プロローグ
初投稿。
目を開けていられないほど眩しい光が収まってきて少しずつ目を開けると、視界にうつるのは騎士や魔術師といったいかにもな格好をした連中と、そいつらの中心にいて守られている四人の偉そうな(実際に偉いのだろうけど)やつらと、私の近くにいて恐らくは私と同じ立場の三人の娘達。
騎士や魔術師達それと偉そうな四人は、口々に「やった!成功だ!」や「おめでとうございます!」等近くにいる仲間同士で喜びあったり、偉そうな四人に祝いの言葉をかけたりしているのに対して私の近くの三人は差はあれどある程度困惑しているところを見ると、やはり私と同じ立場なのだろう。服装も向こうはコスプレみたいなのに対してこちらは私も含めて全員学生服みたいだし。
しかし私は他の三人ほど困惑していなかった。というより私としてはどうして他の三人がこれほど困惑しているのかが解らなかった。
でも、それとは別に私自身一度現状を整理したいので、こうなる前までのことを回想しよう。
私の名前は橘 零今年で26歳のOLだ。これといって特徴なし。容姿平凡で頭のできも普通、運動神経は平凡より少し下。趣味はアニメ観賞に小説や漫画の読書にゲームと、まぁいわゆるオタクだ。
そんな私が何時ものように会社に向おうと玄関を開けたら
何故かあたり一面真っ白な空間にいました。
「はっ?」
あまりにも唐突な出来事に脳が一瞬フリーズしてしまったのも仕方ないことだろう。むしろ取り乱さなかった自分を誉めてやりたい。しかし、そんな私を無視して事態はさらに進んでいく。
気付けば目の前に美人が一人立っていた。
「っ!?」
もはや声を上げる余裕さえないほど驚く私を不思議そうに観察する美人。その姿から相手に私を驚かす気が無かったことを感じた私もとりあえず相手を観察する。
恐らく十人が見たら十人とも美人と判断するだろう顔と服の上からでも嫌でもわかる巨乳と判断できる胸。そこまで見た瞬間思わず
「ちっ!」
舌打ちしてしまった。しかし、これは仕方ない。平凡な顔と手を当ててようやく膨らみを感じる胸。その真逆を見せられて嫉妬するなというほうが無理だろう?
しかし美人はそう思わないらしく。驚き、話しかけてきた。
「えっ?何か今、身に覚えの無いことで舌打ちされた気がするんだけど?」
「・・・別に、気のせいです。それよりここは何処で、貴女は誰ですか?」
私の舌打ちに驚いた美人が話しかけてきたのを、これ幸いと気になっていたことを尋ねた。
「そうだねぇ、ここは特殊な空間で、私は神です」
「はっ?」
またもや、脳が一瞬フリーズする。しかし今度もまた仕方ない。
かみ、かみかぁ。紙じゃないよね~。髪でもないよねぇ~。てことは神なんだろうなぁ~。
よし!つまり現状私は、頭のおかしな奴に誘拐されたと。そういうこと?
「頭のおかしな奴って、貴女なかなか失礼ね」
っ!?今、思考を読まれた?
「ええ、神ですから。このくらいできて当然ね」
「・・・つまり覗き魔?」
「誰がよ!!」
「だって、人の思考を読むとか、プライバシーの侵害ってレベルじゃないと思うんだけど」
「別に四六時中人の頭の中覗いてないわよ」
「今、覗いてるって言った。つまり自覚あり?」
「だから違うって言ってるでしょ‼貴女、私が神だってわかってる?」
「それは・・・」
確かに彼女が普通じゃないのはわかる。私が気づかないうちにこんな所に連れてきたり、思考を読んだり。普通じゃないのはわかる。でも
「正直、人にしか見えない」
「うっ」
向こうも自覚はあるのか気まずそうにする。
彼女は確かに人並外れた美人だし、まとう雰囲気も何処か普通じゃない。でも、それ以外は何処からどう見ても人にしか見えない。
「はぁ、それについては仕方ないのよ。こっちにも事情があるんだから。そもそもおかしいのは貴女の方なのよ」
? 私に自称神なんて人におかしい人呼ばわりされるところなんてないはず。
「自称って、貴女ねぇ。普通なら私の姿を見ることなんてできないはずなのに、見えるどころか意識がしっかりしていて話すことすらできるなんて。充分おかしいわよ」
え~と?つまり本来なら見えない彼女が見えることが異常ってこと?あ、そもそも意識がしっかりしてる時点で異常なの?もしかして、彼女が最初に不思議そうに私を見てたのってそれが理由?
