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帰る決意


 エシャーティの神技的なマッサージを受けていたらいつの間にか眠ってしまったようだ。いやぁ、とんでもない妙技の持ち主でビックリした。

 あいつ普段は指をピクピク動かしたり、脚をモジモジと擦り合わせていて落ち着きがないけど、水泳とかマッサージとか得意な事は天才的な才能を見せてくれて俺たちを楽しませてくれるぜ。


「起きたみたいね。おはよっ」

「おはようさん。ツボ、ありがとな! めちゃくちゃ指使いが神がかってて寝る気が無いのに寝ちゃったよ」

「うふふ、喜んでくれたみたいで嬉しい!」

「ふにゃにゃ……」

「アグニャも気持ちよさそうに寝てるな〜」


 マキマキおじさんもまるでドザえもんのようにプカプカと海に浮いて気持ちよさそうだ。


 さて、昨日は結局話が曖昧になってしまったがこれからどうしようかね。この世界は永遠を過ごすにはあまりにもサッパリしすぎている。そりゃしばらくの間は楽しいだろうけど、いつかは限界がやってくる。その時が来てからどうするか考えてもきっと良いアイデアが浮かばないだろう。なので早めに決めておかないと。


「なあエシャーティ、これから俺たちは何をすればいいんだろうな」

「ずっとのんびりしたかったんでしょ、あなたは」

「そうもいかねえだろ。お前の夢を叶えずにのんびりできるか」

「そっか。やさしいね」


 ニコッと微笑みながら俺を見つめてくる。この可愛らしい笑顔をもっと見るためには決してのんびりとしてられない。それにアグニャにももっともっと色んな事をさせてあげたいしな。


 今は長旅に区切りがついてスヤスヤと眠っているが、アグニャだって本来は色々なところへ行くのが好きなタイプなんだからこの世界はすぐに飽きてしまうはずだ。


 ……待てよ、この世界に留まるっていう先入観がアイデアの邪魔をしてるのでは?


「なあエシャーティ、もしも地震で死ぬ直前に戻れたら……とか考えたことある?」

「唐突ね。もちろんあっちの世界でやりたい事もいっぱいあったよ。戻れるなら戻りたいくらい」

「そうだよ、戻ればいいんだよ。こんな死んだ世界に留まるより、死ぬ直前に戻ればいいんだ!」

「そうは言ってもどうやって戻るのよ」

「マキマキおじさんにも話してみよう。もしかしたら……」


 もしかしたらあの地震で死ぬのを免れるかもしれない。エシャーティも、アグニャも。


 そしたら俺たちもう一度出会って、改めて色んな事をしようじゃないか。3人でいっぱい美味しい物食べに行ったり、遠くの観光地へ遊びに行ったりするんだ。


 考えただけでもわくわくする。やはり生まれの世界で過ごすのが一番なのだろうか。それともあっちの世界でエシャーティと過ごせるという楽しみが出来たからだろうか。俺はもう居ても立っても居られなくなり、海に浮かぶマキマキおじさんに砂を投げながら声を掛けた。


「おーいマキマキおじさーん、用事があるから起きてくれ!」

「ゴホッ、ゴホゴホ! なんじゃこりゃあ! す、砂!?」

「うみゃ〜、やかましいにゃ。せっかく気持ちよく寝てたのに」

「ちょうどいい。アグニャにも関わる話をこれからするぞ」

「にゃん〜?」


 マキマキおじさんとアグニャを起こした俺は改めてさっきの思いつきを話してみる。するとアグニャは神妙な面持ちで俺に質問をした。


「おじちゃんはそれでいいのかみゃ?」

「いいに決まってるだろ。なんか変な事言ってるか?」

「だっておじちゃん、以前の生活をしてた時は毎日つらそうだったにゃ……」

「そ、そうなの!? あなたが辛そうな顔してるの想像つかないんだけど」

「あのな……ま、めちゃくちゃ底辺の暮らしをしてたからアグニャが不思議に思うのも仕方ないわな」

「そうだみゃ。あんな大変そうな暮らしに戻るにゃんてもったいにゃいにゃあ」


 確かに以前の暮らしに戻るのは正直言うと嫌だよ。けど今は違う。元の世界に戻ったらこの二人を養うために本気で動こうと思ってる。もちろんあんなゴミみたいな親の元なんて即座に出ていってやるし、エシャーティとアグニャが俺を支えてくれるならばいくらでも体を張る覚悟だってある。


 とにかく以前より悪い状況にだけはならないだろうから、それならば弱者男性なりに必死にもがいてやるさ。


「お前ら二人がいてくれれば俺はどんだけでも頑張るさ。そんな心配より、向こうで何をしたいかとかの方が重要だ」

「みゃあ〜、おじちゃんが毎日遊んでくれたらなんでもいいミャ」

「あたしはせっかく医師免許取ったんだし、医者になって医療で人を救ったりしたいわね」

「ワシも会いに行っていいのかのう」

「え、オケアノスおじさんも来れるの?」

「ワシをなんじゃと思っとるんじゃい!」


 いや土着神。マキマキおじさんはこの世界線でしか実体化できない土着神だと思ってたけど。もしかして俺たちの世界のオケアノスと同一人物だったりするのだろうか?


