第十九話「魔女裁判の前夜」
私はただの人間だった。
森の方に住む奇妙な人間。
それが私、エリアス・クロウだった。
あれは、十七世紀ごろのことだろうか?
私は優雅に紅茶を飲みながら、
本を嗜んでいた。
やはり、文学は面白い。
想像力が豊かになり、
世界が広がる。
そう考えていた時、
「何しているの?」
私の背中にドシっと重たい感触がした。
この茶色のボロい服を着ていて、申し訳程度のリボンをつけている
少女の名前はイザベル・アシュリー。
この子の両親は没落貴族、
まあ、簡単に言えば、
偉い方が貧民になる。
みたいなことだ。
この子の父親は逃げる途中で
あの世へ旅立ったらしく、
身寄りのないこの子が森に迷い込んだ時、
私が拾ったのだ。
私は再び、紅茶を飲み、
後ろに纏わりつく、アシュリーを無視して、本を読み出した。
「ねぇーつまんない!遊ぼうよ!」
アシュリーは駄々を捏ねながら、
私の背中で暴れてくる。
全く、これで一歳しか年齢が変わらないのだ。
何かの間違いであってほしい。
私は「はぁ.....」とため息をつき、
本を閉じた。
「しょうがないですね。
少し散歩しますか?」
私の言葉に喜びのあまり、
背中から、転がり落ちてしまった。
.....やっぱり行かなくてよいだろうか?
*
そうは言っても、辺りは森や川しかなく。
毎回と言っても良いほど、
この川を訪れるのだ。
私は紙とペンを持ち、
小説の物語を書いていた。
案外これが、金持ちからの評判が良く、
私の家がこんなところに建てられているのもそのおかげだ。
石の上に座り、川で魚と格闘するアシュリーを横目にいつもの日常を過ごしていた。
不意にチュンチュンと小鳥の鳴く声がした。
やはり良い。
私の中のインスピレーションが燃え上がる!
「バシャ!」
私に水がかかった。
私の紙は濡れてしまい、
書くことが出来なくなってしまった。
「一緒に遊びましょうよ!
毎回、毎回書いていて、
それじゃあ、良い作品も書けないですよ?」
流石にやり過ぎた。
そう思ったのか、目を泳がせながらそう言った。
その発言に、私は下をうつむいて、
「こ い つ めー!」
服のまま、川に飛びこみ、
「バシャーン!」
と豪快な音が鳴った。
あれから2時間ほど経ち、
辺りが暗くなってきたので、
私たちは帰ることにした。
「ねえ!見て、こんなに捕まえたよ!」
即興で作った持ち物入れ箱に、
物凄い魚が入っていた。
この子を漁師の所で働かせたら、
大物でも釣ってくるんじゃないか?
と思ったが魚に食われるのがオチか
と勝手に結論付けて歩いていた。
びしょ濡れになり、服が重たく、
しまいには、紙も濡れてしまった現状。
だがなぜか、
【──今はこの時間が心地よい。】
帰ってる途中で装備を着て剣を持ち、
誰かを探しているような人たちがいた。
あまりの異様さに、
私はアシュリーを草に隠して、
その人たちに話しかけた。
「どうしたんですか?
そんなに焦って?」
人がこんなとこにいる訳ないと思っていたのか、
肩をびくりと震わせていた。
「あ、ああ、実はこの辺に魔女が居るって言う話になっているんだよ。」
「ああ、そうなんですね。
実は私、昔からここに住んでいるのですが、魔女なんて見たことないですよ。」
国の衛兵か、
最近話題の魔女狩り探しか、
魔女なんてスピリチュアル、
あるわけがないのに足りない頭じゃわからないのか。
と衛兵達をバカにしていたら、
「ところで、何故そんなに濡れているのですか?」
「ああ、これは川で釣りをしていたら、どデカい魚に出会いまして、」
嘘である。
これは、アシュリーが格闘の末に手に入れた、魚である。
「そうでしたか、ここらでお住みになると言う訳で、
一応、魔女の風貌を教えておきます。」
いや、いいよ。めんどくさい。
そう、言葉が出かかったが、
なんとか、抑え込む。
「ワアーアリガトウゴザイマス。」
とだけ返事しといた。
衛兵はごほんと咳払いをして、
話しだした。
「そいつは一七歳で親が貴族だったらしいが、
母親が魔女だったらしくてな、
母親の子が逃げたらしく、
この森で狩りをしている者から、
その子が居るって通報が入った。」
「その子は金髪で、
富裕層でしか買えない、リボンをしている。」
アシュリーだ。完全にアシュリーだ。
全く、なんでこんなに早く、
バレてるんだか、
私は冷や汗を流しながら聞いていた。
「まあ、正直俺たちには、
あまり関係ないんだがな、
最近のこの国は女を魔女として、
差別をして、国を安定させているように見える。」
「まあ、こんなこと言っているのが、バレたら、
物理的に首が飛ぶんだけどな。」
こいつは捕らえる気が無いのだろう。
その周りにいる奴らも、
大半がめんどくさそうにしていたが、
しかし、一人だけ私を探っているような目をしていた。
「それでは、この辺で。」
もうこいつらから、
聞ける情報がないと思い。
いかにも、急いでいるので!
