王都子爵邸
王都子爵邸に馬車が到着。
外から馬車の扉が開かれ、アールヴが降りた所で振り返り中に居るさくらの向かって手を差し伸べる。
「えっと、わたしはここで待ってますからっ」
「馬車の中で待たせるわけにはいかない」
馬車の中で待機してるつもりだったさくらはあわてて断るが、アールヴに言われここで揉めるのもよくないと思い、差し出された手の上に自分の手をのせて馬車を降りた。
こういう事をさも当然のごとくできる所はやっぱりすごいな・・・こっちなんてムチャクチャ恥ずかしいよ。
「アールヴよく来たな」
「おじい様、お久しぶりです」
「久しぶりね。背がずいぶんと伸びたわね」
「おばあ様、お久しぶりです。5年ぶりですから伸びましたよ」
白髪に緑の瞳の紳士に、少しの白髪交じりの金髪に金色の瞳の淑女が外に出てきて嬉しそうに話しをする。
「アールヴ後ろの方は?」
「さくら殿です。この後用事があるので先用事につき合ってもらったのです。連絡せず突然連れてきてしまいすみません」
「さくらと申します。突然お伺い致しまして申し訳ありません」
さくらはカーティシーをする。
アールヴは自分と東の庭園で謝られた時との違いに驚き、イロナの両親は微笑みながら頷く。
「こんな可愛いお客様ならいつでも歓迎よ。外ではなんだから中へ入りましょう」
客間に通されると、馬車から降ろされた荷物が2個運び込まれており、アールヴがイロナからの手紙を祖父に渡す。
受け取るとすぐに読み、読み終わると婦人に見せる。
「荷物をそれぞれ客室に持っていってくれ」
「はい」
使用人は荷物を持ち上げると部屋を出て行った。
さくらとアールヴは、それぞれ荷物を運んだ部屋へ。
アールヴと祖父。
「イロナからの手紙に、アールヴにさくらさんを街の案内を、と書かれておったぞ」
「母上が誘ったらしいのですが・・・」
そして、馬車の中での事を少々呆れたように話した。
「あの、それでこれはどういうことですか?」
困惑するアールヴ。
荷物の中身は、アールヴの洋服。
そして、チュニック、ズボン、ショートブーツ、チュニックの上からベルト、という格好に着替えさせられる。
これは、街に行っても溶け込める格好だ。
「この格好のは方が目立たないからいいじゃろう」
「そうですが・・・もう知っているとは思いますが、さくら殿は元の世界に帰す予定でいます。・・・それなのに母上は私とさくら殿をくっつけようとしている様にしか思えない事をする」
「それが気に入らないと?」
「当たり前です」
「イロナの考えはわからんが、さくらさんとは結婚しないということじゃろう。それは、王家の客人ではなくアールヴ個人の客人と言うことじゃ」