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あの海へ


 みんなで街中……いや県内中のトラック専門店を周り、遂には近隣県まで出張って早一ヶ月。


 とうとう俺たちは200台のトラックを用意することに成功してしまったのだ……!!


 少しでも重い荷物を積んだらぶっ壊れそうなトラックから、快適装備が揃った新古車まで非常に多くのトラックを買いまくった。


 いくら中古といえども総額を考えると薄ら寒いものがある。


「やっとトラック屋さん巡りが終わったミャ……」

「もう俺は金稼がなくていいのか?」

「そうだよ、お疲れ様アダムくん! キミのお陰で10億も資金があったから200台も用意できたんだよ」

「10億!? もうアダムたちはこっちの世界で暮らすほうが幸せじゃないか?」

「確かにそうかもしれない。けれど俺は故郷の事がどうしても捨てきれないよ」

「私はアダムに着いていくだけだ」


 ……そうなんだよな、コイツらのこういう純粋すぎて損をしちゃってるトコが俺は尊敬してるんだよ。


 一度抱いた夢を決して忘れないその姿が。


 一度語った夢を決して捨てないその心が。


 エシャーティも全く同じ性格だから俺は本当にいい人間たちに囲まれたと思う。だからそいつらの夢を少しでも手助けしたいと思ったんじゃないか。


 さてしみじみとするのはこのくらいにして、集めたトラックをどう一箇所に集めるのか考えなくてはな。


「さすがにゴロでも200台ものトラックを一箇所に集められる土地なんて持ってないよな」

「あ、実は田舎に空港跡地があってさ〜。車のコレクションとかを保存、管理するガレージにでもしようと思ってたけど、滑走路剥がしたりするのが面倒で放置してる土地があるんだ」

「お前……マジでなんでもかんでも持ってるな!」

「改造が終わったトラックは順次その空港跡地へ送るようにしてたから、後はもう乗るだけさ!」


 もはやこのゴロという富豪に細々とした問題は相手にならないのである。


 確かに空港跡地なら超巨大な滑走路だってあるし、空港ロビーなんかは取り壊すのも金がかかるだろうから残されているはず。だったら寝泊まりだって出来るだろう。


 あらゆる問題がようやく全部解決した。遂に俺たちはのアダムとイブの悲願である”アトランティスへの移民作戦”を実行する時が来たのだ!


 そして200台のトラックで10万人の異世界転生者をひき終わったら……


 俺のやりたいこと、やるべきことをやらんとな。


「それじゃゴロ、その空港跡地まで早速行こうじゃねえか!」

「よしっ、そうこなくちゃね。じゃあみんなミニバンに乗って出発しよう」

「なぬ、もう行くのか。一度ワシは天界に行って決行の時が来たと他のヤツらに伝えてくるぞい」

「頼んだよマキマキおじさん。天界から戻ってくるまでは待機しとこうか?」

「いや、現地に着いたらワシを呼んでくれれば出現出来る。近場に海はあるのかのぅ?」

「あるある、めちゃくちゃ隣接してるよ。ていうか空港って基本海の近くに建てるからね」

「そうか! それじゃ余裕で出てこれるわい!」


 さすが海神だ。海さえあれば呼ぶだけで来てくれる便利な存在である。


 思えばマキマキおじさんにもずっと長いことお世話になりっぱなしだ。マキマキおじさんが言うには俺たちが他の神を倒したり少しでも信仰してくれればそれで十分とは言っているが、一度きちんと礼をしたいものである


 さて、マキマキおじさんも天界へと昇天していったし俺たちも出発するとしよう。ところでどこにある空港跡地なんだろう。あんまり遠いと車じゃなくて飛行機とかで行ったほうが早いかもしれんぞ。


「なあゴロ、その空港跡地ってどこにあるんだ?」

「ちょっと遠くてね。この街から車をずっと走らせたら……だいたい10時間くらいで着くかな」

「へぇ〜。もしかして太平洋側か?」

「そうそう! 有名な景観百選の一つでね、夕焼けと朝焼けはまるで灼けるような輝きと評されてる海なんだ」

「……にゃんか聞いたことあるミャ」

「アグニャも気づいたか。そうだな、そこはどう考えてもアソコだな」

「やっぱりかみゃあ。あの海かみゃ〜」


 そう、ゴロの言う空港跡地に面した海というのは……


 俺とアグニャがこの世に別れを告げた場所であり、新たな異世界で再出発を果たした入口のような場所。


 つまり第一話で最期の場所に選んだあの海に違いない!