「そうよ、まぁそれはいいわ。そんな事よりさっさと本題を終わらせましょう」
「やっぱり、私に何かするかさせるの?」
何の理由もなしに人をこんな所に連れて来たりはしないでしょうね。
「ええ。貴女には異世界に行ってもらうわ。その世界の人間に召喚されてね」
「・・・」
「あら?今度は驚かないのね?」
「まぁ、展開としてはありがちな展開だからね。どうせ拒否権なんてないんでしょ?」
私の言葉に微笑む自称神。
「なら、せいぜいオタクとして現状を楽しむだけよ」
「ふーん。それなら話が早くていいわ。せっかく意識があるんだし何か要望はある?向こうで使う体とか能力とかで」
「ん?体?」
能力はわかる。召喚とか言ってたし、きっと向こうは剣と魔法のファンタジーな世界なんだろう。
しかし体とはどういうこと?
「ああ、そうね簡単に説明するなら此方の世界から向こうの世界に航るとき一度貴女の体を粉々にして向こうの世界で再構築するの。だから例えば体の一部分を大きくしたりできるわけ」
喧嘩売ってるんだろうかこの自称神は?
「しかも粉々って、私一度死ぬってこと?」
「んー、人の感覚でいえばそうかしら?まぁ大丈夫よちゃんと向こうの世界で再構築できるから。痛みとかもないし」
「そもそも体を粉々にする必要あるの?」
「そうね、なんて説明したらいいのかしら?これも簡単に説明すると世界には横の繋がりと縦の繋がりがあるの。例えば、この世界みたいに科学が進歩した世界が横の繋がり、逆に魔法みたいな科学以外が進歩した世界が縦の繋がり、ここまではいい?」
「ええ。大丈夫」
「なら続けるわ。それで、同じ科学が進歩した横の繋がりの世界間での移動なら体を粉々にする必要は無いわ。逆に縦の世界間での移動する場合体を粉々にする必要があるの。OK?」
「んーつまり、オンラインゲームのコインみたいな物?同じ会社のゲームどうしならそのまま使えるけど、別の会社のゲームで使う場合は、一度現金に戻さないと使えないみたいな?」
「まぁ、そんな感じね。横の移動は比較的簡単なんだけど、縦の移動は難しいの。特に魂が肉体に依存する存在の場合移動中にまず確実に肉体が壊れてそれに魂が引っ張られてそのまま魂も壊れるわ。だから、最初から肉体をこわして魂の保護をしてから移動させるの。後は、移動後肉体を再構築して完了」
「なるほど、そういえば異世界召喚とかってチート化が基本だけど私の場合どうなの?」
「ああ、強化されるわよ。さっきも言った魂の保護だけれど、これが異世界で再構築される時に魂の強化をおこなうの。それが肉体にも影響を与えるわ」
「それって、体の影響に魂が引っ張られるってやつ?」
「そんなもの。病は気からってやつ」
まぁ、とりあえずチート化がされるなら良しって思っとこう。
んー、にしても容姿に能力ねぇ?どうしようかな。
「あっ!?なら私がオンラインゲームで使ってたキャラになれたりする!?」
「ん?そうねぇ、貴女の記憶から再現するのは可能よ。当然その為に貴女の記憶を見る必要があるけど、いいのかしら?」
「ええ、良いわよ。どうせ隠せることなんてないんでしょうし」
「なら、遠慮なく」
そう言って目をつむる自称神。
その姿を固唾を飲んで見守る私。
そして、おもむろに目を開けた自称神の前に私の望んだ存在が現れた。
「おお!」
「その反応からしてこれで良いのかしら?」
「ええ!完璧よ!」
喜びのあまり年甲斐もなくはしゃぎながら目の前に新たに現れた美少女を観察する。
自称神が作った美少女は確かに私がオンラインゲームで使っていたキャラだった。
「姿はそれでいいとして、能力はどうする?」
「できればそのままのステータスやスキル構成でいきたいのだけれど。あと武具とかも一緒に。というかできればゲームで使えてた機能とか全てコピーしてほしい。駄目かしら」
「別に構わないわよ。なら大半はそのままで良いわね、ただステータスは今のままじゃ弱いから強化するわよ。」
「えっ!?弱いの?」
「ええ、いまから貴女が向かう世界は現実よ?少なくともレベルやステータスにカンストなんて無いもの」
自称神に自分が使ってたゲームキャラが弱いと言われて結構ショックを受けたけど、それも理由を聞けば納得ね。
確かに私がはまってたオンラインゲームではLv100が上限でステータスもそれ以上上がらない。けど、現実にLvの上限があるわけない、いや、もしかしたらあるのかもしれないけど100って決まってる訳じゃないか。
「なら、どれくらい上げれるの?」
「そうねぇ、そのままコピーするってだけで思っていた以上に大変なのよね。あまり、過度な干渉はできないからそこまで上げれ、ん?」
「どうかした?」
「経験値が妙に貯まっているのだけれどこれは?」
