自動ドアに無視される話
日常のちょっとした不条理と、誰もが一度は覚えたことのあるあの妙な敗北感を描いたショートエッセイをお届けします。
自動ドアの前に立っているのに、なぜか自分だけ認識されない——そんな地味で少しおかしい日常の謎を、軽い気持ちでお楽しみいただければ幸いです。
コンビ二やオフィスの自動ドアの前に立っているのに、一向に開かないことがある。ドアの上のセンサーを見つめながら少し足を踏み替えたり、手を振ってみたりしても無反応のままだと、「もしや自分は透明人間になってしまったのでは」と一瞬本気で疑ってしまう。
あとから来た人が横を通り抜けると、ドアは何事もなかったかのようにすんなり開く。取り残された自分はまるで世界から無視されたような妙な敗北感を味わうのだが、影の薄さを痛感しつつもどこかクスッと笑えてしまう、日常のちいさな謎である
自動ドアの前でひとり手を振り、足を踏み替え、静かに不審者と化していくあの数秒間。そして後から来た人が何食わぬ顔で扉を開けて去っていったときの、感謝と切なさと敗北感が混ざり合った複雑な気持ちは、誰もが一度は味わったことがあるのではないでしょうか。
「もしかして自分は透明人間になってしまったのかも」という一瞬の錯覚は、忙しい日常の中にぽっかりと開いた小さくも可笑しなエアポケットです。自分の影の薄さを少しだけ愛おしく思いながら、私たちは今日もどこかの自動ドアの前で、そっと足を踏み替えているのかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました




