お出かけ
王、王妃、アールヴ、ラヨシュ、家族4人の夕食時。
「アールヴ、最近休んでないようだから明日は休みなさい」
「はい」
「あら、明日休みなの?お父様がこちらに来ているのだけれど届け物をお願いできない?久しぶりに孫の顔も見せてあげたいし」
「いいですよ。ラヨシュも一緒に行くか?」
「僕も行きたいけど、学校だよ」
宮殿前、腰まである刺繍などないシンプルなジャケット、ズボン、ブーツ姿のアールヴが来ると、用意された馬車に乗り込む。
扉が閉められ腰を下ろし、馬車がイロナの実家である王都子邸に走りだす。
「お、王太子様!」
馬車の中で突然大声で呼ばれ、声のした方を見る。
「さくら殿!なぜここに!?」
「なぜって」
「母上か・・・」
さくらが説明しようとすると、声を重ねるようにアールヴが気づいたようにつぶやき顔を手で覆い下をむいた。
昨日の夜。
さくらの部屋にイロナが訪ねて来て、
「さくらさん突然ごめんなさいね。明日なのだけれど、もし予定がなければ街に出かけるのはどうかしら?
この間、私が王都の街の話をしていた時興味ありそうだったから」
と、いうことがあった。
そう説明をする。
「すまない。何も聞いてなくて」
「そういえば、イロナ様と出掛けようとは言われ無かったような・・・」
「なるほどな」
王太子様の反応からして、他の用事か何かでここにいるんだよね。
「わたしここで降りて帰ります」
「降りてって、歩いて王宮まで帰るのか?」
「はい。王太子様は何か用事があるのでしょう?」
「・・・用事が終わってからでよければ、街を案内しよう」
アールヴは自分の服装を見て、ジャケットを脱げば大丈夫だろうと思い案内を提案してみる。
「ご迷惑でなければお願いします」
無下に断るのも失礼だし、何より街に行ってみたいし。
「ところで、どこに行くのですか?」
「母上の実家の王都の邸宅だ」
「そんな所にわたしが付いていってもいいのですか!?」
「かまわない。届け物を頼まれただけだから」
アールヴは心の中で、
母上の目的はさくら殿と街に出かける事だからな。
と思う。
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