イムレとさくら
「イムレ様、わたしからもお聞きしても?」
「どうぞ」
「この世界に魔法はないのに結婚相手を呼び出すことができるのはなぜですか?それと、なぜ次期国王だけそんなことをするのですか?」
さくらの質問にイムレがゲームの手を止めさくらを見る。
ゲーム盤を見ていたさくらは、イムレの手が止まり自分に視線が向いている事を感じ手を止めイムレをにた。
「今までどなたにもお聞きになられなかったのですか?」
イムレは営業スマイルでさくらに聞き返す。
「聞いたことはあるのですが、魔法ではなく力によるもの、ということでそれがよくわからなくて」
「そうですか・・・それは、言葉そのままです。守り人の血がそれをなすことができる、その理由はわかりません。それに、次期国王以外そのような決め事がなく儀式を行ったことがないのですよ」
「決め事・・・ですか」
この国の常識って事か。
さくらとイムレはゲームの続きを始める。
「さくら様は私が嫌いでしょう」
突然、半分冗談交じりに笑顔で聞く。
「えっ・・・別に嫌いではないですよ。嫌いになるほど関わりを持ってませんし。ただ、苦手なタイプかも」
なに!いきなり!!普通そんな事聞く!?
イムレの言葉に一瞬驚き言葉が詰まってしまったが、すぐに平常心で答える。
「いきなりすみません。やはり面白い方ですね。私はさくら様の事正直で嫌いではありませんよ」
「あ、ありがとうございます」
「苦手なタイプ、と言うのもわかります。そう思う者は少なくないですから」
イムレは、冷静沈着で冷徹な所があると見られているため、近寄りがたく思う者もいるため苦手と思う人間も少なくないのだ。
さくらもイムレに対して近寄りがたい雰囲気があるため苦手だと思っている。
「さくら様の疑問の答えになるかも知れない所にお連れしましょう。ゲームが終わったら、ですが」
「あっ、はい。ありがとうございます」
「参りました」
「ありがとうございました」
そして、ゲームが終わり、勝負はイムレの勝ち。
「イムレ様強いですね」
「いえいえ、さくら様もお強い。久々に本気になってしまいました」
話しながらじゃなったらもっと早く負けてたかも。
さくらはそう思いながら、負けたにも関わらず本気で対戦できて楽しいと思えて少しだけ顔に笑みが浮かぶ。
それに気づいたイムレが少し不思議そうにさくらを見る。
「何が面白いのですか?」
「えっ、あ、負けたのは悔しいですけど楽しかったので」
「・・・そうですか。それはよかったです」
「えぇ」
「それでは、疑問の答えになるかも知れない所、に行きましょうか」
イムレがゲームを教会に戻しに行き、二人は宮殿の中の目的の場所へと向かう。
ひとつの部屋にたどり着くと、その扉を開き中へと入る。
部屋の中は吹き抜けになっており、窓から光が差し込むと部屋全体が明るくなるように作られている。
そして、壁は上の方まで本が並べられている。
「すごい」
さくらが思わず小さい声がもれる。
「書庫です。ここは宮殿に出入りできる者であれば誰でも入れます。ただし、ここに住む王族以外書庫からの本の持ち出しは禁止されています。ここなら、国の歴史などの本もありますし少しはさくら様疑問も解けるかと」
「ありがとうございます。あの、その歴史書はどのあたりにあるのですか?」
「それは、ご自分でお探しください」
「えっ・・・」
「書庫を担当したことがないので。それに、私これでも暇ではないので。それでは、失礼します」
「あっ・・・」
笑っていない瞳で満面の営業スマイルで去って行くイムレ。
教えてもよかったが、殿下の王位まで危うくしている者にそうそう優しくはなれないからな。
そんな事を思いながら、仕事へと戻るイムレ。
前言撤回!苦手じゃなくキライ!!
・・・この広い本の中から探し出すのか。
さくらは気が遠くなりそうなくらいの本を眺めながら探しはじめた。
読んでいただきありがとうございます。