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異世界転生はトラックで


 ある日突然暴走したトラックにひかれてしまい命を落とす。すると不思議な空間へいつの間にか飛ばされ、神と名乗る者が色々とくっちゃべったあげく、どこか見知らぬ異世界へと転生していました……


 今現在最も人気を誇るであろうこの設定はいつしか小説の一ジャンルを築くほどに流行し、やがてこの世界では”異世界転生といえばトラック”というのが定着した。日本人もアメリカ人も中国人もヨーロッパの人々も、みんなみんな転生と聞けばまずはトラック、その次に別の方法だと言うだろう。


「まさかトラックが異世界転生のキーアイテムだと言うのか?」

「その通りじゃ。あの無慈悲で無骨なフォルムはまさに人を効率的に他界させる道具なのじゃろ?」

「いや、そんなわけねえだろ。あれは積載性を追求した結果のフォルムだよ」

「さっきからトラックトラックと言っているが、それはギロチンのような何かか?」

「ああ、アダムたちは分からねえよな。この世界に来たとき、あそこ(アトランティス)と違って色々と機械がうろちょろしてただろ?」

「そうだな、馬車のような物がひとりでに動きまくってて怖かった。この世界は初見に対して当たりが悪すぎる」


 異世界の人々よ、あれにぶつかったらタダでは済まないからビクビクするくらいでちょうどいい。きちんと本能が警笛を鳴らしてるようで安心した。やはり車を見たことない人でもあれに当たったらヤバいって分かるんだな。


「トラックっていうのはあの機械の一種で、物を運搬するための機械なんだ」

「……あ! そういえば町中で密集してた人間が一斉に四角い機械に入っていって走り去っていったが、あれがトラックか!?」

「うーん、惜しい。それはバス」

「ていうか、意外とあなたたち外を歩いてるのね。なんだか予想外」

「アトラスさまに案内を頼んでエシャーティを探しこの世界を少し歩き回ったのだ。するとそなたは急に白い機械に乗ってどこかへ行き、私達は途方に暮れた……」

「イブたちって地震の起こる前からこっち来てたの!?」

「何言ってんだいエシャーティ、あの地震の日の数日前にドナー適合者が見つかったってボク言ったでしょ」


 そういえばマキマキおじさんが言ってた方法の一つに”好きな時間を指定して異世界転生する方法”があったなぁ。それでアダムたちはたまたま俺たちが死ぬ前の日付を指定してこっちにやって来てたってことか。


 ということはこの二人が少しだけ違う行動を起こしていたら俺たちが死んでない世界線になってた可能性が……いや、そういう可能性の話を考えると頭が痛くなってくるから止めとこう。今は今、昔は昔だ。何言ってんだ俺。


「まあともかく、トラックで異世界転生できるのはわかった。他に条件とかあるのか?」

「ずばり、何の特徴もない一般人をアトランティスへ確実に送るには”何人もの神”と”何人もの神殺し”、そして”神獣”が必須じゃ!」

「わぁ、ちょうどここに神を呼べる人が何人もいて、神を殺した人も何人もいて、ついでに神獣二匹分の子がいるわよ」

「はーっはっはっは! すげえ!」

「なんてご都合主義だ……」


 つまり俺たちが協力すればこの世界に見切りをつけたいヤツらをドカドカあっちの世界(アトランティス)へ送れるってことか! しかしそれとトラックがどう関係するのか……ハッ、まさか!


「もしかして俺たちがトラックに乗って転生希望者を跳ね飛ばしまくればいいのか!?」

「まさか〜。そんなえげつないパターンだった時のエリミネーションみたいな方法で転生できるわけないよ」

「そうだミャ。おじちゃんは異世界に行ってから思考がエキサイトににゃってるミャ〜」

「てへ、そうだよね、そんな物騒な事で転生できないわな。まあトラックの荷台に人詰めて爆走する感じかな?」

「いや、人を跳ね飛ばしまくるパターンじゃよ」


 ……うわぁ、えぐい方のやつかよ。なんていうかさ、この作品は全年齢対象なんだから人と夢を荷台に詰めて、それをマキマキおじさんとかガイアの助けを借りて天に昇り、やがて異世界へワープするとかでいいじゃん。想像しただけでめっちゃファンタジーな絵でおもしろいじゃん、それ。しかも独自性もすごいし。


 それをなんで人を跳ね飛ばしまくるとかいう夢も希望もないどころか、殺伐とした方法でやらねばならんのよ。しかもさ、この中で車の運転ができるの俺だけだし。必然的に俺がやる担当じゃねえか。


 さすがにそれを聞いたらエシャーティやアダムたちは青ざめて疑問をぶつける。いいぞ、頭脳派たちでこの変なおっさんを言いくるめ、夢のある方法に変えさせてくれ!


