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002「勇者の決意」

 さっき終わりだと言ったが、あれは嘘だ。

 物語はまだ始まったばかり。

 この物語は、魔王を倒したその後が舞台である。


「はぁ~、そろそろパーティーも飽きたな」


 城の一室でごちる勇者。魔王を倒した後に待っていたのは、平和を祝う祝典の数々だった。


 当事者の勇者は、各国が開く祝典に引っ張りだこ。もうかれこれ、半年以上はパーティー三昧のパーティーピーポーなのだ。


「今日さえ乗り切れば、とりあえず招待されている祝典は終わりだ。その後は……どうしよう? 忙しい日々で忘れていたが、この後の人生をどうするか。まったく考えていなかったな」


 幸い、各国からの贈り物(金品や宝石)で生活に困る事はない。 旅の途中で手に入れた宝の数々も、信頼と安心のニヤニヤ金庫に預けている。


 そんな勇者は、言うなれば億万長者でもあった。


「ただ、やる事がない。夢も希望もない。うーん、パフパフ屋めぐりでもする? そしたら、パフパフ屋レビュアーにでもなるか? いや、とっておきのパフパフ屋は、秘密にしておきたいから辞めた。やっぱり、パフパフは暗い路地裏でこそ萌えるよね」

「さっきからうるさいっ! なんなのパフパフパフパフ! 胸がなくて悪かったわね!」


 隣で黙って聞いていた女賢者の"リッカ"。長く青い髪を揺らしながら、我慢ならないと勇者をひっぱたき、黒い瞳で怒鳴り付けた。


「あ、居たの? てか、良いじゃないか別に。そうだ、リッカはこれからどうするか決めたのか?」

「私は……故郷に魔法学校を作ろうと思ってる。いや、これ何回も言ってるよね?」


「それは中々立派な考えだ。後進の育成。うん、偉いと思うぞ!」

「なんかムカつくんですけど……」


「でだ、俺は嫁が欲しい」

「な、なんなの急にっ!?」


 もしかして? と、思うリッカ。散々一緒に旅をしてきたのだ。そろそろ、自分の気持ちに気づいてくれたのかと、期待した目で勇者を見つめる。


「だから嫁探しに行くと決めた!」

「はぁ……?」


 リッカの気持ちに、勇者は全然気づいていない。

 大体の主人公とは、鈍感なものである。


「魔王討伐の旅をしながら、色んな国を回っただろ?」

「ええ、大変だったけど、それだけ素晴らしい経験も得られたわね」


「リッカが魔物と間違えて豚王子を焼いたのは笑った。こんがり焼けてたよね」

「そ、それはもう良いじゃない! 過ぎた事よ!」


「そんな中で、素敵な女の子達とも出会った!」

「まさかあんた……」


 勇者の考えている事がなんとなく分かり、リッカの胸中は複雑だった。そのため、履いていたヒールを脱ぎ、尖った所で勇者の頭を叩いてしまったのは、許してやって欲しい。


「ぃ、たぁっっ! ちょ、刺さってるよこれ!?」

「あ、ごめーん! つい♪」


「ついじゃねえわっ! あ、抜いたら血がドピュドピュだよっっ」

「うるさいわね! このぐらいなによ! 酷い時は魔物に半分ぐらい食べられてたじゃない!」


「そうだったね。あの時は何故助かったのか未だに疑問だわ……」

「ほら、回復して上げるからじっとしてて」


 リッカが回復呪文を唱えると、勇者の頭から吹き出ていた血しぶきは数秒で治まり、傷口も綺麗に塞がる。


「さすが賢者。相変わらずでたらめな回復魔法だな。それ使えば、処女膜を再形成出来るのか?」

「はっ? で、出来るけど……元々破れてないわよ!」


「すげぇーっ! じゃあ、ずっと処女のまんまじゃん! お前すげぇよ! 永遠の処女リッカ様として後世に残るぜきっと!」

「ふんっ、まあね!」


(全然褒めてねえけどな。むしろ貶してんだけど?)


「それより、まさかあんた……出会った女の子達に求婚しに行くとか言わないわよね?」

「凄いなリッカ! どうして分かったの!?」


「物語の流れ的に」

「そう言うの、言わない方が良いよ」


「ごめん」

「うん……でさぁ! 明日から嫁探しの旅に出る!」


「へ、へ~! じゃあ、私も着いてこうかな?」

「ええぇぇ……」


「露骨っ! もっと誤魔化しなさいよ……」

「なんで着いてくんだよ……リッカがいたら女の子に変な風に思われんじゃんか」


(それが狙いなのよ。あんたの思惑通りにはさせないんだから!)


「女目線で品定めして上げるのよ! ほら、女の事は女にしか分からないでしょ!」

「ま、まあ、そうかもしれんが……」


(こいつ、女って言うほどの経験してんのか? 確か、恋愛経験ゼ~ロ~だろ……)


 という訳で、勇者は嫁探しの旅へ出る事に。

 女賢者のリッカというコブを連れて……。


 最初の目的地は、リンシャ村という長閑な村。


 その村は、勇者が最初に立ち寄った所であり、トロールに拐われた村長の娘を、颯爽と助けた勇者的活動の始まりでもあった。


 そしてその娘――ボンキュッボン! の天然娘である。

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