切り裂く訳
「うおぉぉぉお!」
俺は倉庫から、桜吹雪を取り出し、目の前に見える触手に斬りかかる。
その瞬間に、触手は細切れになるが、大したダメージにはならないだろう、なんたってあいつは星と同程度のデカさだ、こんな人程度の大きさの触手を斬った所で意味がない、本体を叩かなければ。
『ほぅ、この個体の属性である、裂の耐性を手に入れた我の触手をも切り裂くか、ふむ、貴様も吸収した方が、もっと我の力になるはず、ならば貴様も吸収するしかあるまい」
「あ?てめぇごときが俺を吸収する?笑わせるのも大概にしろよ?病人一人弱ってないと吸収出来ない癖に?」
『グハハハ、あの個体は性能が格別だからな、それも仕方ないだろう、だがあの個体を吸収した今、貴様を倒すのも造作もない」
「おいおい、借り物の力で俺を倒す?無理に決まってんだろ?この星の最強である俺を」
『最強?最強はこの個体ではないのか?』
「お前は知らないとは思うが、この星の元々の最強は俺だ、まぁ、お前はそんなことを知る必要はない、だってお前は、今日、死ぬんだからな」
『訳が分からない事を申すな、我を殺す?無理に決まっているだろう、何故なら、我は今地中深くにいる、その我を殺すなんて夢物語よな』
「おいおい、地球深く?だったら、俺もそこまで行けばいい」
『何を言っているんだ?この個体は』
「メヌ、すまんな、少し地球を破壊する」
『へあ!?』
俺は今の今まで黙っていたメヌに向かって、許可を取る、まぁ断られても実行するけど。
『え?空気読んで今の今まで黙っていたけど、へ?地球を壊すってどういうこと?元に戻るの?』
「あぁ、しっかりと戻す」
『うーん、本当なら許可したくないけど、まぁ、いっかな、元に戻るんだったら』
「よし来た!」
『さっきから何を血迷った事を言っている?地球を壊す?無理に決まっているだろう、何せ貴様は人間だからな、圧倒的に破壊力が足りない』
「あん?うるせぇよ、それよりはお前は自分の心配をした方がいいぞ、まぁ、無駄だけどな」
俺は道場から出て、外に出る、一時的にだが地球を壊すのだから、場所を選ばなければならない。
まず、ビルなどがある都市は論外だ、上からビルが降ってきて面倒臭い、なるべく平地で、動植物がいないところがいい、もっとも、動物は全て絶滅しているから、植物だけに注意すればいい、目星はつけてあるから、直ぐにつくはずだ。
十分程走り、目的地に着いた、これで始められる。
俺は封印している剣、今回は終末剣ラグナロクを取り出す、こいつは終末という名の通り、星に振るえばその星を破壊する位の破壊力は持っている。
こいつを手に入れた経緯はなんだっけか………、確か、神を名乗る変なじじい達をぶん殴った時に手に入れたんだっけ。
あれは俺が十五才の時……は響ちゃん達が来たときか、確かその一年後だったかな、その時に現れた。
空が突然割れ、その中から三人のデカイじいさん達が出てきた。
一人目は黄金の鎧を来て、やたら金ぴかに光るハンマーを持っていた筋肉ムキムキのおっさん、その次にピエロの仮面をしている、鎌を持った少年、側にはデカイドラゴンや狼がいた、最後に片眼が義眼の黄金の槍を持っていたじいさん、それぞれ順にトール、ロキ、オーディンと名乗っていた。
そいつらが突然、世界に終焉を与えると、アホみたいな事を言いやがったのと、軍からの命令もあったので取り敢えずぶっ潰した。
最初のおっさんは殴り飛ばし、次の少年は半分死ぬまで切り刻み、最後のじいさんは許してくださいと言うまで殴り続けた。
その時に、詫びと言って差し出して来たのがこの剣だ、だって大事そうに持っていたからとても良いものだと思って、まぁ、感謝料と考えれば大丈夫だろう。
俺はラグナロクを地面に向かって振る、その瞬間、地面が割れ、底が深すぎるので、覇術の【遠見】で中を覗くと、中に変な物体がいた、あれがベリアルか………気持ち悪いな!
こいつの見た目を口で例えるなら、全身に口があって触手が蠢いている球体と言っておこう。
『いやぁ…良いよとは言ったけど本当に出来るなんてね、ホントに規格外だよ君は、それって一応神レベルじゃないと出来ないんだけどね』
「はっはっは、褒めてもなにも出んぞ、だがありがとぅ!」
俺はそう言い、割れた先に入る、地球を割った訳だから、その寿命はゴリゴリすり減っているので、早くあいつを地球から追い出さないと。
体にGが掛かる、とても痛いがこれぐらいでは死なない、地球内のマグマは、ベリアルが食い尽くしたようでほとんど残って居なかった、これだけは助かった。
しばらく重力に耐え、ベリアルの元に行く、けっけっけ、堪忍しやがれ!
