親友の状態の訳
俺は目覚めてから二週間ぐらい冒険者活動をサボっていた、え?何でだって?そりゃあ、流石に止められたからだ、いろんな人に。
どうやら俺が眠っている間、俺の知り合いが俺を治すために、色々な治療法を試してくれたみたいなんだが、全部効果は無し。
しかも、俺がボロボロになりすぎて、ギルド長が神妙な顔で『もう、冒険者活動は無理だろう』と、ほざいた数日後に、俺が動き回っていることをギルド長が発見、絶対安静を言い渡された。
だが、体を動かさないと体は鈍るし、何よりずっとベッドの中にいるというのは暇すぎる!なので仕方なく今は…………
「和馬、まだまだ遅いよ?ほらほら、僕って弱体化?したっぽいんだから速く倒してくれてもいいんだよ?」
「ほざけ!!どこが弱体化したんだゴラァ、むしろ強化されているんじゃねぇの!?」
以前と違う、いや、正直に言おう、女体化した蒼華と鍛練している。
いや、待て、話をしよう、何故蒼華が女体化したのか、そして以前より強くなったかを…………。
あれは、俺が起きてから蒼華が心配になって、直ぐに屋敷中を探した、いや、蒼華自体は直ぐに見つかった、女の姿で。
しかも会って一言目に『やぁ、約束通り、女体化してきたよ』と意味不明な事を言って来やがった。
いや、生き返って嬉しかったよ?嬉しかったけどさぁ…………俺って女性恐怖症なんだよなぁ。
蒼華の見た目は、元々が女に近かったが、余計に女っぽさが出てきた、身長は男にしては少し小さめの160だったのだが、余計に小さくなり、145位になってしまっている……まさかシノより小さいとは…………。
顔は、元々が中性的だったのが、女体化してから、童顔の美少女となっている、その他にも、男の時には見られなかった胸が、少し自己主張している。
まぁ、結論を言うとあまり怖いとは思わなかった、いや、顔が幼いという理由だけではない。
まあ、恐怖症が出ないのはいい、だが、約束とはなんだ?と聞いたら蒼華は戦闘中でのやり取りの事だと言った。
あの時はベリアルを殺すことしか考えてなくて、その前の事はあまり思い出せなかったが、蒼華に言われて気付いた。
『いやぁ、和馬が来なくなってから、なんかもう学校行くのも、勉強するのがめんどくさくなって、ずっと剣を振ってたんだよ、そのせいかな?』
『お前やっぱり、俺の事好きすぎだろ確かお前男だろ?』
「いや、なんかもう、男でいるメリットないし、寧ろ女の子の方が和馬に迫れるっぽいし、性転換でもしようかな?』
『おいおい、もしそれで女の子になっちゃたらどうすればいいんだよ、俺は』
『僕を娶ればいいと思うよ』
「うん、絶対に嫌だ、伸長が150以下で童顔で可愛かったらまぁ、考えてやらんこともない」
『よし!来た!絶対に性転換してみせる!』
………………やってしまった。
あの時は本当に性転換をしてしまうとは思っていなくて、結構適当な事を言っていたが、やっぱり言わなかった方が良かったかなぁ。
俺は基本的にどんな約束でも守る、それがどんなに畜生で、人間としてクズのすることだろうとも、まぁ、そんな約束はしたくないけどね。
そんな俺が、考えてやらんこともないといってしまったのだ、つまり俺は蒼華を娶るかどうか、考えなくてはならないということだ。
え?それは違うって?約束ではない?だがなぁ、蒼華の方は約束と思っていたみたいだし、一度言ったことを撤回するのは男としてどうだろうか?
