理由を知ろう
二話目投稿
私が自分の胸の内から沸き上がる感情をもて余している間に私以外の召喚者達も何とか自分の紹介を終わらせたみたいだ。
私全く聞いてなかった。まぁ、後で聞こうそうしよう。そんな事より重要なことがある。
「さて、とりあえずこの場での挨拶はこれくらいでいいだろう。後は各々ですればよい」
国王はそう言うが挨拶したのは王と王子達と王女と私達だけだ。通路の左右にいる貴族はともかく、王の周りにいる人達の紹介すらないのはどういうこと?王妃の紹介すらなかった。これは、この王の事だから何かあるな。
「次に我々が君達を召喚した理由を説明しよう」
そう言って王が自分の隣にいる老人に視線を向ける。
向けられた老人は頷き前に出てくる。
「では、私から説明させていただきます。」
そう言ってハゲの老人が説明した内容は私が思っていたのと少し違った。
まず、この世界の陸地は一つの強大な円形の大陸とその周りを囲むようにこれまた円形の島がある。島といっても充分大きい。というより大陸が大きすぎるだけだ。そしてその島には各種族がそれぞれ住んでいる。
人族が住まう島 フィース
獣人族が住まう島 アニファル
森人族が住まう島 エーセェル
鉱人族が住まう島 カンコトルア
亜人族が住まう島 メタコンル
天使族が住まう島 シェルドラ
最後に魔族が住まう島 マティクル
そしてこの7つの島の中央にある強大な大陸の名が
ラグフォルク
島の位置関係は先程の順番どおりにあるらしい。
通常この7つの島同士は全く交流がなく、中央の大陸にも近づけない。それというのも島からある一定の範囲に結界があるらしく。それ以上先に進もうとしても戻ってきてしまうというミラクルが起こるらしい。
だったら何故他の島があるのかわかるのかというと、普段はその場から動かない島が大陸に向かって進む事があるらしい。というか今現在進んでいるらしい。
そしてこれが私達がこの世界に召喚された理由でもある。
大陸に向かう島は人族の島だけでなく7つ全ての島が大陸に向かう。そして全ての島が大陸に着いたとき大陸を巡ってのゲームが始まるらしい。
ゲームと言ってもいくつかのルールが決まっているだけでぶっちゃけ種族間同士の戦争だ。
まず、それぞれの種族から代表者を一名選出する。
次に大陸が8つに結界によって仕切られる。分け方としてはまず大陸の中央部が丸く仕切られる。そして円の外側を同じ大きさで七等分に仕切られる。最初はこの仕切られた一つの区画がそれぞれの種族の領土になる。
次に中央の区画に代表者が集まって挨拶をするらしい。どうしてそんな事をするのかは謎らしい。ただ、大陸に上陸してから少したつと代表者にメッセージが届くらしくこれを無視すると代表者としての資格を失うそうだ。なので、どの種族の代表者も嫌々参加する。
その後は準備期間になるみたいだ。その間一切の戦闘行為処が禁止される。といっても仕切られた区画は島を覆う結界と同じで区画から出ようとしても出れないらしいけど。
この準備期間はまちまちで最低でも一年はあるらしい。
後は、開始の合図と共に結界が消えて戦争開始となる。その後はルールなんて一切無し。ただし開始からこれまた不定期に休戦期間がもうけられる。この間は最初の準備期間と同じで一切の戦闘行為が禁止になるが、最初と違い何処かの種族の代表者を倒していれば、倒した種族の区画も自分達の領土とできるらしい。
後はあらゆる手段を使って別の種族の代表者を倒して最後に残った代表者が支配者となる。
「つまり、その戦争に勝利するために私達を呼んだってこと?」
「そうなります」
「随分と勝手なんですね?私達に関係の無い戦争に無理やり参加させようとするなんて」
私はあえて相手を挑発するような言動と態度を取る。しかし私の態度に不快感をだしつつも誰も何も言ってこない。
「おっしゃられる事は最もですが、どうか我々に手を貸していただきたいのです。支配者となった種族には他の種族は逆らえないのです。もし負けてしまえば我々は他の種族の奴隷になり地獄のような目にあわされるでしょう」
「だから?先程も言いましたけど私達には関係の無いことです」
ハゲの老人の懇願をあっさりと一刀両断して断る私。しかしそれでもなお誰も何も言ってこない。
