契約成功?
櫻神社の本殿にて____。
(葵結)「それでは異能譲渡の儀式を行いたいと思います。……まずは星瑠様から…星瑠様は異能譲渡とルイスとの再契約の儀式、2つを行う予定ですが……、」
(ルイス)「葵結さん、話を遮ってすまない。……俺まだ……星瑠に聞いていないんだ。だから俺から言わせてくれ。」
(葵結)「……勿論。」
たぬき姿のルイスが星瑠に近づく。
(ルイス)「星瑠……お前の使い魔として、お前を護ってもいいか?」
(星瑠)「使い魔……は嫌かな。」
(ルイス)「!?……何故だ…?」
(星瑠)「……使い魔よりも……相棒-バディ-として私のそばに居てよ。」
星瑠はルイスを持ち上げ、目を合わす。
(ルイス)「相棒-バディ-……いいな、その響き。」
(星瑠)「そうでしょ?」
(葵結)「約束は出来たみたいですね。……それでは儀式を始めましょう。星瑠様、ルイスを抱え前へ。」
葵結の指示に従い紋章の様なものが描かれた床の上に立つ。
(葵結)『神よ___、力を欲する者に輝かし力を授けよ。そして彼女に神の御加護あらんことを___。』
呪文のような言葉を唱えた瞬間、床の紋章が光出した。
その光はとても眩しく、ほんのりと温かさを感じた。
光が収まり皆が目を開くとそこには、青年と星瑠が抱き合っていた。
(星瑠)「ッ…………!?」
(未望)「えっ!?なんか男の子出てきた!!」
(羽唯)「しかも星瑠と抱き合ってる!?!?」
(藍)「ヒュー」
その場を茶化すように口笛を鳴らす藍。
(星瑠)「だっ……だれ!?」
(ルイス)「ルイスだ。」
(未望)「ルイスなわけない!ルイスはたぬきだよ!」
(ルイス)「元々俺は人間だ…。ただ禮子と契約するには魔獣になる必要があったから、とある人に変化の術をかけてもらって、たぬきになってたんだよ。……だが今、それが解けて人間の姿になってるだけだ。」
(星瑠)「……ルイスなの?」
(ルイス)「ルイスだよ、星瑠。」
(葵結)「感動中のところ申し訳無いのですが、再契約の方に移っていただいてもよろしいですか?」
(星瑠)「あ、はい……、再契約ってどうすれば?」
(葵結)「ルイス、再契約の仕方分かってますよね?」
(ルイス)「あぁ。」
(葵結)「それでは奥の部屋へ。……皆様は見てはいけませんよ?」
2人が移動し、扉を閉める葵結。
(5人)「えっ……!?」
(葵結)「それでは続いて……藍様、儀式を始めましょうか。」
(藍)「あ、……はい…!」
星瑠 side
ルイスに連れられ別室へと移動する。
(星瑠)「あの〜……えっと……なんで別部屋に移動するの?」
(ルイス)「お前のためだよ。この儀式は見せもんじゃないからな。……ほら座れ。」
ルイスに言われるがまま、ルイスの正面へ座る星瑠。
(ルイス)「再契約は簡単だ。……星瑠、俺の首を噛め。」
(星瑠)「か……噛む!?」
(ルイス)「あぁ、優しくじゃないぞ?強めに噛んでくれ。1分も経たないうちに契約の証が浮び上がる。」
(星瑠)「ちょっと待ってよ……!噛むとかッ……恥ずいし……、私まだ高校生だよ!?」
(ルイス)「この儀式に年齢は関係ない。これはやましい事じゃない、契約だ。それに俺はお前に噛まれた位で手を出すほど落ちぶれちゃいない。分かったならさっさとやれ。」
(星瑠)「ッ……もう……!噛むからね?いい?」
ルイスの首元に顔を近づける。
(ルイス)「あぁ……。」
ルイスの返事を聞き、星瑠は左の首元を強く噛んだ。
(ルイス)「ッ……!」
痛みと共にルイスの左首元が光だす。
星瑠は噛んだ後すぐ彼の元から離れた。
(星瑠)「マークが浮かび上がった……、これで契約は終了……?」
(ルイス)「いやまだだ。」
そう言って離れた星瑠の手を掴み自分の元へ寄せ、星瑠の左首元に優しくキスを落とす。