「ああ、不思議とレベルが上限まで上がった後も何故か貯まっていたの」
まぁ、もしかしたらレベルの上限が上がるか、経験値を使った何かしらの能力が追加される予定だったのかもしれないけど、今の私には不要なものね。
「なら、この経験値分数値を上げるわ、それでいい?」
「ええ、どうせ使い道無いものだし」
「なら、そうしてっと。他になにか聞きたいこととかある?」
「私が召喚される世界や国について教えてもらえる?」
「ごめんなさい、それはできないわ。向こうのことは向こうで知るしかないの。私が教えることはできないわ。」
「そう。なら私はこちらに戻ってこれるの?」
「一応、可能性はあるわ。それと貴女は今回のことで召喚に対して耐性がついたから今回みたいにいきなり召喚されたりすることはなくなるわ」
「それって、自分の意思で召喚を受け入れるか拒否するか選べるってこと?」
「そう。他に聴きたいことは?」
んー?もう、無いかな?思いつかないし。後は出たとこ勝負といきましょう。
「大丈夫」
「そう。なら、行ってらっしゃい。貴女の今後に幸多からんことを」
自称神がそう言った瞬間。私の視界は真っ白に塗り潰された。
そうして冒頭に戻るっと。
さて、今だに話を聞けそうにない連中はほっといて、私はもう一度召喚された他の三人を見る。
一度整理したおかげで三人が私より困惑してる理由がわかった。私の場合自称神とやらに一応とはいえ召喚されるって聞いていたがこの娘達はたぶん聞いていないからだろう。自称神も普通は話なんてできないって言ってたしね。
でも、どうして全員女性なのか?
普通こういう話だと勇者役の男性がいるはず。それとも女性勇者がこの世界だと普通なのか?もしくは全員聖女役とか?
聖女、私が聖女。・・・ないわ~。まぁこの事は考えても仕方ないからおいとこう。
何故学生服なのかも意味不明。他の三人はまだ学校にいるときとかに呼び出されたとかで説明つくけど、私は呼び出されたとき普通にスーツだった。なら、この服はあの自称神の趣味?
んー?わからん。これもおいとこう。
それにしても、三人とも明らかに私より若い。いや、私も多分見た目的には三人と変わらない歳に見えるはず。それに彼女達も私と同じで若返って召喚されている可能性もあるし、うん。若さに嫉妬なんてしていない。していないったらしていない。
なんて、私が考えてるまに状況が変化した。
「皆、落ち着きなさい!彼女達が困っています!」
偉そうな四人の内で一人だけ女性の方があちら側の混乱を抑え始めた。
「そうだな。これから王に召喚成功の報告に向かう。誰か先に報告してきてくれ」
今度は四人の内一番背の高い男性が周りの騎士に命じる。それに答えて慌ててこの場から出ていく。
そして四人全員で私達の方に向かってくる。
「申し訳ありません。お見苦しい所を見せてしまいました。私はラグル・フォン・シュレイズス。この国の第一王子です」
先ほどと同じ背の高い男性が私達に向かってそう挨拶する。王子という言葉に召喚組の他三人が反応する。まぁ、リアル王子なんて普通出会える存在じゃないものねぇ。
「皆様混乱していると思いますがまずは我々について来てください。そこでご説明させていただきます」
その言葉に素直に頷く私達。何というかこれぞカリスマって感じ。容姿が優れているのもあるのでしょうけど、不思議と惹かれてしまう。逆らう気もおきない、まぁまだ逆らう気なんて無いけど。
そのまま第一王子を含む四人の後をついて行く私達。その周りを囲む騎士達。
たぶん、護衛と監視かな?まぁそれはいいそんな事よりも確認しないといけないことがある。
私は心の中でステータスと言ってみる。しかし何もおきない。次は周りに気付かれないように小声で言ってみる。
「ステータス」
すると望んだものがでてきた。
名前 橘 零 Lv1 職業聖重厚騎士
体力 10,000
攻撃力 10,000
防御力 100,000
速度 100,000
器用 100,000
魔力 10,000
耐性 炎1,000 氷1,000 嵐1,000 岩1,000
聖光10,000 暗闇100
「えっ!?」
示された数値に思わず声を上げてしまう。そんな私に集まる視線の数々。
「すみません!見慣れないものばかりだったもので、驚いてしまって」
私は咄嗟に言い訳を言う。実際見慣れないものばかりだし、それは他の三人も同じようで、あたりを見回していたから疑われないはず。
「ああ、そうですか。よろしければ後で案内させていただくので、今はこちらを優先していただいても?」
「はい、すみません」
そうして移動を再開する私達。
しかし、私の頭の中ではさっき見た数値のことで一杯だった。
