、自分が名前を言った相手が本当に死にかねない。

でも、ラジオで黙り込んじまうのも不味いよなぁ?

「ギャ―――ッ!」

激痛とともに眼の奥からグチャグチャと肉を刃物で潰したような嫌な音が聞こえてきた。

ただでさ赤かった景色が更に赤黒く染まってな、ドロリとした生暖かい液体が身体を伝ってポタポタ流れて、混じった小さな光る石が肉を切り刻みながらカランッカランッと落ちていく。眼球を抉り破って飛び出してきたソレは、小さく割れた鏡の破片だった。。

「Aくンのおスすメは?」

まるで事件なんて何にも起きていないみたいにれい子が繰り返した。

れい子がやったのか?お便りを送った「反対正面」がやったのか?それともまた別の何かの仕業か?

発破をかけたつもりなのか、Aが何にも言わないでいたから、痺れを切らした何者かがやったんだ。

「・・・●●先生」

このままじゃあ、自分が殺されかねない。

そう思ったAは、絞り出すようにして担任教師の名前を言った。

・・・恨みがあったとかそういうんじゃなくて、ただ毎日顔を合わせていたから咄嗟に名前が出たって話だけど、それなら同じ生徒の名前が出るよなぁ・・・クラスメイトとか部活仲間とかさ・・・・・・。

まぁ、だから何だって話だが・・・お互い人の恨みは買いたくねぇもんだな?


 「なルほド!生徒デハ無く、大人の教師ヲ狙うコとデ、生徒たチにドうニモでキないコとヲ悟らセる!いイ考えデす。やッパり、こウイう悪辣サは人間二学ブに限リマすね!」

Aの答えを気に入ったのか、元々そういう芸風なのか、れい子は手を叩いて喜んだ。

でも、Aは素直に賞賛を受け取って喜べるような状態じゃなかった。

当然だよなぁ…頭と目からドロドロ血が中が流れて、眼球から飛び出した鏡に全身を切り刻まれて、その上自分で先生を殺せと言ったんだから。もう、自分のことで必死さ。

俺の所為じゃない!?俺の所為じゃないんだっ!?ってブツブツ呟いて自分に言い聞かせた。

「でハ、続いテのおタよリ。らジオねぇム『花のヲとメ』さンかラノ、おタよリ」

ビクッと、Aの身体が恐怖に震えた。それこそ「蛇に睨まれた蛙」みたいにな。

お便り一通捌いただけじゃあ、ラジオは終らない。ゆうれいラジオはまだ続くんだ。

「さイキん、人間でノ遊ビ方がまンねリデす。何か、面白イ遊ビ方を教えテくださイ。・・・ダそウデす。そウですネ、ワたシはいツも締メ千切るノデすガ、偶にハ新シい遊ビをすルのモ面白そウデす。Aくンのおスすメはドンな遊ビデすカ?」

Aは思わずビクッと身体が震えた。

それに、このラジオも全て「遊び」なんだと思うと、心臓がギュッと握られたように息苦しさを感じて自然と「はぁはぁ」と荒い息が漏れ出した。

もう自分が生きてるのか死んでるのかも分かんなくってさ、なのに頭と目は酷く痛いままで、その痛みとドロドロ流れる血がAの意識を現実に閉じ込めるんだ。気が狂うことすら許されないんだよ。

「・・・水道」

それでも何か言わないとまた酷い目に遭わされるからなぁ、Aはブルブル震える唇から何とか一言絞り出した。いや、もしかすると、絞り出させられたのかもな?

何で水道かって?そんなのただの偶然だよ。

この極限状況でマトモに考えが働く訳ないだろう?だから偶然頭に浮かんできた単語を言ったんだ。

「水道・・・なルほド、水道かンはそコら中にハりメぐらサれテまスかラね。花のヲとメさンがドこ二イてモ、リよウにハ困りマせン。かンガえマしタね!」

幸い、またれい子に答えは気に入って貰えた。今度はさっきみたいな酷い目に遭わずに済んだんだ。

水道遊びの相手になったヤツはご愁傷様だけどな、葉書を送ってきたのが幽霊か妖怪か・・・はたまた別の何かかは知らないがよ、きっとAが何も言わなくても犠牲者を出したぜ。そう思わなきゃやってられねぇよ。


 「でハ、続いテ最後ノおタより。らジオねぇむ『やネ裏ダい家ゾく』さンかラノ、おタよリ」

いよいよ最後のお便りだが、もうAの心身はボロボロさ。

「俺じゃない・・・俺じゃ無いんだ・・・」って、まるでA自身が幽霊になったみたいにブツブツ呟く。

そうやっていないと、もう自分と保つことすら出来ないのさ。

「近ヂか、まタ昔ノよウに人間ヲ食べヨウと思いマす。そコデ、食いデのアル人間をサがしテいるノデすが、人間ノAくンのおスすメは誰デすカ?・・・ダそウデす。人間ヲ食べル方ガ居るノは知っテいマしタが、美味シいノでシょうカ?Aくン、食べルなラ、おスすメは誰デすか?」