「ねえ、もしかして神様ってどの世界でも同じ人物?」

「そうじゃよ。今この世界にはアトラスとかガイアしかおらんけど、違う世界にはハデスとかアマテラスが出向いてるぞい」

「へぇ〜! ねえねえ、どの世界でもオケアノスはオケアノスって呼ばれてるの?」

「うーむ、たまーに件のゼウスのように格が落ちてて変な名で呼ばれている事もある。そういう世界はアウェーじゃからあまり行かんのじゃ」

「あれ? じゃあこの世界でゼウスをゼウスって言っても通じない?」

「いや、ルシファーとサタンのような感じじゃから通じるよ」


 へぇ〜。なんか結構神さまの世界も奥が深いな。もしかしたらマキマキおじさんが幅をきかせてる世界もあるのだろうか。どうせならそういう世界に行って威光にあやかりたい気もする。

 まあそんな世界に行ってもなんだかんだ俺は人から嫌われ続け、エリミネーションで何もかもを破壊し尽くすのが目に見えているけど。


 エリミネーション……そうだ、この世界で身についたエリミネーションやスーパーフィジカル、そして人間となったアグニャは元の世界に戻ったらどうなるんだ?


「ねえオケアノスおじさん、俺たち元の世界に戻ったらエリミオァァァァションとか使えるのかな」

「なんじゃ、エリミネーションのことか?」

「何度も使ってきた術なのになんで言い間違えてるのよ」

「いや、今エリモガァァァションを正式に言ったらどう考えてもオケアノスおじさんにしか発動しないからさ……」

「にゃるほど〜。えりみみゃーみょんしにゃいよう気を使ってるみゃんね」


 だからエシャーティよ、お前はこういうフラグを立てたら普通に回収していくタイプだから余計な事は言わないでくれよ。頼むぞマジで。今マキマキおじさんを消し飛ばしたらリスポーンするようになるまで待つの大変だからな。頼むぞ、マジで。


「そっか、じゃあエリミネーションって言わないように気をつけなきゃね!」

「あっバカ! お前それ……お前それ!!!!!」

「はっ……い、言っちゃった!」

「ミャァァァァ、マキマキおじちゃんが死ぬミャァァァァ。悲しいニャ~」

「いやワシ一度ダブルエリミネーションで死んだから耐性ついたわい」

「あっ、そういえばそうか。ふぅ、ビクビクした」

「なになに、そんなにワシが死んじゃうの嫌じゃった? このこの〜、そういうとこ好きじゃよっ」

「うわ、どけよ」


 なんかマキマキおじさんがベタベタ引っ付いてきてうざ絡みしてきたから寒気がしたぜ。でもどけよって言ったらションボリしながら離れていって何だかかわいそうである。そんなしょげられると俺もちょっとやるせないじゃないか。


 けどマキマキおじさんは何かを思い出したのか、ショゲていた表情を切り替え俺たちに話しかけてきた。


「そういえばそなたらのエリミネーションって、昔から使えたワケじゃなかったんじゃな」

「この世界に転生してきたらなぜか使えるようになってたんだよ」

「あたしも。原理とか考えずに使ってたけど、どういう理屈であんな事ができるんだろうね」

「それじゃあその力はこの世界特有の物かもしれんから、元の世界に戻ったら使えないハズじゃ」

「そうか、まあそのくらいは仕方ないか。肉体が異様に強くなったのも元に戻るかな?」

「戻るじゃろう」

「ねえねえ、アグニャって元はネコだったんでしょ? この子はどうなるの?」

「戻るじゃろう」

「みゃん〜」


 そうか、アグニャも今のしなやかな肉付きしたナイスバディから元のモフモフ銀々丸に戻ってしまうのか。名残惜しいけどやっぱり俺はネコの時のアグニャが忘れられないからそれでいい。


 それにそろそろ元々の姿のアグニャが恋しくなってきているからな。だからここらで引き返すのがちょうどいい頃合いなんだろう。ぐへへ、またアグニャのうんちブリブリぶち撒けシーン(ネコの姿のだぞ)が見れると思うとついニヤケてしまうぜ……


「ぐへへ……」

「みゃあ、何だか寒気を感じるニャ」



おじ「ところで元の世界に戻れてもエシャーティは生き長らえる手段あるのか? 病気なんだろう?」

エシャーティ「直接の死因は地震で停電したせいで医療器具の電源が切れた事だから、停電する前に何らかの行動を取れば……」

おじ「聞いといてなんだが、お前が二度同じ轍を踏むわけないわな」

アグニャ「というか全然意味がわからにゃかったみゃ」

エシャーティ「ま、とにかく二度は死なないわよ!」


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