という訳で、少し蒼華の事を観察していた、顔はストライクゾーンのど真ん中、身長も恐怖症が出ない範囲、俺の事を好いている、だが元男だ。
そういえば、あいつは剣を振るう以外にも、掃除、洗濯、家の事は大体できる、家庭的な奴だった、しかも料理は上手い、だが元男だ。
何より、あいつは俺の大親友、一緒にいて安心するし、ずっと仲良しでいたいと思う、だが元男だ。
クソッ!元々が男ということ以外、断る理由がない!そもそもあいつを異性とも同性とも意識していなくて、蒼華が男というのも、ぶっちゃけあの時までは思い出せなかった、ついでに言うと、出会った時も、数年くらいは女と思っていた位、蒼華は男っぽさがない。
これはどうするべきなんだ?俺の心情的には別に蒼華を娶っていいと思っている、しかし、元男という事実が本当に邪魔をしてくれる、なんてこったい。
このままずるずる引き伸ばすのは不味い、男としても、親友としても。
だが、うだうだ悩んでいるうちに、蒼華が提案してきた。
その提案の内容とは、俺と蒼華が勝負をして、勝ったら蒼華を娶れとの事らしい、だが蒼華は元々男で、体の勝手が違うと思い、断ろうとしたが、その瞬間に首元に剣を突きつけてきた、怖えぇぇ!
「和馬?あんまり僕を舐めるのも止めておいた方がいいかも知れないよ?だって僕はなりたくてこの女という体になったんだ、それでもし弱体化しても、僕は君に僕を絶対に娶って貰うまで諦めないからね?だって僕がこの体になったのは、和馬の所為なんだもの」
「そこまで言うなら俺も腹を括ろう、分かった戦おう、だが、俺もお前もまだ体が鈍っているだろうから、それまでは一緒に鍛練でもしないか?」
「うん、いいよ、それでいこう」
ここまでが回想だ、そして今の俺はとてもボコボコにされている。
今は鍛練を初めて約一週間、その間、俺は一度も蒼華に勝てていない、だってしょうがないじゃないか!対人戦なんてもう数年はしていないんだから。
我が十六夜家が没落して、親父や義母は十六夜家を守ると言って家からでない、いや、それは別にいい、我が家には外には出してはいけない物が幾つかあるからな。
だが、そうすると俺達は生きていけないので、仕方なく俺が出稼ぎに出ていた。
そこで手に入れた物は多かったけれど、失った物も少なからずあったと思う。
勉強は戦争家になる前には高校の範囲まで終わらせていたから別に良いのだが、俺の友達と言える存在は幼なじみである蒼華位しかいなかった、なんとも廃れた青春である。
敵を切り、殺し、屠り続けていたとはいえ、小説で読んだ物語のような青春を少しは味わいたかった。
まぁ、過ぎたことなので別にいい、それに俺が金を稼ぐことにより、小町を途中までとはいえ学校に行かせられたから、別に後悔はしていない。
だが、今はそんな感傷に浸っている場合ではなく、何とかして、対人戦のコツを覚えなくては。
そうだ!思いだそう!俺の師匠との修行の思い出、あれさえ思い出せれば対人戦なんて楽勝のはず!
あぁ、師匠との思い出を思い出していく、あれは、確か修行を初めてから一年ぐらいの時だった。
『師匠!凍んじゃうよ!』『なに、まだまだいけるだろう?それとも我の思い違いだったか?』「ちくしょー!!やってやろーじゃねーか!』
そこまで思い出して、記憶をシャットアウトする、だめだ、これ以上思い出したら、俺の精神が死ぬ。
仕方ない、地道にコツを思い出していくとしよう。
そこからもう一週間後、お互いの体を、調整し終わったので、遂に決闘の日となった。
蒼華は元の男の状態より強くなった、それに対し俺は対人戦のコツを思い出しただけだ。
だが、何故か今回の勝負は俺は勝てると思っている、何故かと聞かれたら、勘としか言えない。
「やぁ、和馬調子はどう?」
「おう!今の体の調子は何故か絶好調だぞ、これだったらお前に負けないと思うぜ」
「ふぅん、まぁいいや、それじゃあ決闘のルールを説明しようじゃないか」
ルール無用の決闘となると、お互いがお互いを殺すまで勝負が終わらないと思うので、ルールを決めた、俺はルールとかを決めるのは面倒なので、蒼華に任せることにした。
「まず、審判が戦闘不能と思ったら、直ぐに勝負は止める、その次に自分の持っている力は全て使っていい、最後に、勝った者は負けた者に何でも一つ命令できる、これでいいかな?」
その後、蒼華は付け足すように、審判はシノという事を言った、うん、別にルールに問題はないな。
「問題ない、それじゃあ始めるか」
「あぁ、始めよう」
こうして、俺と蒼華の決闘の火蓋が切って落とされた。




