3 龍族最強
この世界に魔物として、スライムとして生まれてから二か月の月日が経った。
クロの持つステータスもあれから追加で『敏』と『魔防』のコピーが終わり、また全てのスキルのコピーが終わった。
どうやらレベルを上げることで、妨害されていたステータスのコピーがある程度緩和され一部コピーできるようになった。
最近は極端に増えたステータスとスキルを使いこなす鍛錬をしており、それももある程度までは終わった。
時間はたっぷりあるのだからもうちょっとゆっくりでもいいかなと思い始めてきたこの頃であった。
―――――だが・・・・・
「ゲホッ、ガ八ッ!!」
「お、おい!大丈夫かッ!?」
「あ、ああ・・・流石に大丈夫ではないがの・・・」
「突然血を吐くなんて、一体どうしたんだよ・・・」
「フフ・・・これはただの龍族の寿命じゃよ・・・」
「は・・・?マ、マジなのかよ・・・?」
「マジじゃよ・・・ゴホッ!ガハッ!」
「な、なんで突然なんだよ・・・昨日は滅茶苦茶元気だったじゃねえか・・・なのになんで・・・」
「フフッ・・・前々から決めていた・・・お前に対する最後の授業を始めるかの・・・最後は龍の生態についてじゃ・・・ゴホッ!・・・龍というのはな・・・通常は例えどんなに親しくなった者でも誰にも寿命を教えず、寿命の前日まで一緒に過ごし・・・そして最後は自分の生まれ故郷に帰ってきて自分の最期を迎えるのじゃよ・・・ゲホッ!」
「じ、じゃあ・・・俺が生まれて間もなかったときに此処へ戻ってきたのは・・・」
「そうじゃ・・・妾の寿命の丁度前日じゃったのじゃ・・・」
「で、でもあれから、少なくとも二ヶ月は経ってるじゃねえか・・・なんで今更死にそうになってんだよ・・・」
「さ、さあ・・・?それは妾にもついぞわからんかったわ・・・ゴホッ!ゲホッ!・・・あとは妾が今死ぬのはのう・・・お前が妾を超える力を手にし、そしてその力をある程度使いこなしたからじゃ・・・」
「ッ!・・・そうか・・・」
「フフッ・・・物分かりが良くて大変よろしい・・・ッ!ゴホッ!ゴホッ!ゴハッ!」
「お、おい!大丈夫・・・なわけないよな・・・」
「フフフ・・・そうじゃのう・・・・・・そうじゃ」
「なんだ?何かあるのか?」
「妾の最期じゃ。お前に名をやろう・・・前もって考えておいたんじゃ・・・」
「お前の名は、『フィーニ』じゃ。その名に恥じぬよう生きるのじゃ・・・」
「ああ・・・精一杯生きてやるよ!」
《個体名・なしの種族名・スライムが名を与えられ個体名を獲得、種族名・スライムは個体名・フィーニで固定されました》
《名を得たことによりこれよりネームドモンスターへと進化致します。》
《進化すると暫くの間動くことが出来ません。安全を確保するため進化を後にすることも可能です。》
勿論進化は後回しだ。
「あとはのう・・・」
「まだあるのかよ・・・」
「妾が死んだらその亡骸はフィーニが《喰ラウ者》を使って喰っておくれ」
「は、はあ!?い、嫌だ!俺はクロを喰いたくはない!」
「お願いじゃ・・・妾の最期の願いじゃぞ・・・?この体を死んだ後でも人間なんぞに使われたくはないのじゃ・・・」
「・・・・・・・・・・・・・ッ!・・・・・・・・・・・・わかった」
「フフッ・・・それでこそ妾の息子よ。・・・ああ・・・もうお別れのようじゃ・・・」
「ッ!そうか・・・・・・」
「そう悲しむでない・・・妾は常に見守っておるからの・・・多分じゃが」
「ハハッ!そこで多分って言うなよ!・・・じゃあな」
「うむ。元気に暮らすのじゃぞ!」
―――――そうして、一匹の魔物が見守る中・・・最強の龍は息絶えた・・・