みたいな雰囲気を出していた。
「ああ、了解。
俺たちも疲れてきたから、
休みながら帰っていくよ。」
私は再び森に戻り、
草むらに居る、
アシュリーを衛兵たちに見えないように屈ませながら、帰って行った。
「隊長!良かったのですか?」
「ん?何がだ?」
ヘンリー・ヘイル隊長は訳がわからなさそうな顔をしながら、聞き返してきた。
「あいつを逃したことについてを、聞いているのですよ!!」
ヘンリー隊長はクレイ・パンプ(タバコ)を取り出して、急に吸い出した。
「アルバート・フォードは本当に魔女が実在すると思っているのか?」
急に名前を言われたことで、
私はこの質問は大切なことだと、
意味のある質問だと思ったのだが、
「ぷはぁー」と煙を吐きながら、
私に問いかけてきた。
ダメだこいつ!?
真面目のまの字もない!!
しかし、上司に質問されたのでしょうがなく私は答えた。
「魔女のせいで、国家は揺らいでいる。
あいつらのせいで、明日も眠れない。」
少し遠い目をしながら、
そう、ヘンリー隊長はいった。
「そうか、でも、バカらしくないか?」
ヘンリーはタバコを再度吸い直して、
話をし始めた。
「魔女だって人間さ。
まず、魔女の判定はなんだ?
女だから?危険だから?
誰が決めた?」
「だが、国を揺るがせたのは事実。」
私はヘイル隊長に向き合い、真摯な目で訴えた。
それに隊長は
「そうか。」
とだけ返事をした。
*
私とアシュリーは家に帰ってきていた。
「はあーそろそろ、家を変えないとな。」
私はイスに座りながら、
ため息混じりの声を出した。
「あ、あのー」
アシュリーはもじもじさせながら、
こちらを見ている。
なんだ?トイレでも行きたいのか?
と思ったが違うそうだ。
「ありがとう、助けてくれて。」
頬を赤く染め、緊張しながら言う、
そんな彼女に私は恥ずかしさからか?
もしくは嬉しさからか?
心臓の音が少し早くなった気がする。
私は一息ついて、
「お前は悪くないだろ?」
そう言いながら、頭を撫でたら、
ニッコリした笑顔で、
「うん!」
と言いながら、
私はアシュリーにハグされた。
「まず、今の状況を整理しよう。」
ハグしてきたアシュリーを、
呼ぶように話しかけたが、
私の胸に顔を埋め続けている。
私は呆れつつも体温が上昇して、照れているのがわかる。
「はあーとりあえず話すけど。
アシュリーの貴族の母が魔女裁判で死亡。
それに呼応するかのように一家の立場が揺らぎ、父は逃走。
ここまではあっているか?」
流石に真面目な話になったと思い。
私の上から降りた。
「うん、合っているよ。
それとさっきの衛兵さんを見たら、
私を魔女として、殺そうとしているのがわかる。」
うむ、いくら私が男だからって、
衛兵に勝てるほど強くない。
なんなら物語ばかり、書いているから、
ヒョロガリと言っても良いだろう。
「どうするかー」
私は頭を抱えて、机に突っ伏した。
戦力はほぼなし。
逃げ隠れする体力もない。
「私が書いている物語の能力があればな。」
私はそう呟き、
私の本を見た。先程書いてた本は。
【不死身な俺は狂い咲く】
この物語は不死身の主人公。
ネクロが洗脳され、狂い、花のような一瞬を過ごしていく。
そんな残酷な物語。
どうやら、私は残酷な話が好きなようで、よく書いてしまう。
まあ、実際には起きて欲しくないが、
そんな私を呼び起こすかのように、
「クロウ!ちゃんと聞いてる!?」
私の肩を揺らしながら、
アシュリーはそう言っていた。
私の悪い癖だ。
物語になると良く妄想してしまう。
こういうやつを妄想癖が凄いやつって言われるんだろうな。
「すまんな。
今書いている物語を考えていた。」
私が素直に伝えると、
アシュリーはムスッとした顔で、
「全く、今くらい話聞いてよね。」
アシュリーは切り替えるようにそう話した。
「私から提案があるんだけど、
国に対して、抗議しない?」
そんな突拍子のないことを言う。
アシュリーに対して、
(やっぱり、こいつバカだ!)
