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一つのドアの前で二人が立ち止ると、息と衣服を整えてからドアをノックする。
中からドアが開き、二人が中に入る。
部屋は光が沢山入るように窓は大きく、窓の外は広いバルコニーには花々、ベンチやティータイムができるテーブルと椅子が置かれている。
「王様、王妃様。突然失礼します」
バルコニーでお茶をしている二人に一礼し話しかける。
王の名は、ベーラ、銀色の髪、碧い瞳。アールヴとよく似ている。
王妃の名は、イロナ、金色の髪、緑の瞳。穏やかそうな感じだ。
「それは構わんが、どうかしたのか?」
「出来ましたら人払いをお願いいたします」
衣服や息を整え、いつもの様にふるまっているつもりでも、ベーラには何かいつもと違うと感じる雰囲気があり、大司教に言うとおり人払いをすることにし、王は王妃の後ろにいた侍女に目をやり、この場所から出るように目配せすると、侍女は一礼をし部屋の中へと下がっていった。
「王太子様のお妃様になられる方のことで」
「昨日の儀式は成功し無事に終わったと聞いたが違うのか?」
「それは間違いございません」
「?」
「ではどうしたのですか?」
王と王妃は大司教が言わんとすることがわからない。
儀式が成功したのならば何が問題なのか?
かつて、王が王太子時代同じように儀式で今隣にいる王妃を呼び出し結婚したのだ。
王の父親である王もそのまた王も・・・代々そうやってきた。
王族、貴族、平民、どの出身であろうと儀式に選ばれた者に文句を言う者などいないはずなのだ。
「じつは・・・この世界の方ではなかったのです!・・・」
*****
アールヴの部屋。
「兄上、未来の姉上はどの様な方でしたか?」
アールヴの弟で名はラヨシュ、第二王子、14歳、銀色の髪、緑の瞳、顔立ちは母親に似ている。
「さくら、と言う人だった」
「変わった名前ですね。どの辺りの人の人なのでしょう?」
「さぁ?」
ラヨシュと話しているアールヴはごく普通の中のいい兄弟と言う感じだ。
「名前を言われた後すぐに気を失われたのですよ」
イムレがアールヴの言葉足らずの補足をする。
「そうなんだ。では今日会いに行って沢山お話しができますね」
「そうだな」
これからずっと一緒に過ごす相手にどんな人物なのかアールヴも気にはなるのだ。
談笑をしていると部屋のドアがノックされ、一人の人物が入るとアルーヴとラヨシュに一礼。
「王様がお呼びです。すぐに来るように、とのことです」
「わかった」
アールヴの返事を聞くとまた一礼し部屋を出て行った。
「急ぎの用なのか?」
「兄上、一緒に行ってもいいですか?」
「来るのはいいが、父上が駄目と言われたら大人しく部屋から出るんだぞ」
「はい」
「だったら、一緒に行こう」
ラヨシュはアールヴの許可がでると楽しそうにアールヴの後ろを付いていく。その後ろにイムレが続いた。