私の明確な拒否に言葉を詰まらせるハゲに変わって国王が口を開く。
「主の言っていることも最もだ。なのでこちらとしてもできうる限りそちらの要望に答えよう。望みのものがあればこちらもできうる限り用意させる。どうだろう?」
国王の言葉に先程まで戦争に参加させられると聞いて不安がっていた他の三人が少しなびく。
この娘達危機感が薄いのかな?それで死んだら意味がないでしょう。命あっての物種でしょうに。
「そう言われましても、私達、いえ少なくとも私は平和な世界からやって来ました。録に戦ったこともない私が戦力になるとは思えませんが?」
私の言葉にハッと現実を見る他の三人。そしてまた、不安そうにする彼女達。まぁ、恐らくは何かしらの能力は彼女達も持っているでしょうけど。
「それについては心配無用だ。異世界から召喚された君達はこの世界の者達より優れた力を与えられている筈だ。確認してみてくれ。自分を知りたいと思いながらステータスと唱えればよい」
国王の言葉に半信半疑ながらも唱える三人。私も唱えるが数値だけは既に一度見ていたので意識は別の事を考えていた。
「恐らく君達はLv1の筈だ。そしてこの世界ではLv1の人族の平均ステータスは体力と魔力が50前後、他はだいたい10前後だ。どうだろう?」
国王の言葉を聞いて自分のステータスがかなり優れているのがわかったらしい彼女達は少し興奮しだしていた。
「あれを彼女達に」
国王に促され第一王子が一枚のプレートを私達に配る。その間に私達の前に台座に乗った大きな水晶玉が運ばれてくる。
配られたプレートと水晶玉を不思議そうに見る私達に第一王子が説明をする。
「まず、針で軽く血を出してもらい、一~二滴ほどプレートに垂らしてもらいます。その後水晶に手を触れながら登録と言ってください。すると皆様のステータスが水晶とプレートに登録されます。このプレートは皆様の身分証になりますので必ず持ち歩いてください」
王子の説明後一人一人登録することとなった。今回は私は一番最後にする。何故なら他の三人のステータスを先に確認しなければならないからだ。
最初の一人は黒髪を肩口辺りで切り揃えた短髪の娘。
名前 加藤 李奈 Lv1 職業 剣士
体力 300
攻撃力 450
防御力 300
速度 250
器用 100
魔力 300
耐性 火50 水50 風50 土50 光50 闇50
『スキル』
[言語理解] [切り裂く者] [剣の才能] [魔法剣の才能] [見切り] [召喚者+α]
『魔法』
魔法剣Lv1
次に黒髪を今度は腰まで伸ばした娘。
名前 坂東 弘美 Lv1 職業 回復師
体力 150
攻撃力 100
防御力 200
速度 100
器用 300
魔力 500
耐性 火50 水100 風100 土50 光150 闇50
『スキル』
[言語理解] [癒す者] [治癒の才能] [回復魔法の才能] [薬学者] [水魔法の才能] [風魔法の才能] [光魔法の才能] [召喚者+α]
『魔法』
[水魔法Lv1] [風魔法Lv1] [光魔法Lv1] [下級回復魔法] [状態異常回復魔法Lv1]
最後に髪を茶髪に染めた少し派手めな娘。
名前 水島 明子 Lv1 職業 魔術師
体力 150
攻撃力 350
防御力 150
速度 150
器用 100
魔力 300
耐性 火150 水50 風50 土50 光50 闇100
『スキル』
[言語理解] [魔導の探求者] [魔術の才能] [全属性魔法の才能] [高速詠唱] [召喚者+α]
『魔法』
[火魔法Lv1] [水魔法Lv1] [風魔法Lv1] [土魔法Lv1] [光魔法Lv1] [闇魔法Lv1] [下級回復魔法]
一人のステータスが浮かび上がるたびに周りの人達から驚愕する声が上がる。まぁ当然だろう。先程国王が言った言葉が本当なら全員が全ステータスがこの世界の平均より余裕で倍以上あるのだから。
にしても、彼女達のステータスを見て私はやっぱりと思う。
私のステータスは異常だ。あの自称神は一体何を考えているんだ?まぁ、ある程度予想はつくけど。
三人目が終わり最後は私の番となる。やりたくはないけど、覚悟を決めていざ!