と思わずにはいられなかった。
「いや、いや、なんで、抗議するんだよ。」
そう純粋な疑問が口から出てきたが、
「だって、私やお母さんが魔女なんておかしいもん!」
.....ダメだこいつ、
論点はそこじゃないだろう。
魔女なんて、国の上層部が決めた。
都合の良い、殺戮方法でしかない。
──いや、待てよ?
なんでこいつの母は魔女にされたんだ?
こいつの家族はかなりの地位だった。
国に直接関われるぐらいの。
もしかして、父が協力して、母を追いやった?
いや、わざわざ自分から地位を下げる意味がわからない。
.....ダメだ。こんな、変な場所に住んでいる俺からしたら、情報が足りなすぎる。
「そうだなぁ、とりあえず。
いつも、お世話になっている。
私の本のお得様に話を聞いてみる。」
「クロウはその人と関わっていて、
大丈夫なの?」
私の服を引っ張り、不安げに聞いた。
その人のことはアシュリーにも、
話していて、一言で表すなら、
胡散臭さの塊のようなやつだった。
正直、私もあまり関わりたくないが、
こんな森に住んでいる私には、
このような、方法しかなく、
「私は大丈夫ですよ。」
アシュリーの頭を撫でて、
「今日は寝て、明日私は行きます。
アシュリーはここで、お留守番していてください。」
流石の衛兵でも、あの距離から、
こんな山奥の家を探せる訳ないと
結論付けて、寝かせることにしたが、
「いやだー!私もついて行く!」
ジタバタとベッドの上で暴れながら、
そう叫んでいる。
そうなるとは思っていたが、
まさか、ここまでしつこいとは。
何度も言うが、一歳しか変わらないんだぞ、これで!
両手で耳を閉じて、
暴れるアシュリーを部屋に放置して、
明日は早いのだが、
お得意様に出す本を作り切らなければいけないので、
今夜は徹夜になりそうだ。
*
私は朝早くから起きた。
今日、取引する本を持っていき、
アシュリーが寝ていることを確認しながら、
こっそりと家から出た。
「あの家か.....」
私は気づかなかった。
もしも、気づいていたら?
もしも、この時逃げていたら?
【こんな後悔はしなくて良かったのに──】
*
「相変わらず、バカデカい家だなあ。」
私はこの国で恐らく、
一番裕福な家に来ていた。
門の前には警備がいるが、
私を見た瞬間、
「ああ、いつもの本ですね。
どうぞ、お通り下さい。」
そう、警備の人が言った瞬間、
ガラガラと門が開いていくのがわかる。
もう何度も来てしまったから、
慣れているが、凄いものは凄い。
私はコツコツと足音を鳴らせながら、庭を歩いていくのであった。
庭は噴水や植物など様々なものがあり、まるで、
小説の世界に入り込んだみたいだ。
「おー、こんにちは。」
先程の門の音で気付いたのか、
今回の取引相手が来ていた。
胡散臭さには私にも自信があるが、
こいつには敵わないだろう。
黒い服と赤いマント。
それに私の茶髪とは違う真っ黒な髪だった。
そいつの名前はルシウス・ヴェイル
タバコを咥えながら、玄関から出てきた。
これは噂なのだが、
こいつは変化させることが出来るとかないとか、
まあ、誰かが考えた妄想だろう。
「クロウ取引だろう?早速中に入ろうぜ?」
そう言われたので、
私は屋敷の中のとある一室に入ることにした。
「ところで、今回は本だけじゃないんだろう?」
ルシウスは私を探るような目つきで睨んでくる。
「ああ、今回は情報が少し欲しくてな。」
ルシウスはなるほどなと少し納得したかのように頷いた。
「お前は本の対価として情報、
あわよくば協力を頼もうとしているか。」
私は別に驚かない。
いつものことだからだ。
こいつは正解が気になってしょうがない。
その、正解が自分の考えと合っていた瞬間がこいつの生き甲斐なのだろう。
「さあ、どうかな。」
だから、簡単には教えない。
教えたら、やつの興味が消えてしまうから、
やつはもうわかっているんだぞと言いたげに話し出した。
「お前の住んでいる森だっけか、
最近、魔女が出てきたらしいじゃないか、
それに衛兵も調査として出されて
大丈夫か?」
もう、全部知られているじゃないか、
恐らく、国が森に凶悪な魔女が居る。
などのことを言っていたのだろう。
「それで、本の対価に何を要求する?」
ルシウスは尋ねてきたが、
とりあえず情報とあわよくば協力か、
「要求するのは国の情報と魔女を匿う協力をして欲しい。」
「ほう?」私が素直に言うのが不思議だったのか、
やつはそう疑問を口からこぼれ出ていた。
「国の情報は魔女に対しての情報。
一年くらい前に起きた。
貴族に対する魔女裁判について、
それと、この国の情勢について頼む。」
ルシウスは考えた後、
「いいですよ。」
とだけ返事をした。
「まず、魔女の存在ですが、
これは、全くの出鱈目ですね。
国の会議とかでも私は出るのでわかりますが、
魔女のせいにして、国を安定させようとしています。」
「魔女のせいにしたら、
国が問題ごとをしても、
魔女がやったんだ!
