執務室
イムレはアールヴに事の説明をした。
「・・・と言うことです。そして、侯爵家は領地へと立たれました」
「さくら殿も人がいいな。そんな事無視すればいい事を」
「さくら様らしいではないですか」
「そうだな。ひと段落したばかりだが、さくら殿を元の世界に帰そうと思う」
「そうですか」
アールヴの話しに声のトーン低めに小さく答えるイムレ。
「なぜ皆そんな反応をする?」
「他にどなたが?」
「ラヨシュだ、怒って口をきいてくれなくなった」
「私は怒ってはいません。王と王妃はなんと?」
「特に何も、またそれがラヨシュにとっては気に入らないらしく、父上と母上にも怒っている」
「そうですか。まぁ、個人的にはラヨシュ様に賛同いたします」
「そう意地悪を言うな」
アールヴが苦笑しながらイムレに言う。
「それで、本人にはもう言われたのですか?」
「まだだ。先に言っておこうと思ってな」
「そうですか。殿下、お聞きしてもいいですか?」
「ああ」
「なぜ、そこまでさくら様を元の世界に帰そうとするのですか?帰ってほしきないのならそうすればいいではないですか?」
「この世界の人間ならば、こういう事はわかっている事だから受け入れやすいが、そんな事全く知らないのにいきなり私の妃に、と言われても嫌だろう。この国のように政略結婚や家同士などでの婚姻が普通ではないのだから」
「ですが」
「それに、私の身勝手で呼んでしまったのだ」
「それは、この国では普通の事で仕方ないのでは?」
イムレは、王家にとって大事な儀式であり当然の事を行った結果、偶然異世界の人間が来ただけの事だけにも関わらず、自分の身勝手と言う言い方をするアールヴに違和感があり聞き返した。
「そうなのだが違うのだ。子供の頃王太子というだけで周りの皆が気を遣い窮屈になっていた事があって、そんな頃時々あの儀式の場所に行っては将来自分の妃はどんな相手だろう?とぼんやり思っていた。自分の事を知らない相手だといいな、王太子妃の地位など関係ないと言ってくれる相手がいいと願ったのだ。だから、異世界の人間だったのかもしれないな。
ある意味、私の願いは叶った。まぁ、断られることは想定外だったがな」
「そうでしたか。けれど、以前断られたからといってい今断られるとは限らないと思いますよ」
「かもしれないが、さくら殿から帰りたいとは聞いたことはあるが、残りたいと言われたことはないのだ」
”彼女は、殿下が優しいのはこちらに呼んでしまった罪滅ぼしだと思っているからですよ。あなたに愛されていると気付いてないんですよ”
王太子執務室
さくらがアールヴに呼ばれてやってくる。もちろん、侍女と一緒に。
「呼び出してすまない。伝えたい事と、聞きたい事があって」
「いえ」
「こちらの部屋へ。他の者はここで待て」
アールヴが隣りの部屋の応接室のドアを開ける。
「あの、男性と女性が密室に二人はいけないのではないのですか?」
「そうか、では外に・・・」
「さくら様、それは間違いではないのですが、最近は男女のトラブル防止が目的みたいになっているので絶対にと言う訳ではありませんよ」
「そうなんですか」
「はい。気になるのでしたら他の場所を用意しましょうか?」
「別にここで大丈夫です」
「それではどうぞ」
部屋に二人きりになると思い、部屋に入る前に訪ねるとアールヴは思い出したように場所を変更しようとすると、そのアールヴの話し声とかぶせるように説明すると納得したさくらとアールヴは部屋に入る。
「座ってくれ」
「はい」
ソファに向かいあうように座る。
「少し聞きたい事があったので他の者に席を外してもらった。もし、答えたくなかったり思い出したくなければ無理して答えなくていいから」
「なんですか?」
「森での事だが」
「あっ、あの、あの時泣いちゃってなんかムチャクチャな事いってしまってごめんなさい!もっと早く謝らなきゃって思ってたんですけど、中々機会がなくて」
さくらは立ち上がり頭を下げ謝る。
「クスッ、さくら殿は謝らなくていい事で謝るのだな」
「えっ?」
「あの時庭でもそうだったと思ってな。取りあえず座ってくれ」
「はい」
さくらが突然謝ったのを見たアールヴは、西の庭で結婚をする事を断られた事を思い出し、アールヴの表情が緩んだ。
「あの森の池所で私が見つける前に誰かに会わなかったか?」
「あー、会いました」
「もし、よければその時の事を教えてくれないか?」
「かまいませんけど」