確かに自称神は強化すると言っていた。しかしいくらなんでも強化し過ぎだ。それともこの世界だとこれが普通なのか?それにLv1になってる理由は?ああ駄目だ、考えることが多すぎる。
とりあえず、念のために私はステータスとは別の言葉を口にする。
「王子方並びに勇者様方ご入場!」
王子達に連れられてひときわ大きい扉の前に着いた私達。第一王子が扉の前に立っている騎士に頷くと先程の言葉と共に扉が開いていく。
驚いたことに人の手で開ける扉じゃないらしい。
そして扉が開ききってから歩みを再開させる王子達の後を私達がついて行く。
私達が行く先の前には玉座に座る国王その横に何名かの女性と男性。恐らくは王妃や宰相等だろう。
私達が歩く通路の左右には恐らくこの国の貴族達だろう人達が多数。それらが私達を見ている。
大抵の視線は興味か品定めするかのような視線。他は疑惑や邪な視線等、まぁ気分の良い視線が一つも無いわね。
王様の前に着くまでに周りを観察した限り、この国は信用できないって感想だけど。まずは王様と話してみないと断定はできないか。
王の前に着いたら王子達が膝跪く。咄嗟のことで反応できない私達だが、周りは何も言ってこない。
このての展開だと王を前に無礼だとか言ってくると思ったんだけどなぁ。
王の見た目は綺麗な金髪に整った顔。恐らく50はいってるだろうに鍛えられた体は今だ現役だと感じさせる。ダンディなおじ様な感じ。
なんて、不躾にならない程度に王を観察していたら
「初めまして勇者の方々よ。私はヘルド・フォン・シュレイズス。この国の国王だ」
驚いたことに王自ら自己紹介してきた。しかし他の三人はどうしたらいいのかわからないらしくオドオドしている。
これはまずい。先程の王子の場合は相手が急いでいたからこちらが名のらなくても良い雰囲気だったけど、
今回は国王自ら先に自己紹介してこちらの返答を待っている。それに何も返さないのは印象が悪すぎる。仕方ない、あまり目立ちたくないけど。多分私が中身では一番の年長者だろうし。
他の三人より一歩前に出る。そんな私を真面目な顔でしかしその視線は面白そうにだと語る国王。
ああ、この国王はめんどくさい相手だと確信した。
「初めまして。私は橘 零と言います。色々とお聞きしたいこはありますが、まずは他の人達の挨拶がすんでからお聞きします」
「うむ。そうしよう。ああ、そうだそちらの挨拶の前に君達をここまで案内した我が子達の挨拶を先にするべきだな」
白々しい。既に僅かとはいえ挨拶が済んでいる王子達がいるのに国王が自ら先に自己紹介するなんて嫌がらせとしか思えない。まぁ、こちらを試す意味合いもあるのでしょうけど。
国王に視線で促され王子達が挨拶を行う。
「私は先程も挨拶しましたが、もう一度させていただきます。第一王子ラグル・フォン・シュレイズスと申します」
「私は第二王子ダカテル・フォン・シュレイズスと申します」
「私は第三王子カルダト・フォン・シュレイズスと申します」
王子達の自己紹介をBGMに私は周りの観察を行う。
その結果感じるのは不信感だ。私達は国王を前にしても膝跪かなかった。なのに王の周りにいる人達も通路の左右にいる貴族達も何も言わなかったし騒がなかった。それ以外にも私達が気づいてないだけで礼を欠いた行動をいくつかしているはずだ。にも関わらず何も言ってこない処か、私達に向けられる視線にも変化がない。
まるでそんな事は当たり前といった感じだ。
この国はもしかしなくても慣れてる。私達みたいなのを相手するのに。
「最後に、エリティア」
「はい」
おっと、周りを観察してるまに残りは王女の挨拶のみみたいだ。王子達の挨拶全く聞いてなかった。名前以外にもなにか言ってた気がするけど、名前と顔が一致すればいいよね。
にしても、どうしたんだろ私?
王子達は皆外見は良い。王譲りの金髪に整った顔立ち。女性なら好意を抱いてもおかしくないはず。実際他の三人は王子に釘付け。私にしても、実際に付き合うとかは無しにしても、もっと興味を持ってもおかしくない筈なのに。全く興味が湧かない。
んー?まぁ、いいか。気にするほどのことでもないし。そう思って初めて王女をしっかりと見た瞬間
「っ!?」
言い様のない電流が駆け巡った!
「私はエリティア・フォン・シュレイズスと申します以後よろしくお願い致します」
先程までの王子達と違い意識の全てを彼女に向ける。というより彼女から意識を外せない。
王や王子達と同じ綺麗な金髪、整った顔達に鋭く強い意思を感じさせる瞳。
ほっそりとした体つきながらも出るところはしっかり出ていて、美しい。
本当に美しいと表現するしかないほどの美少女。
思わず
ハッ!?
えっ?いや、いやいや待て待て私!!相手女の子だよ!確かに美少女だけど!私と同じ女!雌!
なのに、この感情は・・・
何なんだー!!