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ネグレクト海神


「じゃあアグニャ、また今度会いに来ような」

「みゃん! ママもいつでも来なさいって言ってたみゃ〜!」

「あたしが医者として稼ぎ始めたら、いつかお家を買ってアグニャのお母さんを飼いたいわね〜」

「ホントかみゃ! そしたら絶対に楽しいにゃん〜!」


 たっぷりと母親とスキンシップを取ってすっかりアグニャは満足したようだ。ペットショップを後にした俺たちは一度ゴロの家に寄りマキマキおじさんを連れてくる事にした。


 あんまりにも一人ぼっちにさせると可哀想だし、ゴロの家族が無事なのかを伝えないと安心できないだろうしな。


 優雅に昼過ぎの街中を流すのはとても心地がいい。平日の昼飯時を過ぎているから車通りも少ないし、とてもリラックスした時間が車内には流れていた。


「ねえねえ、あたしもコレ運転できる?」

「少し練習すれば俺と同じレベルにはすぐなれるさ」

「みゃん〜、エシャーティ運転したいのかミャ?」

「そりゃもちろん! 一つでもやった事のない事を減らしたいもん」

「そういえばアグニャはあんまりピッピーに興味無いよな」

「だってジッとし続けにゃいといけにゃくて、落ち着かにゃいんだみゃあ〜」


 しかしエシャーティの運転は先入観で語ることになるけど、非常にヘタクソな感じがして少し怖いな。その、女の子だからってわけじゃないぞ。ただエシャーティはドン臭いし、お世辞にも運動神経が良いわけじゃないし。


 でもこの車はそういう人でも、というかヨボヨボのご老人でもプロフェッショナル・ドライバーと同レベルで運転できるような制御装置が山盛りに積まれてある。ほら、例えばこのモードに入れると……


「ほら見ろエシャーティ、車ってのはすごいんだぜ」

「えっ!? ハンドルが勝手に動いて右に左に曲がっていく!?」

「さらに……よいしょ」

「ちょっと、危ないわよ! 足を正座したらぶつかるよ!」

「さらにはこうだ! ウィィィィィィィン」

「みゃ〜! イスを倒して寝る気マンマンだみゃ!」

「で、でもなぜかゴロのお家についちゃった……」


 正直俺も途中までヒヤヒヤしたけど、赤信号もちゃんと認識して止まったし、曲がるときにウィンカーさえ出せば勝手に曲がってくれたし、駐車アシストを使えば勝手にガレージへバックで停めてくれた。なんていうか、俺が乗る必要なくね?


 でも車にあまり乗らないエシャーティたちはそれがどのくらいすごい事かいまいち伝わらなかったみたいだ。あんまり盛り上がらずにマキマキおじさんを呼びに行ってしまった。これが一般的な人と車好きの意識の差か。


「待っておったぞ、待っておったぞ〜! やっと迎えに来てくれたのぅ〜!」

「いやー、結構色々あってさ。でもマキマキおじさんがクァァしたおかげでエシャーティが執刀できたし、MVPだわな!」

「そうじゃろう! はぁ〜、腹が減ったのじゃ。みんなもう昼メシ食ったのかの?」

「そういえば俺たち今日なにも食ってねえ……」

「そうだ! あたしさ、ずっと病院食で外食してみたかったの。アダムたちには悪いけどどこか食べに行きたいな〜」

「それは良いアイデアだみゃ。おさかにゃが食べれるにゃら、どこでもいいニャ〜」

「ほっほ〜! ワシ、一度日本食が食べて見たかったのじゃ!」


 なるほどなるほど、みんな外食したいのか。でも俺はあんまり金持ってないから安くで済む店にしないとな。魚が食えて、日本食で、なおかつ病院食とあんまり被らないような物で、しかも4人全員が好き勝手に食っても高額ではない店……


 あ! めちゃくちゃピッタリな条件の店があるじゃねえか! いや、俺すごい頭が回ったよ今。これ以上に無いくらい、この面々が満足できる提案が浮かんだよ! いや〜、参ったねこりゃ。ベストアンサー来ちゃったよ。


「よし! それじゃ……回転寿司を食うか!」

「みゃん〜!? 回転寿司!! やったやった〜! 人間化して以来、史上最大に嬉しいみゃ〜!」

「いいわね〜回転寿司! そういえばあたし、お寿司は食べたことないの! まあ当然だけどアハハ!」

「ワシも回転寿司はよく知っとるぞ! でもお店のシステムが分からないから食べたくても食べれなかったのじゃ!」

「おうおう、みんな回転寿司ははじめてか! いよぅし、それじゃ決まりだな!」


 回転寿司と決まっただけでめちゃくちゃ喜んでくれた。なんかこう、今の俺ってみんなの中心に立って物事を進めててさ、めっちゃ充実してない? しかもみんな大満足なベストアンサーを即座に弾き出したし。


 最近の俺はマジで良い環境に身を置いてるからか、すこぶる頭が冴えてきてるような気がするんだよ。自惚れかもしれんが俺自身では最盛期を日々更新している気がする。昨日の俺より確実に弱者男性から遠ざかっているのだ!