みたいに出来ますしね。」
それは、私も思っていたところだ。
魔女なんて存在しない。
それは、分かりきった話だ。
神と同じだ。
存在しないものを尊いたり、
貶したり、いつの時代でもある。
「魔女は世間的にも凶悪と言われております。
なので、
市民同士であいつが魔女だ。
こいつが魔女だって!」
「魔女の見分け方だって、
いい加減です。
他と違うから、魔女みたいだから、
魔女裁判になれば終わりです。
なんらかのこじ付けをされて、
死にます。」
ルシウスは紅茶を飲みながら話をした。
.....思った以上に魔女に対する現状は最悪かもしれないな。
「次に貴族に対する魔女裁判について話しますが、
あまり、確定性が持てません。」
「それでも、大丈夫です。」
魔女裁判。確定性がないなら、
偽情報に騙されないように注意しなければな。
「時は五年前、
とある貴族が問題ごとを起こした。
その、貴族はある一括の領地を支配するほどの強力な貴族。」
「貴族をじゃまだと思った。
国は工作に入った。
簡単に言えば、信用をなくすこと。」
人間社会は信用がもとで成り立っている。
もし、自分の仕事場に
無能な上司で何も出来ないやつがきたら、
そいつとは働きたくない。
一緒に働きたくない。
となるだろうな。
なぜなら、そいつは信用できない。
なにせ、今まで何もできてないようなやつなんだからな。
国もそれと同じだろう。
無能な王はいらないのだから。
「しかし、その貴族はかなりの信頼を民からもあった。
些細な問題ならしょうがないと思わせるほどに。」
ルシウスは笑いながら、滑稽だとでも言いたげに話した。
「なら、方法は一つしかない。
その民を狂わせてしまえば良いのだよ。」
「は?」
最初は理解できなかった。
しかし、聡明な私の頭脳は
それを次第に理解していき、
「国王はその地域に魔女の存在を
広めたのか?」
「そういうことだ。」
ルシウスは紅茶を再び飲んだ。
空になったのか、
メイドがすぐに気づき、
紅茶を注いでいく。
この話は特に矛盾は見つからないが、
「なぜ、お前は知っているんだ。」
いくらこいつが貴族だからって、
そこまで、詳しいのはおかしい。
国王の企やその貴族に対して、
知っていることが多すぎる。
その質問にルシウスは、
「その時、俺は情報屋だったからな。」
確かにこいつが貴族になったのは、
一年前、国からの褒美を貰って貴族になっていたな。
こいつと関わりだしたのもそのぐらいだ。
「なるほどな、変化はそういうことか。」
「正解!」
薄っぺらい表情をしているなと思っていたら、
そのせいか.....
「まあ、その後は君が知っている通りだよ。」
メイドから淹れてもらった紅茶を飲みながら、そう言った。
「あとはこの国の情報ですね。
今、この国は不安定です。」
「しかし、全てを魔女のせいにすることにして、
国の信頼を保っているっていう感じです。」
知りたいことは大体わかった。
矛盾か.....
なぜ、こいつは貴族になれたんだ?
