表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/7

05 最強スキルの制御を試みたが

※補足

・マゾ欲:スキルによりマゾヒスト体質になったことにより苦痛を感じたいという欲求のこと。

・今回はスキル『究極完全体マゾヒスト 』の技? 能力的なのが出ます。一応、3話にサラッと能力記載しています。

・スキル=性癖みたいなところがあるかもです。


よろしくお願いします。

 時間の流れは本当に早いなあと実感している今日この頃。

 気づけば俺も8歳か。ゴブリン襲撃事件──いや、違うな。俺の性癖せいへき露呈ろていしてしまった、あのまわしき事件からもう3年も経ったわけだ。


 あの時は、『究極完全体アルティメットマゾヒスト 』によってマゾヒスト体質が発揮されて(暴走して)しまい、不覚ふかくにもゴブリンが手に持つ棍棒に興奮するというどうしようもないレベルの変態ぶりを見せてしまった。殴打されたいという、止めどない欲求に支配され、自身のコントロールができなくなった俺は、力の差が明確なゴブリンに突撃をかますという暴挙──いや、自殺行為。その結果、棍棒で頭をかち割られ、死にかけるというね……最悪すぎて言葉が出ない。


 まあそんな酷い状況を作り出してしまったのは事実だが、それでも一つだけ良いことがあった。それは俺の最初の友達──スイ・フラメラを助けられたことだ。これに尽きる。まあ助けたと言ってもいいのか微妙だけど。なんせ俺は棍棒で殴打されたいという頭のおかしい欲求に支配されたがゆえの行動だったし。言うなれば、偶々(たまたま)タイミングがよかっただけ──ありていに言えば結果的に助けられた、そう言うべきだろう。だが、それも事実であることには変わりない。そのおかげで、運良く? スイちゃんと友達になれたので、そのことに関してはこのド変態スキルに感謝している。


 で、そのスイちゃんなんだけど、可愛いくて可愛いくて仕方がないんだよ。あの事件以降、パンダみたいにずっとくっついてくるから、たまらず抱きしめたくなっちゃう。いや、別に俺はロリコンになったわけじゃな──おっと話がそれてた。


 話を戻すが、そんな苦痛を求めすぎてしまうマゾ体質になってしまったことに危機感を抱いたので、早々に何らかの対策をしなければ不味いと確信したわけだ。いくら、スキルおかげで生命力(HP)耐久力(VIT)が大幅に強化されているとは言え、力のない子供であり、大人やモンスターと比べれば雑魚もいいところ。このまま何でもかんでも攻撃を受けてると流石にそう遠くない未来で死ぬのは目に見えている。せっかく第二の人生を得たんだから、それだけは絶対に嫌だ。


 というわけで、今日も今日とてその原因となったスキルであり、神様から転生特典として貰い受けた最強チートである『究極完全体アルティメットマゾヒスト 』の対策──要はこのスキルを完全に制御することに精を出していた。


 ちなみに、今は真夜中。

 誰にもバレないようにエイミー育児館をこっそりと抜け出してきている。流石にこの特訓を見られるわけにはいかないからな。というか、「俺、マゾだから、モンスター見ても興奮しないように自分をコントロールする特訓してるんだよ!」とか言えるわけがない。こんなことを言ったら最後、変態のそしりは免れないだろう。いや、もうあの事件のせいで変態(やべぇ奴)扱いされてるけどさ……まあとにかく特訓を開始するか。


 場所は育児館から少し離れた森の中。

 日中にっちゅうは明るく、緑いっぱいの綺麗な光景が広がるが、夜は一転して不気味な雰囲気を醸し出していた。もちろん、森なので明かりを照らす街灯がいとうなどなく視界は非常に悪い。そのため、懐中電灯(ヘッドライト)付きヘルメットを頭に装着している。これがないと本当に真っ暗闇だから色々と困るしね。


 仮にそんな視界不良の中でモンスターとエンカウントしたら、一方的に攻撃されて面倒なことになる。……あ、でもモンスターからボコボコにされるのはそれはそれで気持ち良いだろうなあ……おまけに目隠しプレイだし、ちょっとお得感ある。うん、いいかも──って、違う! そんなん絶対にしちゃダメだ‼︎ 危ねえ……あやうく沸いて出た欲求(マゾ欲)に支配されるところだった、ふぅ……。


 この無意識に湧き出る欲求(マゾ欲)の支配を強靭な精神力でどうにか跳ね返した俺は、荒ぶった心を落ち着かせるために一旦大きく深呼吸して、夜の森を進んでいく。その足取りは、ここ2年間ほどずっとこの森で特訓をしているので慣れており、結構軽かろやかではある。