『なに!何故貴様がここにいる、ここは地球の内側だぞ!人間ごときの貴様が来れる訳がない!!』
驚いているが、俺には関係ない。
「うるせぇ、そんなことより、一緒にここから出ようか(にっこり)」
俺はベリアルの体を掴む、本体は星のようなデカさなのだろうが、今は直径数メートルの小さな物体、重力に負けると思うが、そこは何とかする。
「おらァ!【桜花】二千倍!」
そう言い、ベリアルを上に投げ飛ばす、ぐんぐんと上に昇って行くが当然減速する、そして下に落ちる瞬間にキャッチをして、また上に投げ飛ばす、これを何回か繰り返していたら。
『んっ、グオォ止めろぉー!!』
「ヒャッヒャッヒャッ、断る、ほれほれあともう少しで地上だぞぉ!」
『クッ致し方ない、ここらで撤退させてもらう!』
そう言い、ベリアルは急に溶けて消えてしまった、あん?俺が逃がすと思ってんのか?
「おいおい、かくれんぼの次は追いかけっこか?いいねぇ、乗ってやるよ………逃げれると思うなよ?」
そう言い、俺は地球内から出て、ベリアルを追いかける。
なんなんだあの生物は。
不条理にも程がある、人間の個体の癖に地球内にいる我を捕まえにくるし、その我を地球外に出そうと、あり得ない速度で我を投げるなんて、あんな生物いてたまるか。
だが、この星は殆ど食い尽くせたので良かった、もうあんな生物に出くわさないように、食う星は選ばないといけないな、まぁ、でも、あの生物といえども、本体である我を倒すことなど不可能だがな、単純に質量が違う。
「それじゃあ、試して見るかい?」
『へ?』
俺はその場にいるベリアルの体を真下に叩き落とした。
『うわぁぁぁ!!!』
「この俺からちょいとでも逃げ出せると思ったのか?間抜けめぇ!俺は星を割ることも出来るんだぜぇ、てめぇを真っ二つにするぐらい楽勝なんだよ!」
『クッ!なめやがって!』
そう言い、ベリアルはやっとの俺に攻撃を仕掛けてきた、主な攻撃は、触手を伸ばして、俺捕まえ、触手に付いてる口で噛みつくとか光線を発射してくるとか、そんな感じの攻撃だった。
だが、触手は細切れに出来るし、光線も避けれない訳ではない、これは余裕だな。
『クソッ、何故効かない!』
「てめぇの攻撃は軽いんだよ、大して努力せずに、喰った力だけで戦ってきたからだ」
『違う!今までの敵だったらそれで倒せた、貴様が以上なのだ、人間の個体の癖に地球を割るし、今も宇宙空間で我に攻撃を続けている、そんなことが出来るのは貴様だけだ!』
「そうかもな、だが、そんな敵を想定できなかったお前が悪い」
『クソッ、来るなぁ!』
そう言って、ベリアルは無差別に触手で攻撃をしてくる、それを切っていて思ったのだが、何かがおかしい。
奴は異様に俺を近づけさせない、恐怖という考えも出来るが、それは違うと、俺の勘が言っている、ここは速くケリをつけるか。
そう思い、俺はラグナロクを取り出し、ベリアルに振るう、地球でさえ真っ二つに出来た剣だ、所詮、生物であるベリアルの事を真っ二つに出来るはずなんだ、普通は。
降った瞬間にカキンと音がし、俺の真横に何かが飛ぶ、その何かとは…………さっき取り出した、ラグナロクの刀身だった。
『ふは…ふははは!遂に馴染んだぞ、あの個体の属性が!』
「あの個体?蒼華のことか?………ん?確かあいつは何て言っていたっけ…」
考えろ、本当はあの一撃で倒せるはずのベリアルが今も生きている訳を、……確かあいつが言っていた言葉、確か裂の属性だったかってまさか!?
「お前、裂傷武器に対する耐性を得るために耐えていたのか」
『その通り!貴様が我を切り刻み続けている間に、あの個体の属性を馴染ませたのだ、これで貴様に勝機は無くなったわけだな!」
「確かに、お前に対する攻撃手段が、大量に減ってしまったが関係ない、俺は、お前を殺す、それは確定事項だ!」
『ふははは!ちっぽけな個体で何を言う、貴様に勝機は無いんだよ!人間!』
ふむ、これからどうするかねぇ。
そう考え、俺は意識を加速させていく、この戦いに勝つために。




