表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

34/40

反撃

「なっ……」


 激しい戦いを制して肩で息をしていたハリエットは、すぐ傍にリデリアと、そしてアレスがいるのに気が付いて目を見開いた。激戦を息をするのも忘れて見ていたリデリアははっとなる。


「ベルニエくんにアレス・ガルシア……。どうしてここに……」


 アレスがリデリアを庇うように前に立った。その背中を見つつ、リデリアは冷めた声をハリエットに投げかける。


「魔王って呼ばないんですね。まあ、当然でしょうけど」


 ハリエットが、ぎくりとしたように身じろぎした。「まさか、本当にあいつらの仲間に……?」と呟く声が聞こえてくる。リデリアは構わずに、ハリエットに険しい視線を送った。


「あなたは知ってますもんね。アレスさんが実は『魔王』って呼ばれるような恐ろしい犯罪者なんかじゃない事を。本当は誰が一番悪いのかを」


 ハリエットの顔が真っ青になった。杖を持つ分厚い手が震えている。


「あなたが罪を隠しおおせるのは今日までですよ! 諦めなさい。 あなたはもう終わりです!」


「黙りなさい! 何をしに来たのか知らないけど、私が今ここで魔王もろとも君を消してやるわ!」


 ハリエットは杖を高く掲げた。アレスがリデリアに「下がって!」と警戒の言葉を投げかける。


「ふふっ。足手まといを抱えたまま戦う気?」


 ハリエットは嘲笑を飛ばした。


「だったら魔王といえども、簡単に倒せるでしょうね!」

「リデリア殿を侮辱するな! 彼女はっ……」


 アレスの怒号は途中で遮られた。突然足元から現れた黒く光る鎖が、彼の体をがんじがらめにして地面に転がしたのだ。


「はんっ! 馬鹿め、油断したな!」


 建物の中から飛び出してきたのは、副団長のヴァルターだった。杖を構えながら目をギラギラさせ、残忍な喜びで顔を歪めている。


「アレスさん!」

「くっ……」


 アレスは身悶えしながら、何とか鎖を解こうと必死になった。それを見ながら、ヴァルターは「無駄な事を!」と嘲る。


「それはな、うちのギルドの宝物庫に保管されていた『魔封じの鎖』だ! 相手の魔法を封じるだけでなく、体をどんどん締め付ける品だ! 拷問に使われた事もある道具だぞ! さぞや苦しいだろうな!」


「これは禁制品だぞ!」


アレスは身を捩らせながら苦悶の表情を浮かべている。「知った事か!」とヴァルターは笑い飛ばした。


「よくやりましたね」


 ハリエットが珍しくヴァルターを褒めた。舌なめずりをしながら、彼女は杖を再び構え直す。


「魔法を封じられた魔王など、私の敵じゃない。さあ、地獄へ送ってあげるわ!」

「だ、駄目!」


 リデリアはとっさにアレスの前に飛び出した。アレスの鎖を解いている暇はない。今戦えるのは自分だけだ。何もしなければ、アレスも自分も二人に殺されてしまう。


「これは大した意気込みだ、『お茶汲み聖女』よ」

「あら本当」


 二人とも小馬鹿にしたようにリデリアを野次った。リデリアが懐から杖を出すと、ますますその顔に嘲りが広がっていく。


「大変、これはやられてしまうかもしれないわぁ!」

「まったくです。ここは一緒にやりますかな」


 二人は茶化しながら同時に杖を振り上げた。その先から光線がほとばしる直前、リデリアは思い切り叫ぶ。


「盾よ!」


 リデリアの杖先から巨大な白い波が噴出する。その波は一瞬にして二人が放った術を飲み込むと、それをそっくりそのまま術者に返した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] リデリアちゃんッッッッ(感涙 エリクサーでのブーストでついに盾顕現!! ナイスザマァ!!
[一言] (エリクサーの力もあるけど)リデリア、覚醒!!!! これ以上ないほどの反撃が決まった……!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