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アールヴ、ラヨシュ、イムレの三人は王、王妃、大司教、助祭のいるバルコニーへやって来た。
「父上、母上、参りました。父上が駄目と言われたら大人しく退席すること言うのでラヨシュも一緒に来ました」
ラヨシュ無言の『いいでしょ』と言わんばかりの笑顔。
「アールヴの妃の事なので、居ていいかはアールヴがいいと言うなら」
「いいよ」
アールヴはラヨシュの方を見て微笑む。
王、王妃、アールヴ、ラヨシュ、大司教が円卓の席に着き、アールヴの後ろにイムレ、大司教の後ろにカーロイが立ったまま話を始めた。
「今朝、さくら様にご挨拶とこれからの事についてのお話にお部屋にお伺いした所、ご自分の立場を理解されていないようでしたので、国内でも儀式が知られていない地域があるのか、他国からこちらに移り住んだのかと思いどちらのご出身かお聞きしたのです」
「他の国にも儀式の事を知っている人は多いのでは?」
「むしろ、知らない方が珍しいのでは?」
「その通りです。この国のお妃様の儀式の事は知らない者がいないと言えるほど知られています。ラヨシュ様」
「それで他国の者でなにも知らなかったという事か?」
アールヴは思う。
「まさか、既婚者や婚約者がいる者だったとか?」
これも、過去にないことだ。
「違います」
「では何なのだ」
冷静に聞くが内心イライラする。それも当然、自分の結婚する相手の事なのだ。
「それが、チキュウという世界から来た、と」
「チキュウ?」
王太子としてそれなりの教育を受けてきてきてある程度の事なら感情を表に出さず冷静さを保つ自信のあるアールヴが大声を出してしまうくらいの驚きである。
「それはどこなのだ?」
アールヴは慌てた様子で声を出す。
知らない話しが沢山聞ける、と言う好奇心からラヨシュは瞳をキラキラさせる。
「とにかく落ち着きなさい」
ベーラは二人の息子に冷静になるよう促した。
「失礼しました」
「すみません」
「それで、さくら様は・・・」