三人目の愛
「しのちゃん!昨日はありがとうね!」
「こちらこそ。家で寝ちゃってすみません。」
「いいよーいいよ!また、飲もうよ!」
「遠慮しときます。いでっ」
「そこは、よろしくお願いします。でしょ。」
「なつみさん、いつからいたんですか。だからってはたかなくたっていいのに。」
「今来たのよー。久保おはよ。」
「なつみさん、おはようございますっ!」
「今日も元気ね。」
「久保さんは何時でも元気ですよ。どんなときでも。」
「あ、じゃあ、私そろそろ戻らなきゃ!それじゃ、失礼しましたー!」
「はーい。」
「とっても失礼でしたー。いでっ」
「あんた、本当に少し気をつけなさい。」
「わざと言ってるんですよ。」
「それをやめなさいって言ってるの。」
「はーい。」
「また、気のない返事を…」
「久保さん、今日は誰誘うんですかね。」
「あんたも、昨日聞かれたの?」
「愛ですか?」
「そうそう。それ。」
「思いっきり聞かれましたね。」
「何て答えたの。」
「思っていることをそのまま。」
「そう。」
「はい。」
「なつみさんも聞かれたんですね。久保さん言ってました。」
「げ、内容喋ったの?」
「いいえ。ただ、その話をしたってだけ。」
「良かった。あんな話聞かれたら私飛び降りちゃう。」
「そんな恥ずかしい話したんですか?」
「いや。覚えてないんだよね。」
「ならいいじゃないですか。たいした話してないんですよ、きっと。」
「覚えてないから怖いのよ!まあ、篠原の言うとおりだといいんだけどね。」
「あー疲れた。」
「そろそろ上がる?」
「そうですね。私は今日はこれで終わりにします。」
「私も帰ろっと。」
「それじゃ、お疲れさまでーす。」
「お疲れ。」
全く、変な話をするもんだ。久保さん。愛って何?そんなのこっちが知りたいっつーの。
だいたい、ああいうタイプの人は愛だのなんだの簡単に口にするから気に食わない。
感情を言葉にするのは本当に難しいことだと思うし。
それを、簡単に人に恥ずかしがることもなく聞くのも理解不能。
って、一人で人の悪口言ってる私も変か。
口に出してないだけいいと思うけど。
あれ、あれって久保さんじゃない?
そう、絶対そうだ。
って、自問自答かい。
久保さんやっぱり彼氏いたんだ。
しかも、結構なイケメン。
流石久保さんってとこか。
なんか、腹立ってきた。
あーあ、家に帰ってねよ。
「高田君!どうしたの?」
「いや、なんかそこにいた人に見られていたような気がして。」
「気のせいだよ。」
「だよな。」
「で、高田君はどう思う?」
「え?なにが?」
「だーかーら!愛だよあーい!」
「愛ねえ。どうしてそんなこと知りたいわけ?」
「どうしても。」
「あっそ。」
高田もよくわからない。
なぜ私と一緒にいるのか。
別にどちらから付き合おうなどと言ったわけではない。
自然と気付いたら隣にいたのだ。
それから普段はずっと一緒にいる。
どちらも愛の言葉などをかけたことはない。
愛してるよ。好きだよ。ずっと一緒にいよう。幸せにする。・・・・・・・
そんな言葉本当に好きな人からは一度も聞いたことがなかった。
でも・・・・・
「教えてくれないの?」
「いやー、教えないわけじゃないけどさ。なんていうか…」
「よくわからない?」
「うん。そういうこと。」
「とにかくさ、少し考えたことでもいいの!教えて?」
「うん。夜な。」
「はーい。」
この人といると落ち着くのだ。
何も気を遣わなくてもいい。
いや、遣おうとせずとも自然と行動できるのだ。
安心できる。
だから、特別な言葉なんていらない。
ただ、隣にいてくれればそれでいい。
「で、そろそろ教えてよー!」
「ん?」
「ん?じゃなくて!」
「ああ、なんだっけ、愛について?」
「そうそう!」
「んー、俺にとっての愛はね。」
「うん。」
「愛、それは愛すること!」
「は?そのままじゃん!」
「だってそうじゃん?」
「もー!もう少しちゃんと答えてよ!!」
「しょうがないなー。」
「真面目に聞きますからっ!」
「はいはい。」
俺にとって愛は、隣に人がいるということ。
つまり、大切な人がいればその人に持つ感情が愛。
だから、俺にとっては愛は一つとかじゃない。
友への愛。親への愛。兄弟への愛。・・・・・後はお前かな・・・
とにかく、大切な人がいてその人に特別な感情を持つ。イコール愛を持つ。
別に、そんなに深く考えるものじゃないと思う。
ああ、これが愛か。ふと感じることあると思う。
やっぱり、感情というものを頭で考えるのはよろしくない。
心だもん。まあ、心も脳によってなるものだけど…
なんだろ、頭じゃなくて心。そんな感じ伝わるかな?
てか、なんでお前がそんなこと知りたいのかがわかんねーんだよ。
だってさ、一番愛情をもらって育ってそうじゃん。
そう見える。
なんだろ、何時も幸せそうでさ。
ずーとにこにこしてるの。
それ見てると俺までにやけてくるから不思議だよな。
愛してる。
ってこのことをいうんだなって。そんとき気付いたわ。
恥ずかしっ。今までそんなこと言ったことなかったもんな。
愛ってさ複雑そうだけど案外単純なものだと思うんだわ。
愛してる。そう感じたら、それは愛。
な?単純だろ。
でも、愛って言葉を重く受け止めすぎてる奴っているよな。
なんか、愛するのは一人だけーみたいな。
そういうのも、俺はありだとは思う。
結局人それぞれなんだよ。
感情なんだもん。
それでも、まだわからない知りたいとか思うんだったら心から愛せる人を見つければいい。
お前がまだ愛がわからないのなら、お前にとって俺はそんな存在になれてないってことか。
ちょっと…てかかなりショック。
これから頑張るわ。
お前を愛で満たせられるように。
って、なんか今日酔ってるみたい。
変なこと言ってごめんな。
でも、本心だから。
って、寝てんの?
マジかよ…
俺の愛の告白は無視ですか?
今日だけで2つもショックなことあったし…
全く…
いい夢、見ろよ。
おやすみ。美咲。