三日経った訳
あれから三日たった、その間、何か有ったと言えばあるし、何かないと言われればないと言える時間を過ごしていた。
この三日間を具体的説明すると、怪物狩りをしていた、結果から言うと、この怪物狩りをしていた三日間は、全くの無駄だったわけだが。
どうやら怪物の正体はベリアルの分離した細胞で、その数なんと、ベリアルの細胞数と同列らしい、本当に無駄だった。
だが、この三日間の暇潰しにはなったので、良しとすることにした、まぁ、この三日間黙っていたメヌはしばいたが。
三日経ったこともあり、俺は蒼華の元へ行く、あいつの場所は、まぁ、目星はついている
俺は、その場所へ目指し、扉を開けた。
「さて、三日ぶりにやって来たぜ、蒼華、準備は出来てるか?」
俺の目星通り、蒼華は一振りの刀を持ち、道場に正座で座っていた、まぁ、当たり前と言えば、当たり前の理屈だな、俺と蒼華はいつもここで稽古していた訳だし。
「うん、準備万端だよ和馬、今すぐ始める?それとも、お茶をしてから始める?」
「はっはっは、その誘いは嬉しいが、お前の体が心配だからな、直ぐに始めようぜ」
「相変わらず優しいね、それじゃあ、始めようか」
そう言い、蒼華は立ち上がり刀をを構える、俺はというと、真剣は持ち出さずに、木刀を持ってきた。
「ん?和馬、どうしたの?木刀なんか持ち出して」
「いや、だって、真剣なんて使ったら、もしかすると、誤って殺しちゃうかもしれんだろ?しかもこれは殺し合いじゃない、単なる勝負、それを真剣でやるなんてアホじゃね?」
そう、これは殺し合いではなく、単なる勝負だ、もし生死に関わることならば俺も晩鐘やら、ヨグ=ソトースとか、使うが、単なる勝負にこんな最終兵器的な物を使えるか!
「フフッ、それは舐めてる訳ではなく、純粋にそう思っているんだよね、分かった、それじゃあ僕も木刀にしようかな」
そう言いながら、蒼華は真剣をしまい、木刀に持ち変えながら、構え直す。
「おうおう、そうしてくれ」
そう言って、俺は蒼華から、歩いて離れる、あぁ、何年ぶりだろうか、この感覚は。
俺が蒼華と戦ったのは丁度四年前、あのクソ女に尻尾を振っていた時期だ、あー、思い出すだけでムカついてきた、あの事がきっかけで、俺は道場に行かなくなったんだっけ。
あのときは、もう、殺す事しか考えていないクリーチャーとなっていた俺だ、道場に近づいたら迷惑だと思って、少し身を引いていた。
だがまぁ、今は人類滅亡しているみたいだし、迷惑も糞もないので、全力でいけるぜ。
俺が、ある程度の位置まで歩き、構える、勿論、蒼華も構えている。
「合図はどうする?」
「それは、そこのお嬢さんに頼めばいいんじゃない?」
「それもそうだな、よし、メヌ、頼めるか?」
『う、うん、それじゃあ、いくよ?』
「あぁ」 「うん、いいよ」
俺と蒼華が同時に答える、すると、俺の感覚は沈んでいく、蒼華以外のものは聞こえなくなり、蒼華の動きだけを見る。
『いざ!尋常に』
空気が張り詰める、俺は、もう、蒼華をどうやって倒すか、それしか考えが回らない。
『勝負!!』
始まった、まず最初に動いたのは蒼華だ、俺はそれに遅れるように動き出す。
まず蒼華は俺に切りかかる、あの技はなんだっけか、確か……
「雷切り」
その瞬間に、俺は木刀を振り下ろす、すると、ガキンと、重い音が鳴った、そうそう、あの技は横一文字に高速で切り開く技だったな。
「〈覇剣流〉一の型、神威」
俺は仕返しとばかりに、神威を放つ、だが簡単にいなされる、まぁ、当然か、こいつは威力重視の技は、そんな簡単に当たってもらっては困る
「ふーん、和馬、まだ威力上げたね、びっくりしたよ」
「へっ!お前こそ前より断然速度上がってるじゃねぇか」
そう言いながらも、俺達は剣を打ち合う。
「それじゃあ、どんどん上げていくよ!」
そう言い、蒼華はまた剣速を上げていく、それに俺も合わせる。
「あれ?前はこれでついてこれなくなってた筈なのに、本当に腕を上げたねぇ」
「お前なぁ、前は今から六年前だぞ、流石にあの時の俺を越えているだろ」
「へっ!?六年前?、もうそんな時が過ぎていたんだねぇ」
「あん?ボケたか?確かにお前は天然だったが、そこまでアホじゃなかっただろう」
「いやぁ、和馬が来なくなってから、なんかもう学校行くのも、勉強するのがめんどくさくなって、ずっと剣を振ってたんだよ、そのせいかな?」
「お前やっぱり、俺の事好きすぎだろ確かお前男だろ?」
「そうだねぇ、まぁ、和馬がいなくなるのなら、別に生きないでもいいかなぁ、と思うぐらいには君のことは好きだよ、うん、もし、僕が女の子だったのならば、何回か寝込みを襲ってるんじゃないかな」
「まじか!男で助かったぞ」
「いや、なんかもう、男でいるメリットないし、寧ろ女の子の方が和馬に迫れるっぽいし、性転換でもしようかな?」
「おいおい、もしそれで女の子になっちゃたらどうすればいいんだよ、俺は」
「僕を娶ればいいと思うよ」
「うん、絶対に嫌だ、伸長が150以下で童顔で可愛かったらまぁ、考えてやらんこともない」
「よし!来た!絶対に性転換してみせる!」
そう言うと、何故か力が強くなってきた、何で?
