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Strange・Army  作者: 翁蓮華
羽鳥巡:上
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深夜アニメと保健体育



こじんまりとした広さである自分の生活空間に散らばった服の山から、長袖Tシャツとジーパンを探り当てる。食事は食べたければ勤務している魔術師向けの食堂で食べられるらしいが、そこまで食欲が旺盛な方でもないので、寮に入ってから二週間、一度も行ったことがない。

やっぱり人間、食欲は必要だから湧くものなのだなと変な感慨を抱いてしまった。

まあ、食べたくないのだから食べないのだ。これ以上な自然体もないよなと自分を正当化し、ベッド横の壁に吊るしてあった軍帽を手に取り、目深に被った。

こういうのもオシャレな被り方というのがあるんだろうが、そこまで調べるほどファッションにこだわる性分でもない。

それに、梅芳さんのように突き抜けてこだわる人間がいると逆に白けるというのもある。

まあ、僕の場合、今までのファッションの記憶もないわけだし。

自然体が一番。

僕の数少ないこの施設でも知っている箇所である、ライムの研究室に向かった。

梅芳さんの言い置いた言葉によると、6時に集合らしい。

ふと廊下の時計を見ると5時半。

……どんだけ早く起こしてくれたんだあの男。

アタシはお化粧とか色々あるから先に行っててねとかほざいていたが、むしろあの人の場合化粧をせずに男の格好をしさえすればそれなりに男前なのだ。

ガテン系の兄ちゃんといった風合いで。

天は二物を与えずというが、与えるにしても方向性を考えてやれと言いたくなる。ガテン系をカマにしてどうするというんだ、全く。




そんなことを考えていたら、ライムの研究室に着いてしまった。

引き戸を横に滑らせると、消毒薬の臭いがツンと鼻につく。本棚に囲まれた白色を基調にした研究室には、古今東西の膨大な資料が保管してあるようだ。

ようだ、というのもはっきり本人に確認したことがないからなのだが、今見た限りでも古びた巻物や洋書なども混ざっていることを考えると恐らくそうなのではないかと推測がつく。

部屋の隅には加湿器がシューシュー音を立てて蒸気を放出していて、その近くには大きな温湿度計がぶら下がっている。黒色のコーヒーメーカーと最新のゲーム機も置いてあり、かなり羨ましい。(どうしてこんな知識があるのか自分でも不思議だが)

パソコンのデスクトップは常に三面開いていて、ライムはそのデスクトップを一つ使って白髪の少女とアニメを鑑賞していた。

「……何やってんですか」

「やふーい、巡君」

「おはようございます、ライム司令官」

そう、最近知って驚いたことの一つは、ライムが断罪人形の司令官だったことだ。

「お早うグッモーニンついでにグッナイ青少年」

「寝ちゃダメでしょう」

その割に、空き時間は断罪人形の構成術式の研究ばかりしているらしいから、真面目なんだか不真面目なんだか分からない。

「今、この娘に深夜アニメ見せてたんだ」

「普通に駄目でしょう」

深夜って時点でアウトな気がする。

「いやあ、きわどいシーンも淡々と見てるからどこまでイケルか試したくなってな」

「くたばれ」

僕の周りは駄目な大人しかいないのか。

「ベリーもこんなオッサンに付き合わないできちんと文句を言ったほうがいいと」

「なぜ」

「ん?」

「なぜ若い雌を見ると雄は発情するのですか、ミスター」

ベリーは、長い睫毛を瞬いて呟いた。

「こんな純真無垢な少女に何見せたんだアンタ!?」

ライムは慌てて首を横に振る。

「いや、パンチラまでしか出てきてないから!!大丈夫だから!」

「どこが大丈夫だ!明らかに必要なのは健全な保健体育でしょうが!!」

慌ててパソコンのメインスイッチを切ると、ライムがああーっと叫んだ。

「パソコンを直接起動停止すると故障の元ですわ、ミスター」

「自業自得です」

慌てるライムを横目に僕は冷たい目で言ってやった。



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