「ねえ、跳ねられたらさすがに痛いでしょ。そこら辺どうなの。医者として見過ごせないわよ」

「まあ痛いじゃろうな。でもワシら神々が死にたがってる転生希望者を見つけてくるから安心してひけ!」

「いや待て、オケアノスよ。俺たちの世界に死にたがりばかり連れてこられても困るぞ」

「大丈夫じゃ、あまりにもネガティブな人間は天界のほうで記憶を消し、誰かの子供として生まれ変わらせる。たまには他の神も働いて貰わんとのぅ」

「私達の願いを天界の神々はすんなり受け入れてくれるだろうか?」

「そなたらはかなり天界で注目を浴びている異世界渡航者じゃし、面白いもの好きのヤツらは関わりたがるじゃろう」

「うーん、マキマキおじさんの反論が強すぎる」

「うみゃ〜、にゃんかディストピアみたいミャ」


 このヒゲのおっさんはやると決めたら意見を貫いちゃうんだよなぁ。なんかみんなも段々納得してきちゃってるし、もうこの案で行っちゃうとしようか。


 よくよく考えるとかなり凄惨な計画だけど、異世界転生といえばトラックでひかれる、というのが定番だし転生希望者たちもそこは受け入れてくれるでしょ。もうどうにでもなれ!


「わかった、わかったよ。どうせ俺が心を無にしてトラックを運転すりゃ解決するんだ。やってやろうじゃねえか」

「いいの? あたしたちは見て見ぬふりが出来るけど、あなたはどうしても人が死ぬ様を長いこと見なきゃいけないのよ……」

「そんなのエリミネーションですっかり慣れっこだよ」

「ボク何度も思うんだけどさ、そのアトランティスってそんな殺し合いが日常の殺伐とした世界だったの?」

「何を言う、医者! アトランティスはこいつらが来るまでは色んな神の加護に恵まれ平和で穏やかな世界だったんだぞ」

「あ、ごめんごめん、そうなんだね。ややこしいなぁ」


 ……というわけで俺たちはアダムとイブの願いを叶えるため、全員で協力してアトランティスへこの世界の人間たちを送るための準備を進めることになった。


 この計画の最大の難関はトラックを用意することだろう。むろん何万人という人間を跳ね飛ばすのでただのトラックではすぐに壊れてしまうのは目に見えている。


 なのでめちゃくちゃ大きくて頑丈に改造したトラックを何十台か用意するか、壊すのを前提にして安いトラックを何百台も用意するかなども考えなければいけない。ここは俺とゴロが相談して計画するしかない。


 ま、俺たちにはいくらでも時間があるからじっくりと考えて事を進めていけば何とかなるだろう。


 さ、それじゃアトランティス復興計画の最初の一歩を踏み出すとしましょうかね。記念すべき第一歩は……


「で、トラックとはなんなのだ、エリミネーターよ」

「きっとトラックは恐ろしい乗り物じゃないかな。それに乗るなんて私こわいかも、アダム……」

「そういえばあたしもトラックは見たことないわね……」

「うみゃ〜、無知すぎて相手するのが疲れるミャ」

「はぁ……ほら、これがトラックだよ」

「おお!? これはこの世界の人間が持ってた装置! エリミネーターも持ってたのか!」

「ふふーん。イブ〜、これはスマホって言うのよ!」

「スマホ! スマホってなんかかっこいい!」


 最初の一歩はこの世界に慣れてない異世界人と元重病人に、計画に関する道具の説明をすること。さて、これから大変だな〜……



マキおじ「そういえば金龍くんはここにはおらんのか?」

ゴロ「ああ、金龍くんはあの病院の院長にボクが海外に行ってる間預けてたら愛着が湧いたそうでね。今は引き取られてあそこの子だよ」

アグニャ「でもあそこから出たがってたにゃあ」

マキおじ「そうじゃな。金龍くんは元々野生の身だと言ってたし、少し愛が重くて窮屈かもしれんのぅ」

ゴロ「なるほど……元々はボクが可愛がってた魚だし、あそこの院長に後で助言しておくよ」

おじ「なんかゴロもファンタジックな会話をするのに慣れてきたなぁ……」


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