「ふぅ、結構長続きするもんだねぇ、やっぱり、いろんな戦場に出ると成長とかするものなのかな?」
「まぁ、行きたくて行った訳じゃねぇが、まぁ、少しは関係するのは否定できねぇな!」
そう言い、蒼華を大きく弾き飛ばす、だがダメージを負っているようには見えない、ただ威力を強くするだけじゃ意味がないか。
「ふぅん、じゃあ僕も行った方が良かったのかな?」
「止めとけ止めとけ、ありゃ良いもんじゃねぇぞ、体はベトベトになるし、休みもない、給料も少ねぇ、経験になったと言っても、多数対一の対処法とかだしな、しかも大体は格下だし、経験と言ってもお前には合わねぇよ」
蒼華を倒すために必要なのは、ある程度の威力、こいつは案外脆いから、力を少し上げるだけでいい、問題なのは速さと技だ、速さは桜花でなんとかするとして、俺と蒼華には結構な技術の差がある、それを埋めるためにはどうすればいいか……。
「そっか、そこまで言われたら、あまり行く意味はないと思えるね、でも何で和馬は戦場なんかにいったの?自分でも意味ないって言ってるじゃん」
蒼華を倒すために必要なもの、それは意識出来ないような超加速で、一瞬で意識を刈り取る必要がある、手数はいらない、一撃で決める。
「金のためだな、俺の実家が金を稼いで来いって言って来てな、まぁ、最初の一年間は色々な体験が出来て、良かったけどな」
だが、俺がどんなに速く攻撃をしても、直ぐに対処してしまうだろう、あいつは天才だからな、そこら辺は抜かりない、だが、生物というのは必ず隙が出来るものだ、そこも狙う。
「それは大変だったねぇ、でも和馬。よくここまでついてきているよね、昔の和馬の成長速度だったら、もう終わっているはずだよ」
「へん!舐めんな、これでも種族的には黒鬼から剣鬼になったんだぞ、これぐらいついてこれないと、剣鬼は名乗れないって」
「へぇ!和馬は剣鬼になれたんだね、昔だと考えられないよ、僕はそこまで君を変えた物が何なのか、ちょっと気になってきたよ」
その生物の隙とは、捕食者が獲物を狙う瞬間、つまり、大技を出すときだ、昔だったら気絶してただろうが、今だったら耐えられるはず。
「知りたかったら、俺を倒してみな、まぁ、無理だと思うけどな!」
そう言ってまた弾き飛ばす、蒼華はその距離を保ったまま、動かない。
「……本当に変わったね、和馬は、昔だったらそんな強気な言葉を言えてなかった、言えない筈なんだ、君は自分を良く理解している、その上で、君は僕に挑発した」
やはり、あいつは俺が何を狙っているかを知っている、それを知ってなお、俺の狙いに乗っかってくれるんだな。
「僕は知りたい、君がこれをどう防ぐか、どこまで君が変わったのか、それを知るためには、君を倒すしかないんだね」
「勝手に言ってろ、だが一つ言うぞ?お前は俺に勝てない、何故なら、俺が勝つからだ」
「いや、僕が勝つ」
蒼華は俺に切っ先を向けるような形の構えをする、俺はそれに向かい討つように木刀を構える。
「多分、この一撃で、どっちかが倒れるだろう、それは僕なのかも知れないし、和馬かもしれない、まぁ、僕の予想は和馬が倒れると思うけどね」
蒼華が俺を煽るように言う、まぁ、さっきまで俺も同じような事をしていたし、お互い様か。
「いーや、お前が倒れる」
だが、それとこれとは別である、煽られたら煽り返すのが十六夜和馬だ!