私は緊張しながら出てくるステータスを見る。
名前 橘 零 Lv1 職業 片手剣士
体力 600
攻撃力 200
防御力 700
速度 300
器用 300
魔力 100
耐性 火200 水200 風200 土200 光200 闇200
『スキル』
[言語理解] [守護者] [守の才能] [反撃の才能] [全異常耐性] [召喚者+α]
私のステータスが浮かび上がるとこれまでより一際大きな声が上がる。なんせ単純なステータスだけなら私が一番だからね。当然といえば当然だろう。
とはいえ、これでも抑えれるだけ抑えた結果なんだけどね。
そう思いながら私は左手に着けてる腕輪を見る。
【偽装の腕輪】
その名の通りステータスを偽装する事ができる腕輪。また、少しではあるが見た目も変化できる。
かなり高位の心眼の持ち主等でないと見破れない。
私はここに来る前に周りに気付かれないようにアイテムボックスからこれを取り出していた。
ステータスと唱えればステータスが出るのなら、アイテムボックスと唱えれば使えると思って試してみれば案の定使えた。
とはいえ、このアイテムが通じるかどうかはわからなかったし、そもそも使えるかどうかもわからなかったのでかなり緊張したけど。でもこれで、ゲームから持ち込んだ武具やアイテムも使えることは確認できた。
「うむ、さすがのステータスだ。予想以上と言えよう」
っ!国王が私達のステータスを褒めだした。考え事は後にしないとろくなことにならなさそう。他の三人は褒められて満更でもなさそうだし。使えない。
「確かに、私達がこの世界の方々の平均より優れているのはわかりました。しかし、それはあくまで平均なのでは?この世界の一部の方々には私達と同じくらいの強さを持った方もいらっしゃるのでは?」
私の言葉に流石に国王や王の周りの方々は何の反応も示さないけど、王子や貴族達は僅かに反応した。
これなら国王もそんな事はないとは言えないだろう。
実際、少しだけ国王の表情が動いた。
「その通りだ。一部の英雄とも呼ばれる者達は確かに君達に近い力を持っている。しかしそんな者達はほんの一握りの数しかいないのだ。故に君達にも力を貸してもらいたいのだ」
「それは、人族が7つの種族で最弱だからですか?」
王の頼みに即座に私が返した言葉でこの場の空気が凍る。
他の三人は何の事かわかってないみたいだけど、ほんの少し考えればわかることだ。
そもそも、このての物語で人族が最弱なのはよくあることだ。ましてや一握りとは言え英雄なんて呼ばれている存在がいるのに、異世界から召喚するなんて方法を選択している時点で数が足りていないということだろう。なら理由なんて限られてくる。
国王はほんの少し、よほど注意して見ていなければ気付かないようなため息をついた。
「その通りだ。我等人族は他の種族よりも弱い」
国王の言葉に再びざわめきだす周囲を無視して私は更に質問をする。
「具体的にはどのくらいでしょうか?」
「正確な事はわからないが、一番我等に近い種族の平均は体力と魔力が200前後、他は100前後はある」
「えっ!?」
「嘘っ」
「そんな」
さすがに他の三人にも事態の深刻さが理解できたらしい。種族としてのスペックの差が大きすぎる。
召喚者としての彼女達のステータスは確かに人族の中では最高クラスだろう。けど、別の種族と比べてみればその差は無いに等しい。それどころか王はさっき一番近い種族と言った。つまりは他の種族なら平均で彼女達より強い種族もいるということ、絶望的だろう。
「いや、悲観するのは待ってほしい。確かに種族としての力の差はあるが君達召喚者はそれを覆せるスキルを持っている」
「それは、この[召喚者+α]というのでしょうか?」
私の言葉に頷く王。
「それは、成長に補正が効くスキルで、早く成長することができる上に、順調に成長すれば当初の差など超越することができる」
「私達が成長できる時間はあるんですね?」
「当然だ。まず、島の移動に三年はかかる。そして大陸に着いてからの準備期間で一年、合わせて四年ほどの時間はある」
「最後に、私達を送り返すことはできますか?」
私の言葉に首を横に振る王。
「わかりました。私としては出来る限りの事はしましょう」
私の宣言に少しだけ緩まる空気。
こころなしか王もホッとしているようだ。その王の視線が私以外の召喚者達に向く。
その視線に迷いを見せるも彼女達もそうするしかないと理解はしているのだろう。各々了承した。
「では最後に、君達の手助けをする者として我が子を一人一人つけよう。さて、誰が良いか、希望はあるかね?」
国王のその言葉に私は咄嗟に、何のまよいもなく、思わず。
「なら私はエリティア様で!」
「「えっ?」」
「えっ?」
まず、国王とエリティア様が私の急な態度の変化と剣幕に驚き、その驚きで私も正気を取り戻す。
しかし、一度言った言葉は取り消せない。取り消すきもないけど。
「えっと、私でよろしければ、私の方は問題ありませんが」
「そうか、なら橘殿はエリティアに任せよう。しっかりな」
「はい。陛下。橘様、これからよろしくお願い致します」
「あ、はい。こちらこそよろしくお願い致します」
エリティア様に向けられる笑顔に呆けそうになる意識を叱咤して何とか返事を返す。ほんと、どうした私!
その後、李奈さんには第一王子が、明子さんに第二王子が、弘美さんに第三王子がつくことに決まった。
こうして私達召喚者の御披露目は終わった。
島の名前は適当です。意味なんてありません。