「・・・・■■くん」

Aが口にしたのはクラスメイトの名前だった。太っちょだが気のいいヤツだったらしい。

「なルほド、確か二大人よリモ子ドもの生徒タちノ方が、柔ラかソうでス!ワたシも食べル時は子ドも二シまスね!」

また、れい子が手を叩いて感心の声を上げる。

もうAに罪悪感なんてものを気にしている余裕はなかった。ただ殺されたくない一心で唇を動かすんだ。

光の無い、何処を見てるかも分かんないような虚ろな目でさ、と機械よりも感情の無い声で淡々、ただ頭に浮かんだ同級生の名前を口にするんだ。実際、頭は碌に働いてなかった。考える余裕が無いんだよ。

「そレでハ、名残ヲしイデすが、そロソろ、えンでィンぐノおジかンデす。こノ、ラじオハ、メいンパぁソなりテぃーのれい子ト、げスとハAくンデおオくリしマしタ!」

そうして、やっと「ゆうれいラジオ」は終ったんだ。


 え?この話は何処で知ったのかって?

まぁ、待てよ。話には続きがあるのさ。というのもな、この翌日、Aは学校に来たんだよ。

最初、Aは昨夜のことを夢だと思っていた。実際、嘘みたいに頭も眼も治っていたしな。

でも、学校にやって来たAは嫌でも昨日のラジオが現実だったと思い知ることになるのさ・・・

最初は太っちょで気のいい■■くんだった。

朝のホームルームの時のことさ、担任教師の●●は顔面蒼白って感じでな、まるで幽霊みたいに青ざめた表情でやって来ると、ガチガチと震えて歯を鳴らしながら恐る恐る言ったんだ。

「今朝・・・■■くんの死体が見つかりました。」

何でも、小さな鼠か何かに身体中生きたまま食い殺されていたらしい。

検死解剖をした医者が飛び上がって驚いたって話だぜ・・・まだ1人目だってのにな。

Aはラジオのことを思い出して、恐怖や罪悪感がムクムクと湧き上がってきた。

「おぇ~っ!!」

Aは教室で吐いちまった。まるで昨日の恐怖が堰を切って流れ出して来たみたいにな。

周りは大騒ぎさ、心配や揶揄いの声が教室中に木霊した。けれど、その時にはもうAは白目を剥いて気絶しちまってたって話さ。


 それからAは保健室に搬送されたんだがな、Aが気絶してもラジオの葉書の再現は終らないんだ。

昼休みには頭を突っ込む形で●●先生とトイレ横の大きな鏡が融合しているのが見つかった。

分かるか?融合だ。罅なんて欠片も入ってないし、鏡を取り外しても首や頭は見当たらない。なのに、●●先生の首から上は鏡に突っ込んでいて抜けないのさ。これで「反対正面」の葉書は再現された。

勿論、「花の乙女」の葉書も再現された。

放課後のことさ、ションべンがしたくなった見回りの先生が水道管に上半身が入った女子生徒を見つけた。

筋肉も骨もお構いなしに無理矢理圧縮されて入ってたって話さ。当然、女子生徒は死んでた。


 ラジオで自分が言ったとおりに人が死んだことを知ったAは相当気に病んだらしい。

保健室で意識を取り戻して話を聞くなり、小声でぶつぶつ何か呟くようになってさ、家に帰って自室に閉じこもって出てこなくなった。引き籠もりってヤツさ、親が飯を持っていっても一口も手を付けなかった。

何をする何をする訳でもなく、ただ仰向けに寝っ転がって小声でぶつぶつ呟き続けるだけなんだ。

心配した家族が無理矢理にでも部屋から出そうとしても、タコみたいに床に張り付いて動かない。

どうしたものか?と、周りが頭を抱えている内に、Aのヤツは部屋でひっそりと首を吊って死んじまった。

この1連の話はAの部屋に残された遺書に書かれていたらしいぜ。


 なぁ、お前ちょっと取材ついでに「ゆうれいラジオ」に出演して来いよ。

何、心配しなくっても招待状なら今朝俺の机の上にあったヤツをやるからよ。それで実際に見て教えて欲しいんだ。噂のれい子がどのぐらい美人なのかをよ・・・・・・これで俺の話は終わりだ。

さて、次は誰のところへ取材に行くんだ?


パクりじゃない、リスペクトッ!

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