「強情だね…それじゃあ、この一刀、冥土の土産にでも持っていくといいよ」
その瞬間、蒼華が俺のすぐ前に現れる、いや、実際には見えていない、だが俺の今までの経験と、磨いてきた感覚が来ていると感じとっている。
「〈覇剣流〉五の型……」
来ると分かっているなら、その前に準備をするのが俺だ、寧ろ準備をしないと防げない。
「霊穿」
霊穿、子供のころから食らい続けた、蒼華の技だ、この技は、肉体と精神と魂の三つを同時に三回突く技、かの沖田総司の三段突きを蒼華がアレンジした技だ。
ただでさえ、防御出来ない技に、死亡率を高めるという極悪な改造、俺はこれを一回も防御出来たことがない、むしろ意識を保てたこともない。
この技の対処法は子供の頃から考えている、だが対処法が解っていたとしても、対処出来ないのが、この技だ、ぶっつけ本番になるが防いでみせる。
「紅!」
蒼華が目を見開く、そりゃそうだ、なんたって、自分の一撃必殺を防がれたのだから。
いや、完全には防げていない、俺が防いだのは一つの突きだけだ。
この霊穿という技は、全く同時に三つの突きが来る、一つは魂、もう一つは精神、最後に肉体、この中でも一番防ぐべき突きは魂だ。
肉体と精神は常人なら無理だが、俺の耐久力なら、耐えきれる、だが魂は別だ、魂とは人の一番の急所であり、鍛えるのが難しい部分だ、俺も多少は鍛えてはいるが、どうしても重すぎる。
だが、魂さえ守れば、後はどうとでもなる。
紅は、霊穿と同じ突きの剣技だ、だが、その内容は攻めより守りと言った方がいい、紅は一点集中の守りの技、これを習得するには、一点だけを狙う集中力と、その一点を正確に狙うという、二つの事が必要となってくる。
盾使えば良いじゃんと思うだろ?実際に、この技は〈覇剣流〉の中でも一番使わない技だ、しかし、相手が一点に集中した、例えばそう、突きとかの種類になると別である。
例えば蒼華の霊穿、あれは人が持てる範囲の盾じゃ、普通に貫通して人を突き殺す、どんなに固くても、普通に貫いてくる、そんな対処不可能と思えるような技を防ぐのが紅だ。
相手と同じ一点集中を返すという、馬鹿げた技だが、これがないと、蒼華の技を防げないのもまた事実、この馬鹿げた技も役に立つものだ。
子供の頃、この技を知って、これだったら蒼華の霊穿を防げるんじゃないかと思っていたが、その頃は、紅を習得出来ていなかったから、試せていなかったが、やはり防げたようだ、だが、これは真剣だったら意味を成さない、真剣だったら俺は多分死んでいるだろう、それで木刀だ。
木刀だったら、魂への攻撃さえ防げば、瀕死程度で済む、やり方を変えるとはこれだ。
蒼華が、直ぐに、体制を整えようとしているが、だが無駄だ!俺はもう、次の技の準備に入っている!
「〈覇剣流〉九の型!雷電!」
「………やっぱり、和馬は凄いね……」
そう言って、蒼華は、倒れる、勝負は、俺の勝ちだ、そうなるはずだった。
突然、蒼華を包み込むように触手が現れ、蒼華を取り込む。
『グハハハァ、ついにこれを取り込めた、感謝するぞ、人間』
「……………は?」
全くもって意味が分からない、俺は蒼華と戦っていたはずだぞ?
『貴様がこの個体を倒してくれたお陰で、少し速くこの星を喰えそうだ』
今の文略から察するに、こいつは蒼華を取り込もうとした、名前は確かベリアルだったか。
『グハハハ、沸き上がるパワー、この個体は今まで喰った星でも格段に強い、これだったらこの全宇宙を食い尽くせるかもしれない』
「黙れよ」
『ん?人間ごときがこの我に黙れと申すか?いい加減にしろ、全てを滅ぼすこの我に黙れと言えるのは、同種のみだ、もっとも、今だったら同種も喰えるだろうがな』
「剣士と剣士の勝負に手を出すとは、万死に値する、しかも、昔からずっと勝ちたかった相手で、遂に倒せると思っていたのに、それを奪い殺すだなんて、許さねぇ、死んでも死にきれないと思えよ、怪物」
こうして、俺とベリアルの戦闘の火蓋が、切って下ろされた。