 ……とまあ気色の悪いナルシストなモノローグはこれくらいにして、最寄りの平日お安いセールをしている回転寿司屋へ向かおう。


 実は俺自身も外食をほとんどしないからどこにあるのかわからないので、ナビで検索してから発進した。


「ポーン! 目的地までおよそ10分くらいかかります」

「へぇ〜、あなたホントに色々な機能を使えるのね。あたし何がなんだかサッパリよ」

「エシャーティは病院の機械を色々触ってたじゃないか。そっちのほうがすごいよ」

「あんなの全世界どこの病院でも共通の機械よ。どこで触っても同じ機能しかないけど、車はそうではないでしょ?」

「みゃん〜! 白い大きなピッピーとこのピッピーはまるで別々の機能が山盛りで、結局にゃんにも覚えてにゃいみゃ〜」


 まあ医者や宇宙飛行士って半ば全世界の共通職みたいなトコあるからな。だから医療機器なんかはどの国で使うにしても全く同じ使用感になるよう統一されていて、一度覚えればずっと使い続けられるのだろうか。触ったことないから知らんけど。


 しかしこのナビ、前々からテレビの映りがキレイだな〜と思っていたがナビまで鮮明に映るな。なんか普通のナビって昔のガラケーとかブラウン管に近い雑味のある画質だけどさ、最新の車ってもうほぼスマホ並みのキレイな画面なんだな。


「うーむ、何度見てもキレイだ……」

「うぇ!? ちょ、ちょっと、急に何を言うの! 恥ずかしいわね〜、えへ、えへへへ」

「うんみゃ〜! 前の席でイチャついてるみゃ〜。マキマキおじちゃん、このボタンを押して攻撃するミャ!」

「承った! それ、|オーシャンライトフラッシュ《照明をチカチカさせて眩しい技》!!」

「喰らえミャ! |第一話の苦しみの再現ショー《前の席のエアコンを閉じて後ろに回す》!」


 なんか後ろで騒がしい事をしてるようだが、何を盛り上がってんだろう。それにエシャーティも窓を開けて嬉しそうな顔でたそがれているし、そんな回転寿司が待ち遠しくてテンション上がる?


 ……って、勝手にエアコン全部後ろに回してやがる! あちいよボケ! エシャーティが窓開けて涼んでたのはそういうことか!


 ていうか何だろう、ヤケに電気がチカチカしてるけどもしかして遂に壊れた? 外車だからゴロも壊れるのは覚悟の上だろうが、持ち主不在の時に壊すのはちょっと言い出しにくいぜ……!


「うふ、うふふ、キレイなんだ、あたしキレイなんだ……」

「おりゃ! 次は|オーシャンフレキシブルカラー《電気の色を変えまくり目障りな技》!」

「みゃ〜! |第一話の苦しみの再現ショー2《前の席の暖房を勝手に最大にする》!」

「あれっ? 今度はナビの設定変わってるぞ。おーい、後ろであんまり遊ばんでくれよ、そっちで行き先変えちゃってるぞ〜」


 あー、まさかこれも壊れたのかなぁ。結構飛ばしたりしてるし、色んなやつが面白半分で色んなトコを触ってるからなぁ。まあいいや、とりあえず回転寿司屋に行って腹ごしらえだ!



アダム「そろそろ昼メシが食いたいな……」

イブ「しかし働きもせず、むしろ頼み事ばかりの私達からは食わせてくださいとは言い出しにくいな……」

ゴロ「やあ、二人ともお腹すいたんじゃない? ちょっとハンバーガー買ってきたから食べようよ!」

アダム「ハンバーガー! ありがたいなぁ、あっちの世界(アトランティス)では深夜警備のお供だったよ」

イブ「わかるわかる。騎士団に街のパン屋が昼頃に売り歩きに来て私もよく頂いたよ」

ゴロ(なーんだ、アトランティスはハンバーガーがあるタイプの異世界なんだ。ちょっとリアクション期待したんだけどなぁ……)

アダム「……おい! この油ぎった菓子はなんだ!? もぐもぐ」

イブ「菓子と言うには甘くないな。ぱくぱく」

ゴロ「あっ! それはね、それはね! ポテトって言うんだよ! ほら、食べて食べて! どう!?」


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