やつの目を睨みながら、ジッと確かめた。
嘘つきの目。嘘をつくものは、本音がわからない。
こいつは協力者にしてはいけないな。
そう思い私は、
「ありがとうございました。
それではこれで。」
急に帰ろうとする私を不思議がったのか
ルシウスは
「協力はいらないのかい?」
その言葉に私は端的に
「必要ないさ。」
とだけ返して、ドアを閉めた。
「うーむ、不死身な俺は狂い咲くか.....」
俺は本のタイトルを見ながら、
そう言葉を吐いた。俺はニヤッとして、
「やっぱり欲しいなぁ。ネクロくん♪」
本をペラペラと見ながら、
そう呟くのであった。
*
私は家に歩いて帰っていた。
どうやら、予約した馬車が急遽来れなくなったらしく、
森の険しい道を歩いていた。
基本的に家から出ない私は帰るのが遅くなってしまい。
外は暗くなっていた、
やっとの思いで、家に帰れた私はなんのためらいもなく。
「アシュリー。帰ったぞー」
ドアを開けて一番最初に目に入ったのは、
荒れた部屋、破れた紙、そして、
抗おうとした末に落としていたであろうリボン。
「は?」
しばらくは状況を理解できなかった。
なんで?いつ?どうして?
そんなありきたりな言葉が私の頭を支配していく。
次第に今のこの状況を脳が受け入れていくが、
呆然と辺りを見渡すことしかできなかった。
紅茶に触ってみると冷たく、
いつも温かい紅茶を飲んでいるので、
かなり前に連れ去られてしまったことがわかる。
気づけば私は走り出していた。
あまりの唐突なことに頭がショートしたのか、
無我夢中に走り出して、
山を抜けて、街に来てしまった。
「はあはあ」
息切れをしたことによって、
ようやく私が街にいることに気づいた。
ダメだダメだ考えろ、打開策を探せ、
おそらくだが、衛兵に捕まったのだろう。
クソ!情報が足りなすぎる!!
「あんた大丈夫かい?」
誰かかわからないおばさんが
私の異常さを察して、水を持ってきてくれた。
そうだ。アシュリーが捕まったとなると国もその報告をしているはず。
そう思い、私は
「あの、すみません。
ここ最近で有名な山に住んでいる魔女について知っていますか?」
その言葉におばさんは驚き、
「あんた、まだ知らなかったのかい?
朝過ぎにその子を捕まえた報告が入って、
昼に明日、処刑を行う。
と話していたじゃない。」
クソ!もうそこまで進んでいるのか!
私は水を凄い勢いで飲み、
国王のいるところに走っていった。
衛兵の声を無視して、
無駄にデカい扉を開けた。
その先には二人の衛兵が国王に跪いていた。
「国王!!なぜ魔女を捕まえた今日の明日に殺そうとするのですか!!」
人生で一番大きな声を出したと思わせるほどの声量で抗議した。
その声に衛兵二人と国王が私の存在に気づき、
「なんだお前は?」
国王のギロリと怪しむ目は威厳のある目で少し怯んでしまうが、
「私はそれに納得をしておりません。」
私は大声で言うと近くの衛兵が耳を痛そうにしていた。
国王に跪いているやつらをよくよく見たら、
昨日のやつらじゃないか!
ヘラヘラとしている男。
それにあの時、私を睨んできた男!
こいつらがアシュリーを!
そう、思い私は殴りかかりそうになったが、
止めようとしてくる衛兵を振りほどこうとしたが、
引きこもって小説を書いていた私には敵うはずもなく、
子供と大人の喧嘩みたいになっていた。
「おい、おい、落ち着け。」
ヘラヘラしている男がそう言ってきた。
私は周りを見渡し、王の御前であることを思い出した。
王に向かって、私は──
【明日、魔女裁判の開廷を要求します!!】
魔女裁判の宣言、
それは、貧民であろうと貴族であろうと平等に与えられた権利。
その宣言に「ほう」と興味深そうにしていた。
「一度、こいつの母で魔女の結果がでた?結果は覆らないぞ。」
魔女裁判は一度きり、
前の裁判で決められてしまったのだから、
それこそ、根底を覆すようなものが無ければ
勝てない。
勝ち筋なんてないさ、
これはただの抗い、最後の抗い。
──私は俺を演じろ。
「結果なんて変えるためにあるんですよ。」
例え、狂ってしまっても!!
国王はその様子に大変気に入ったのか、
ニヤリとしながら、
「こりゃ、あいつも気にいるわけだ。」
そう呟くようにしゃべっていた。
コホンと咳払いをしながら、
国王は、
「良いだろう、どうせ変わらない。」
【抗ってみると良いさ、その先が何も見えなくても。】
国王は目配せをして、
衛兵を使い、私を部屋から出した。
「バタン!」とバカでかい音を出したドアをジッと睨みつけていた。
しかし、疲れてしまっていたのか。
すぐに倒れてしまった。
「はぁー。」
ため息、疲れ、希望、それらが混ざってぐちゃぐちゃになっていた。
そんな、俺に
「あんちゃん。大丈夫かい?」
と声をかけてきたヘラヘラしながらタバコを吸う、
男がそこにいた。




