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迷霧の森 3

アールヴは森の中を探す。


”このあたりだと言っていたが、見当たらないな。手首の紐を解いた、と言っていたから移動したか?”


「解かずそのまま方が探しやすかったのかもしれないな」


森に入ってすぐの所の辺りを探しても見つからないので、さくらが移動したのではないか、と思いもう少し奥深くまで足を延ばす事にした。


「それにしても、見にくいしやたらとむすな」


周りは霧で視界が悪く、その霧のせいでやたらと湿度が高くなっており、普段より体力を奪っていく。


”大体なんで移動したんだ?体力もないだろうに・・・まさか、自分でこの森を出ようとしたのか!?そんな無謀な事を・・・彼女ならありえるな”


森は広く、人間が通るような道もない。さくらの足跡でもないかと探すが見つけられない。

一時間は経ったので皆王宮に戻った。そうすれば、他の人達もアールヴが森に入ったことは伝わり、迷うことはないとわかっていても騒ぎになる事は予想できる。

迷わない=無事に出て来られる。ではないのだ。



アールヴは自分がどのくらい歩いたのかわからないくらい歩いた。服と靴は土で汚れ、体は汗でベタベタになる。体力も減り疲れが顔に現れ肩え息をする。


”どこだ?いったいどこにいるんだ!?”


「このまま日が暮れると身動きが取れなくなる。こっちの方じゃないのか?」


”早く探さないとな”


辺りが暗くなりはじめたため、視界も見えにくくなり、森を登ったり降りたりしていたため、体力も減り足取りが重くなる。




アールヴが歩いていると、突然霧が晴れ、開けた場所にたどり着いた。

池があり、木々がないため月や星の光を遮ることなくその光で周辺が明るい。池の水はその光を反射して輝いているように見える。


”綺麗だ。この森にこんな場所があったのか”


その景色に驚くアールヴ。


「よく来られたね」


声がした方を振り向くと、とても柔らかな声、髪は長く、銀色の瞳と髪、どことなくアールヴに似た顔立ちの人がアールヴの方に歩いて来る。


「あの・・・」


こんな所に人が?


「初めて会ったら、名乗らないといけないね。初めまして、アールヴだ。君たちの馴染みのある呼び方で言うと、守(・)り(・)人(・)かな」

「守り人って、あの!?」

「そう、あの守り人だよ」


アールヴの驚いた表情に対して守り人は優しい微笑みで答える。


”本当にまだ生きていたのか”


「ここに住んでいるのですか?」

「そうだよ。静かでいい場所だろう」

「そうですね」

「人と話すのは何時ぶりだろう」

「前にも誰かきたのですか?」

「来たよ。反乱がおきた時の国王が」


”それはもしかして”


アールヴは、さくらと演劇を観に行った時の話しではないかと頭をよぎった。


「伴侶を選ぶ儀式の」

「そうだよ、ひとつの方法としてボクが教えたんだ」

「ひとつの方法として?どういう事ですか?」

「その前の様に自分の気に入った相手を選んでも構わないって事だよ。ただ、その後その方法ばかりになってしまったみたいだけどね」


”相手選びはどんな方法でもよかった、と言う事なのか!”


「だけど、まさかボクも他の世界からやってくるとは思わなかった、さすがに驚いたよ」

「あの、守り人様」

「元の世界に帰したいのかい?」


守り人はアールヴの聞きたい事を知っていたような口ぶりだ。


「はい」

「もう気づいてるんだろう。過去にない事だけど、きみはもう知っているはずだよ」

「・・・」

「返したくないなら、そうすればいい。どこを探しても元の世界に帰す方法なんて書かれてないのだから」

「それは・・・」


”できることなら、そうしたい気持ちはある・・・”


「そうそう、きみが来なければここにおいてもいいと思っていたんだけどね。ココに入って来られた人間なんて面白いし。きみの探し人は」

「えっ」


守り人が目線を池の近くに向けると、アールヴが守り人と同じ方を見る。


「あっ!」


池の近くに横たわる人影に気が付くと走り出し駆けよる。

近くで顔を見ると、意識のないさくら。

服は所々敗れ、靴は片方は近くに落ちておりもう片方は見当たらない、手や足、顔は土が付き小さな傷が沢山ついている。

そして、一番目立つのは、頬にグリメルダにつけられた傷。


「こんなに・・・さくら殿!さくら殿!」


さくらを抱きかかえ、呼びかけ続ける。


「・・・」


・・・ア、ル?


声が聞こえてきて意識を取り戻したさくらがうっすらと目を開けると、目の前にはいつもの完璧な姿ではなく一生懸命に自分の名前を呼ぶアールヴの姿。


「大丈夫か!?私の事がわかるか?」


さくらの目が少し開いたのに気付いたアールヴは泣きそうなほど嬉しそうな笑顔になった。


「・・・」


さくらは、頭がぼんやりして何がどうなっっているのかさえも考えられない。


「さくら殿?連れ去られて、この森に連れてこられたのだ」

「あっ・・・!!!!!!」


アールヴがそう言うと、突然さくらの頭の中に連れ去られてからの事がはっきりと走馬灯のように思いだし、ぼんやりとした意識がはっきりとした。


「なんで!なんでこんな目に遭うの!?どうして!わたしどんな悪い事したの?なんでこんな目に遭わなきゃいけないの!!王太子妃になりたいからって、なるためには何しても許されるの!?それとも、私がこの世界の人間じゃないから気に入らないの!ねえ!なんで!どうして!!」


さくらは両手でアールヴの服を握り締め大粒の涙を流しながら、今まで抑え込んでいた感情が一気に爆発した。


「・・・さくら殿は全く悪くない・・・本当にすまない・・・こんな事に巻き込んでしまって、すまなかった・・・」


そんな初めて見るさくらにアールヴは一瞬驚いたが、感情ををぶつけてくるさくらを抱きしめ、謝る事しかできなかった。

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