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演劇

「イムレお茶会の日が決まった。どこに連れ出せばいいと思う?」

「そうですね、迷子になってばったり婦人方と出会ってしまっては困りますからね。・・・いい所がありますよ!」



定期的に行われている王妃主催のお茶会が開かれる日。


さくらとアールヴは馬車に乗り街の方へ出かける。

今日は貴族としてのお出かけなのでそれなりの服装と馬車での出発だ。


「王太子様、今日はありがとうございます」

「いや、王宮内ばかりだと退屈だと思ってな」

「ところで、今日はどんな演劇なんですか?」

「まだ言ってなかったな。簡単に言うと昔話だ、守り人の話しとこの国が危機に陥った時の話しだ。イムレが薦めてくれたのだ」

「イ、イムレ様が・・・楽しみです」


イムレ様(あの人)絶対わざとだわ!今頃ご機嫌に笑ってる姿が見える気がする!!むかつく!!!


さくらは書庫から数日かけて本を見つけ出し、三分の一くらいを読み終えた所でこの演劇の内容、久しぶりの演劇は嬉しいのだがこのタイミング、嬉しさ半分イラつき半分な気持ちになってしまった。


「さくら殿、今日はいつものイヤリングではないのだな」


さくらの耳にアールヴと出かけた時に買ったイヤリングではなく最初に王室が用意したアクセサリーを身に着けている事に気付き聞いてみた。


「えぇ、今日のお出かけにはカジュアルすぎると言われまして。馬子にも衣装って感じですよね」

「馬子にも衣装?」

「えっと、着せられてると言うか分不相応ですよね」


さくらは用意されている中でも小さめの物を選んだのだがそれでもさくらにとってはさわった事もないくらい大きな宝石で付けていて違和感があるくらいなのだ。


「そんなことはない。似合っている」


アールヴは顔を赤らめながら慌てて否定する。


「ありがとうございます」



劇場到着。

劇場正面で馬車が止まると外から扉が開かれ最初にアールヴが降り、アールヴの手をかりてさくらが降りる。

階段を上り正面扉から劇場に入ると玄関ホール、中央階段、吹き抜けの天井から下がるシャンデリア。


すごい!これで中劇場なの!?

こんなに素敵な場所に連れてきてもらってイムレ様にも感謝かも。


王都には、小、中、大劇場がある。

小劇場は、市民が気軽に観ることができ大衆的な感じで貴族が行く事はあまりない。

中劇場は、市民、貴族が観ることができドレスコードが必要。

大劇場は、貴族専用、又は貴族同伴であれば観ることができドレスコードが必要。

大・中劇場にはロイヤルボックス、ボックス席があり、小劇場は二階席があるのみ。


さくらは、入口ホールだけで初めて遊園地にでも連れて来られ喜んではしゃぐ子供の気持ちみたいにとてもテンションが上がってしまう。

だがそこは一応大人、平常心を保ちながら、アールヴのエスコートで中央階段を上りボックス席へと向かう。


「素敵ですね」

「大劇場ができる前はここが王都で一番大きな劇場だったんだよ」

「そうなんですか。それじゃ、ここには何回も来てるんですね」

「何度も来ているが、私が生まれる前から中劇場だったよ。本当はロイヤルボックス(正面)からの方が観やすいのだがすまない」

「とんでもないです!ここで十分すぎるくらいですよ」

「それならよかった」


アールヴがロイヤルボックスを選ばなかったのはさくらが目立たないためだ、そんなアールヴの気遣いをさくらも理解していてありがたく思っている。


時間になりホールの証明が落とされ舞台の幕が開く。


第一部

守り人と女性が出会い、恋に落ち、結婚、守り人は王となる。人々は幸せに暮らす。


教会で聞いた話しと同じ内容だった。


一部が終わると、劇場のスタッフが席まで食事や飲み物の注文を聞きに来て、運んでもらえる。

さくらとアールヴは紅茶とクッキーを注文。


「このお話は有名なんですね。教会のステンドグラスにもありましたし」

「教会にもあったな。この話しは国で知らない者はいない」

「それにしても守り人の名前には驚きました。まさか王太子様と同じなんて」

「私の名は初代王であり守り人から付けられたからな、他にも歴代王に中にも同じ名前はいる」


第二部

時は流れ、国は栄え平和な日が続いていた。

その時代の王には、王子と王女の一男一女の子供に恵まれ幸せな日々。

王子は年頃になると貴族の子女と結婚し、王女は王の弟である大公の息子と結婚しそれぞれ子宝にも恵まれ幸せに暮らしていた。


やがて、王が亡くなり王子は王となる。

その頃から、王女の嫁ぎ先の舅である先王の弟が不満を持ち始めていた。

現王の息子よりも自分の孫の方が王族の血を濃く引いている。王妃は王家の血筋などない貴族の娘。ましてや、義理の娘は王の()()の妹。

双子と言うことは、もしかしたら王より先に生まれていたのかもしれない。そうであれば、王位は義理の娘、そして自分の孫ではないのか。

大公は、その考えを思い込みになりそう信じるようになる。

そして、惨劇は起った。


王と王妃が殺されたのだ。そして、王女を無理やり王に据え大公自身が国を動かし実質大公が王となった。王女一家は大公に逆らい協力しなかったため軟禁状態。


大公が実質王として君臨すると、国は干ばつが起こり、晴れが続き水不足、雨が続き建物などが流されることも・・・そんな事が短期間に起り、大公は精神的に追い詰められていき、側近さえあまり近寄らなくなり追い詰められていく。


そんなある日、一人の青年が王の椅子に座る大公の前に現れ「満足したかい?」そう尋ねると、大公は椅子から崩れ落ちるように床に座り込み青年を見上げる。その大公の顔には悲しみと後悔、全てにおいての懺悔の涙。

その顔を見た青年は「そう」と小さく一言つぶやく。その瞬間、大公は床に倒れ込み息絶えた。


その後、殺された王の息子が王位を継ぐと、元の豊かな大地へと戻って行った。

王は二度とこのような事が起きぬよう願う。年頃になった王は一向に結婚をしようとはしない。理由は、誰と結婚しても不満を持つ者が現れるのではないか、と言う恐怖。


ある時、あの時の青年が現れ「王の配偶者となる者を今夜決めることにしよう」と告げる。

そして、綺麗な満月の夜王妃が選ばれた。

読んでいいただきありがとうございます。

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