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トランプ


「マジで、どこにしまったっけ」


 ぎんが押入れを探してる中、よもぎがポケットからある(ぶつ)を取出しテーブルの上においた。


「じゃじゃーん。これでやるのん」


「よもぎちゃん準備いいな」


「でも、普通ポケットにトランプ入れないよね」


 なずなは呆れ顔で言った。その言葉が届いたのか、ぎんは顔をしかめて振り返って。


「おい。トランプあんなら最初から言えよ」


 探すのをやめて立ち上がりテーブルに向かう。


「それでは人間は成長しないのだよ」


「そうだぞぎん。人に頼るな」


 誰なんだよ。てかお前の対応力には恐れいるよ。なずななんてあんぐりしてるぞ。


「お前たち。二人揃うとほんとうざいよな」


 ぎんは素の表情でしんみりと言った。流石に堪えたのか二人とも意気消沈としている。


「そんなガチなトーンで言うんじゃねーよ。泣くぞ」


「お兄ちゃんの意地悪。悪魔。すっとこどっこい」


「本当のことだからしょうがないだろ。後、すっとこどっこいはやめろ」


 二人の目に光が戻ったのを俺は見てしまった。


「よっ、すっとこどっこい」


「すっとこすっとこどっこいこい、すっとこすっとこどっこいこい」


 その曲なんなんだよ。地球の裏側までぶっ飛ばすぞ。だがここで乗ったらつけあがるだけ。

 ゆっくりと息を吐いて冷静さを取り戻し馬鹿二人を無視した。


「じゃあ、トランプやるか。なずな何やりたい?」


 テーブルの上に置いてあったトランプを掴んだ。なずなはいきなりの事でうろたえてしまう。


「えっ⁉ 私?」そう言った後少し考えてから口を開いた。

「……大富豪とか?」


 自信がなかったのか疑問系になってしまった。それに無視されていたハイエナ二人が、ガブッと食いついた。


「大富豪いいの」


「大富豪いいじゃん。やろうぜ」


 どんだけ大富豪いいんだよ。俺も好きだけどな大富豪。特に大勢でやる大富豪とか最高だよな。二人でやると手札がわかって心理戦みたいになっちゃうからな。ババ抜きもしかりだな。トランプはやっぱり大勢でやるのがいいんだな。友達がいてよかった。

 瀧崎さんどうしてるかな……。


「ぎん。ボーっとしてんじゃねーよ」


「あ、悪い。今配る」


 トラップをシャッフルして配った。各々手札を見て、表情を歪ませたり微笑んだりしている。俺の手札はそこそこだ。ジョーカーはないものの2が二枚Aが二枚ある。


「そんじゃ、順番はジャンケンな。勝ったやつから時計回りな」


「おっけー」


「いいよん」


「わかった」


「よし、行くぞー。ジャン、ケン、ポイ」


 死闘の末よもぎが勝った。死闘は言い過ぎたけど、そこで真っ白に燃え尽きているなずなを見るとそう言いたくなるのは仕方がない訳で、どんだけ勝負に命かけてんだよ。


「じゃあ、いくの」よもぎが4♦♥のダブルを出した。


「はい」なずなが6♦♠のダブルを出した。


「どうだ」まさしが10♦♠のダブルを出した。


「ほれ」ぎんがJ♠♥のダブルを出した。


 よもぎがK♠♣︎のダブルを出した。なずなはパス。まさがA♦♣︎のダブルを出しドヤ顔をしている。むかついて2のダブルを出しそうになったがパスした。他の二人もパスしてまさのターンになった。


「俺のターン。ドロー」


「しねぇだろ。ドローは」


「いや、しなくてもするだろ」


「はいはい。いいからだせ」


「流すんじゃねーよ。ほらよ」


 まさしは3♣︎を出した。ぎんは5♦を出した。なずなは7♦を出した。そして馬鹿が言った。


「俺のターン。ドロー」


 俺は無視することにした。


「……」


「さっきから言ってるけど、それって何?」


 なずなさん聞いちゃったよ。せっかく無視したのに。


「説明しよう。勇気王というアニメがやってるんだけど、そのアニメに出てくる主人公の名言なのだよ。そしてアニメよりも人気なのが勇気王カードゲームなんだけど……」


 このままじゃ日が暮れちまう。もう暮れてるけど。まさもうんうんと頷いて聞いちゃってるし俺が止めるしかないか。


「その辺にしておけ。トランプが進まないだろ」


「あ、ごめんなの。つい……」


「いや、私が何も知らないからいけないの。ごめんね」


「いいの、誰にだって知らないことはあるから。これからいっぱい教えてあげるの」


 よもぎは満面の笑みを浮かべている。それとは正反対になずなは苦笑いを浮かべていた。


「いっぱいは、いいかな……」


 熱い友情が芽生えたかに見えたけど、そこまでじゃないみたいですね。


「そんなこと言わずに」


「うーん。考えとく。それより出さないと」


「そうだったのん」よもぎは9♠を出した。


 そのまま勝負は続いた。みんなの手札が減り決着も間近か。俺は勝負に出た。


「どうだ、Aのダブル!」


 A♠♥のダブルを叩きつけた。それを見て奴は笑っている。なんだこの寒気は、俺の記憶が正しければ2はもう一枚しかないはずだ。まさか、ジョーカーを持っていたのは。


「いけー。破滅のバーストストリーム」


 そう言いながら2♥とジョーカーのダブルを叩きつけた。


「また、勇気王かよ」


 ツッコんだぎんの手札は5が一枚。ほぼビリが確定した瞬間だった。結果は当然ビリ。


「くそー。まさかあんな切り札を隠しているなんて」


「ふふん。よもぎは策士なのん」


 よもぎはご機嫌のようだ。惜しくも二位だったなずなはうなだれていた。


「この私が、負けた……」


「もう一回だ! もう一回!」


 三位のまさは納得してないようだ。俺の方が納得してないんだよ。


「よし!もう一回やるぞ!」


「望むとこのなの」


「次こそは必ず」


 二人ともやる気のようだ。でもなずなのはちょっと違う殺る気、って感じがするのは俺だけなのだろうか。


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