最強の三人
それにしても、二人は強い。こんな事なら小細工なんかしなくても、二人で王宮に乗り込んで行ったって無傷で帰って来られそうだ。
「あれ、リデリアちゃん。ひょっとして、俺たちが凄すぎてびっくりしちゃった?」
リデリアの心中を敏感に察したラッドヤードがおどけた声を出す。リデリアは苦笑いした。
「え、ええ。まあ……」
ヴァルターとの戦闘においてラッドヤードは完全に遊んでいたし、アレスとナーシルの戦いなど、一瞬で勝負がついてしまった。
どうやらナーシルが以前アレスに重傷を負わせる事ができたのは、ひとえにリデリアの万能薬の効力によるものだったと見て間違いなさそうだ。
なるほど、これは急に力を欲しがられたり、恐ろしく思った末に殺されかかったりしてもおかしくはないと思ってしまう。リデリアは、ナーシルが自分を殺しに来たのは、リデリアの覚醒した力をハリエットが恐れたからだろうと考えていた。
何だか、急に自分が要注意人物になってしまったような気分だ。つい先日まで取るに足らない『お茶汲み聖女』だったリデリアは、その感覚に戸惑った。
そして、同時にラッドヤードやアレスにも今まで以上に親近感を覚えた。二人とも、理由こそ違えどリデリアと同じはみ出し者だ。不安がっていてばかりいても仕方がない。とにかく今は皆と一緒にやれるべき事をするだけだとリデリアは意気込む。
「二人とも、頑張りましょうね」
「おっ、気合十分って感じ?」
ラッドヤードは楽しそうだ。
「よーし、それじゃあ、魔王アレス様とその右腕ラッドヤードくん、それから魔王軍の専属聖女リデリアちゃんの最強トリオ、始動しますか!」
ラッドヤードがふざけつつも気合いを入れる。アレスは「もう少し気の利いた口上はないのか」と呆れ、リデリアは「はい!」と力強く頷いた。
今のリデリアにはただ、この二人の隣に並び立てる仲間だと思ってもらえている事が、何よりも嬉しく感じられたのだ。