 そういえば近くに空港の跡地があったが、まさかあれがゴロの所有地だったとは思いもよらなかった。


「お、キミたちも行ったことあるのかな?」

「実はその海辺で俺たちは死んだんだよなぁ」

「ええ!? そ、そうなの!?」

「それじゃそこに行くのは嫌だったりするの? でもまた別の場所にトラックを集めるのは大変よ」

「みゃん。別にその海にはそこまで嫌な思い出はにゃいから気にしにゃいでいいミャ」

「そうだな。考えようによっては今の楽しい日常へのスタート地点とすら思えるし」

「そっか! それは安心したよ。他の候補地となると飛行機で行く範囲になるからね」


 いや他の候補地もあったのかよ。コイツどんだけ土地持ってんだ。


 しかし最後の最後に再びあの海へ行くことになるとはなぁ。前回行ったときはもう絶望に絶望を重ねててロクに楽しめなかったけど(というか自殺しに来てたし)、今回は仲のいいやつらと楽しく過ごせるってなんだか不思議な巡り合わせだ。


 きっと死にかけていたアグニャを見つめ酒をがぶ飲みしていた昔の俺が今の状況に好転する、などと言われても絶対に信じないだろうなぁ。


「おじちゃん、おじちゃん」

「なんだアグニャ。どうした?」

「今、すっごく寂しそうにゃ顔してたミャ」

「……そんなことないぞ」

「にゃにをしたいのかは知らにゃいけど、もう死のうなんて考えニャイでみゃ〜」

「なんだよそれ〜。こんな幸せな身で死ねるかよ」

「みゃん〜。だったらいいミャ。ゴロゴロ……」


 急になにかを訴えかけてくるアグニャに俺は少しチクリとしながら返事をした。


 気づいているのだろうか。気づかれてしまったのだろうか。


 まあでも、もう俺がいなくなってもアグニャの周りにはいっぱい友達が、頼りにできる人が集まった。


 だから心置きなくすべき事を出来る。


 まっ、それはもう少し先の事だ。まだしばらくはアダムたちの夢の手助けをせねばならんからな!


「さっ、それじゃそろそろ空港跡地へ行くか。みんな長旅になるから準備しろよ〜」

「しばらくは空港跡地で過ごすから着替えとか持っていかないとね。そうだな、ボクは嫁たちに少し病院を離れるって言ってくるよ」

「そうね〜それがいいわ。ねえイブ、あたしと一緒に準備しよっ」

「おいエリミネーター、俺は何を準備すればいいんだ?」

「みゃん〜。コイコイ棒はどこだったかみゃ〜」


 賑やかに自分たちの必要な物を車に積み込み、俺たちはかつての海へ向かう。かつて絶望を抱き向かった先へ、今は充足感と共に向かっている。



マキおじ「やっほー! みんなおるかのぅ!?」

ガイア「オッくん! ちゃんと協力してくれそうな子は集めといたわよ〜!」

ゼウス「ど、どうも、フィンフォンファッタラリーラヨイヨイヨーイです……」

フレイヤ「ねえオケアノス、あんたの手伝いしたらホントにアグニャちゃんの使ってたコイコイ棒くれるの?」

アトラス「ワシの信者があんなに頑張ってアトランティスの復興してて泣けてくるのじゃ! うぉぉぉん!」

マキおじ「かーちゃんありがとう! こんだけいたら余裕じゃな!」

ガイア「オッくんのお友達とママが加護を与えた女の子も頼んでるんでしょう? 頑張っちゃうわよ〜!」

ゼウス「自分、もうお二人より信者も格も少ないんで何でもさせていただきます……」

フレイヤ「アグニャちゃん今日もきゃわいい〜! 私のペットにしたいー! しゅきしゅきー!」

マキおじ(うんうん、天界でもかなり力のある神が協力してくれるおかげで上手くいきそうじゃのう。ちょっと変なの多いけど)


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