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さくらの困った表情に気が付き、助祭のカーロイが大司教の話を止めさくらに話かける。
「さくら様。どうかされましたか?」
「はい。あの、先ほどから話されている事はここでは普通の事なのでしょうか?」
「ここ?普通??」
大司教と助祭は顔を見合せた後、さくらの方に向きな直し大司教が少し引き吊ったような顔をしたが、すぐに笑顔に戻し訪ねる。
「あの、失礼ですが、さくら様はどちらのご出身でしょうか?」
さくらは、ここまで来ると現実に違う世界にきたらしいことを自分の中で認識し始めていた。
それに、今騒いでも何の情報も手に入らないと思い、内心パニックなのだが冷静なフリをし対応することに決める。
ここで放りだされたら露頭に迷うどころじゃすまない。
「地球です」
「・・・?」
「・・・?」
大司教と助祭はまた顔を見合わせた後さくらをみた。
「私は、この国の、隣国なども含めて土地の名前などは知っているのですがその”チキュウ”という場所は聞いたことがありません。どのあたりなのでしょうか?」
大司祭が困惑しながら聞いた。
「たぶんなのですが、この世界とは違う世界だと思います。地球、日本と言われてもご存じないのでしょう?わたしもこんな結婚相手の決め方なんて聞いたことがありませんから」
「!!!!!!!!!」
「!!!!!!!!!」
意外なほど冷静に話すさくらとは正反対の二人は今にも過呼吸でも起こしそうな勢いで驚いいた。
人は本当に驚くと声も出ず目は大きく開き口を開けるんだなぁ、と思いながらさくらは二人を見つめる。
次の瞬間、突然二人は挨拶も忘れ勢いよく部屋を出て行ってしまった。
「それは驚くよね」
ソファに座り小さくつぶやくさくら。
人目も憚らず廊下を走る大司教と助祭。
普段、王宮の廊下で走るなどするものなどいない。それが、大司祭ともあろう者が走っているのだ。
すれ違う者達はその勢いに押され道をあけ、その後ろ姿を唖然としながら見送る。
「今の、大司教様だよな・・・」
「走っておられたぞ」
「何かあったのか?」
そんな言葉がすれ違った人達から驚きとともにつぶやかれた。