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お茶汲み聖女? いいえ、魔王軍の専属聖女です!

「……アレスさん、これからどうするんですか?」


 アレスが無実であるという事を本人の口から聞かされたリデリアは、今度はアレスの今後について関心が出てきた。


「まさかまた、直談判しようなんて考えてませんよね?」


「幸いにも、私もそこまで愚かじゃない」


 アレスは重苦しく首を横に振った。


「今度はからめ手でも何でも使ってみせるさ。とにかく、濡れ衣を着せられたままなんて御免だ。と言っても、いい案は何もないんだが……」


「それはだいじょーぶ! この天下の怪盗ラッドヤードくんに秘策がありまーす!」


 ラッドヤードは悪戯っ子のような顔になって、「真面目なアレスが、汚い手でも平気で使ってくる奴らに勝てるとは思ってないからねー」と言った。


「って言ってもその作戦は、リデリアちゃんの協力がないと成立しないんだけど。……どう? やってくれるー?」


「もちろんです」


 恩人の窮地を救うためならば、とリデリアは二つ返事で頷いた。ラッドヤードは「いい答え!」と満足そうだ。


「じゃあせっかくだから、リデリアちゃんのためにも作戦にちょっとした変更を加えようかなー」


「変更?」


「そう。リデリアちゃんの凄さに気が付かないでずっと馬鹿にしてた人たちに、軽ーくお仕置きをしてみるのもいいかなって思ってさー」


 ラッドヤードは心底楽しそうだ。きっと彼は根っからの悪戯小僧で、悪だくみをするのが好きなのだろう。


「どう、リデリアちゃん? やってみるー?」


 リデリアは、今まで自分を散々からかいの的にしていたギルドの団員たちの顔を思い出した。リデリアは、その事で常々苦汁をなめてきたのだ。少しやり返したところでバチなど当たらないのではないだろうか。


 もう『お茶汲み聖女』ではなくなったリデリアは大胆になっていた。やります、と即答する。


 きっと真面目すぎたのはアレスだけではなく、リデリアも同じだったのだ。


 リデリアは、団員たちの言葉をずっと真に受け続け、いつか能力が覚醒するかもしれないという淡い期待を抱きつつも、自分が無能な『お茶汲み聖女』だという『現実』に浸っていた。


 確かにその評価をもっと疑ってかからなかったリデリアも悪いのかも知れないが、そう考えてみたところで、彼らの罵倒がリデリアを傷つけた事実には変わりない。


 それに、聞こえてくる冷淡な言葉の数々が、リデリアに与えた影響は計り知れなかったのだ。


 ラッドヤードの言うように、リデリアは素直な性質だった。『役立たずだ』とか『無能だ』とか言われれば、もうそうなのだとしか思えなくなってしまう。


 それでも幸運な事にリデリアは変われた。『お茶汲み聖女』から、万能薬エリクサーを作り出せる魔導師へと変貌を遂げる事ができたのだ。


 だったら、その記念に自分を変えてくれなかったギルドに仕返しし、自分の『変われる可能性』を抑圧し続けた人たちを見返してやってもいいではないか。


「リデリア殿、無理をしてラッドヤードの話に乗らなくても……」


 生真面目なアレスが横から口を挟んできたが、もうリデリアの決意は固まってしまっていた。ラッドヤードが「うん、うん」と頷いている。


「決まりだねー。じゃあ今日からリデリアちゃんは、魔王軍の専属聖女でーす!」


 ラッドヤードが高らかに宣言して拍手した。アレスは、「だから私は魔王などでは……」とブツブツ呟いていたが、「まあいい」と最終的には折れる事になった。


「それで? 私たちはどう動けばいい?」

「えっとねー」


 リデリア、アレス、ラッドヤードは額を合わせる。リデリアは話の内容を一言も聞き漏らすまいと気合を入れたのだった。

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