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だけど、理解は出来るけど結婚なんて出来るわけないじゃない!
ここで流されたら駄目でしょ!!
「ごめんなさい。結婚辞退させてください!」
突然、さくらは立ち上がりアールヴに頭を下げる。
「じ、たい!?」
驚きのあまり固まるアールヴ。
「あ、あの、あなたに問題があるとかではなく、むしろカッコイイし礼儀もきちんとしてるし性格も悪くないと思うんです。わたしには勿体無いくらい全てが揃ってるんです。でも、ごめんなさい」
「・・・理由を聞いても?」
「わたしの世界では、恋愛結婚が普通で、お見合いでも本人が気に入らなければ断れる。そういうのが普通なんです。だから今まで会った事のない、よく知らない人相手と結婚するなんて考えた事もて、無理なんです」
「・・・そうか」
そう言うと、アールヴは立ち上がる。
「部屋までお送ろう」
二人は無言のまま、アールヴはさくらを部屋まで送り届ける。
*****
アールヴの部屋。
部屋にはイムレとラヨシュがいた。
「いたのか」
「突然出ていったので気になってしまって」
ラヨシュはさくらとアールヴの話の内容を知りたいといった感じだ。
「悪かった。父上と母上は怒っていたか?」
「怒ってなかったです。むしろ母上は呑気にお茶飲んでたかな」
「母上らしいな」
「どうぞ」
イムレがアールヴに紅茶を入れ、テーブルに置く。
「ありがとう」
「昼食には遅い時間ですがどうされますか?」
「いらない。夕食は何か軽いものでも持ってきてくれ」
「はい」
イムレは部屋を出ていった。
「夕食は一人で食べるのですか」
「あぁ、少し疲れたからな」
食事は基本的に家族で食べているため少し残念そうなヨラシュ。
「さくら殿の世界ではこういう結婚はないそうで、こちらとは色々と違う世界のようだな」
「そうなのですか」
話をしているとイムレがサンドイッチと焼き菓子を持ってくるとテーブルに置き部屋を出る。
「兄上そろそろ僕も失礼します」
ヨラシュもイムレのすぐ後に部屋をでた。
「はぁ・・・」
”どうしたものか・・・”
アールヴは小さく息を吐くと、倒れ込むようにソファに横になり目を閉じた。