 そんなこんなで、歩き回ってから1時間以上経ったが。


「うーん、今日はなんもエンカウントしないな……」


 そう、俺の目的はモンスターとのエンカウント。この森は夜になると浅い場所でもモンスターが出没する。しかも都合の良いことにゴブリンやスライム、ヘッドウルフといった一般的に弱いとされるモンスターが、だ。こいつらを特訓に使わせてもらう。


 で、今更だけど、この特訓のさいたる目的なのだが。

 この『究極完全体マゾヒスト 』の暴走を抑える──要はこのスキルを制御する力を身につけることだ。まあ最優先事項だな。


 具体的な特訓方法はモンスターと対峙たいじするとき、身体が勝手に攻撃を受けたがるという欲求(マゾ欲)を必死に耐えながらも敵の攻撃を回避し続けること。これを繰り返すことで我慢することを身体に覚えさせる──いや、きざみつける! そうすれば敵の攻撃を敢えて食らうという馬鹿なことはしなくなってくれるはず! ……まあ2年間、この特訓してるけど効果は今ひ──


「──おっと、きたな!」


「「「キシャシャ‼︎」」」


 この2年間の特訓を思い返しながら進んでいると3体のゴブリンを発見した。

 ゴブリンの方も俺の足音が聞こえたのか、即座に振り向いて威嚇してくる。そして、もうお馴染みとなった棍棒を振りかざしながら距離を詰めて来た。3体同時の攻撃だが、ゴブリンの戦闘能力は低くく、攻撃も単調なので充分に回避は可能だ。集中して棍棒が振り下ろされる軌道を瞬時に見切る。よし、把握! そしてけ──ボゴッ‼︎


「う"ひぃぃぃ〜! き、きもてぃぃぃ〜‼︎」


 無理だったわ。

 いや、言い訳させて! 回避はしようとは思ったよ! でも、迫り来る棍棒を見てたら、ぶっ叩かれたいって欲求(マゾ欲)がブワァって溢れて我慢できんかったのよ。いや、本当だから‼︎


 ……ま、まあ見ての通りだ。この2年間、スキルの制御に取り組んできたけど、悲しいことに特に成長はなし! 毎日こんな感じで、敢えて無防備ノーガードで攻撃を受けてしまうのだ。


 当初はこのド変態スキルを制御してやる‼︎ って息巻いてたけど最近は「もう無理かなあ……」って諦め気味。だってどんなに攻撃を回避しようと意識しても、本能がそれを許してくれないからな。まるで攻撃を回避するなんてマゾヒストの恥だとばかりに身体が勝手に攻撃を受けつけるんだ。こんなん無理ゲーでしょ。


「「「キシャァァァ‼︎」」」


 そんなことを思っている間、ずっとゴブリンたちに棍棒で殴りつけられていた。3年前は死にかけたが、今の俺の生命力(HP)を削ることはできない。それほどまでに俺のステータス値は成長しているからな。まあこの2年間の特訓でスキルの制御が出来ないから当然攻撃を受け続けボコボコにされるだろ? そのおかげで耐久力(VIT)が大幅に成長したわけだ。結果、ゴブリンが何体集まってタコ殴りにされようが大したダメージは受けない。流石はド変態といえど最強チートというべきか、その成長は目を見張るものがある。まあ偶に快感が凄すぎて意識が飛びかける時があるけどね。


 さてと……それじゃあそろそろ帰らないといけない時間だから終わりにするか。この痛み(快感)も飽きてきたし。やっぱここまで耐久力(VIT)が強化されてるとゴブリンの攻撃程度じゃ刺激が足らない。こんなんじゃ全く満足できないなあ──っておっと……またマゾ欲に支配されそうになったわ。あぶねえあぶねえ、切り替えないと。


 攻撃を受けながらも、おもむろに片手をゴブリンたちの方向に突き出す。片手に力を込める。すると急速に禍々しいとも言える力の集合体のようなものが手のひらに収束していく。よし、充分に溜まった。それじゃあ──


「──マゾヒストの一撃(マゾブレイク)ッッッ‼︎」


 手のひらに収束した禍々しい力を一気に放出させた。

 さながら、それは全てを滅ぼす破壊光線はかいこうせん。3体のゴブリンたちは悲鳴すら上げることなく息絶えた。


 あ、ちなみにマゾヒスト一撃(マゾブレイク)は『究極完全体アルティメットマゾヒスト 』の使用できる力の一つであり、与えられるダメージを蓄積して、それを一気に放出して攻撃する技だ。俺の唯一の攻撃手段でもある。まあそんな感じ。


「ふぅ、今日の特訓は時間的にこれで終わりだな。それじゃあさっさと帰ろう」

ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