そして星瑠の左首元にも不思議なマークが浮かび上がってくる。
(星瑠)「!?!?!?」
いきなりの事で声が出ない星瑠。
(ルイス)「これで契約成立だな。」
下唇をペロッと舐めるルイスはすごく大人びた顔をしていた。
(星瑠)「ビックリしたって……!」
(ルイス)「悪いな、必要な事だったんだ。」
(星瑠)「……分かってるけどさ……!あ〜…顔熱っ……。」
パタパタと手で顔を仰ぐ星瑠。
(ルイス)「照れたか?」
(星瑠)「照れたとかのレベルじゃない……!もう、みんなのところ戻ろ。」
顔をプイっと背け、赤く染め上げた顔を隠す星瑠。
(ルイス)「あぁ。」
気づかないふりをして隣に並ぶルイス。
星瑠とルイスが本殿へと戻ってきた。
(ルイス)「再契約終わりました。」
(葵結)「早く終わりましたね。」
(羽唯)「ちょっとちょっとォ〜、再契約って何したのさ、星瑠!」
(星瑠)「いや……ッ……ナニモ……!」
いつになくたどたどしい話し方の星瑠。
(葵結)「星瑠様、再契約の内容は他言無用でお願い致しますね、口外は禁じられているので。皆様方も言及はお控え下さい。」
葵結は柔らかく微笑んだ。
(ルイス)(禁じられては無いけどな。…だけど葵結さんは星瑠を守りたかったんだろうな。)
(藍)「星瑠見てよ…!私にも相棒出来たんだ!」
(星瑠)「相棒……?」
藍を見ると小さな黒竜を抱えていた。
(星瑠)「か、……可愛い…!」
(ルイス)「黒竜の赤ん坊か……お前珍しいのに選ばれたんだな。」
(星瑠)「私たちって選ばれる側だったんだ……。」
(ルイス)「あぁ……俺たち使い魔は相性のいい使い手を選び、契約を結ぶ。……お前たちには分からない話をするが、元々使い魔たちは人間と緑の糸で繋がれているんだ。これは使い魔によって繋がれている本数、糸の細さ、綺麗さが全て異なる。俺の場合は元々契約者が居たってこともあって本数は0だった。だが、星瑠が産まれ、太く綺麗な一本の糸が現れた。……俺は特殊だが、産まれながらの使い魔たちは数本繋がれているやつもいる、その中から太く綺麗な糸を持つ者と使い魔たちは契約をするんだ。」
(星瑠)「へぇ……なるほどね。……運命の赤い糸みたいなやつだ。」
(未望)「なんか星瑠サンは良いですよね、春が来て。」
(星瑠)「は、はい!?……春なんか来てないけど!?!?」
(藍)「星瑠大焦りやん。」
(星瑠)「焦ってない……!!」
引いた熱がまた再燃する。
(羽唯)「ルイスと仲良くやってろ〜!リア充は黙っとれぇーい!」
(星瑠)「も〜!!そういう関係じゃないんだって……!ルイスも否定してよ……!」
(ルイス)「……。」
ルイスはそっぽを向く。
(星瑠)「私に味方は居ないみたいだ……。そういえばどこまで儀式進んだ?」
トホホと肩を下げる星瑠。
(藍)「星瑠たちが再契約してる間4人は儀式終わってて、あと羽唯だけかな。」
(星瑠)「あ、そうだったんだ。……みんなの使い魔は……藍以外人の姿してる…。」
(彩凪)「うちの相棒は雪を操れる少年で……、」
(未望)「未望は双子!」
(琴乃)「うちは女性魔道士のシロナさんが相棒だよ。相棒というよりかは先生かな?」
(シロナ)「初めまして、星瑠さん。女性魔道士のシロナです。……そして久しぶりね、ルイス。」
(ルイス)「久しぶりだな、シロナ姐さん。」
(星瑠)「美しい……!」
(シロナ)「たまには魔界に帰ってきなさいよ、ルイス。皆寂しがってるわよ?」
(ルイス)「俺は生まれつき使い魔じゃないんだ。俺が戻るのは場違いだろ。」
(シロナ)「…………、まぁ好きにしなさい。」
(星瑠)「……彩凪の子と未望の子たちは名前あるの?」
(セツ)「僕はセツ……。よろしくお願いします……。」
彩凪の後ろに隠れながら挨拶をするセツ。
(彩凪)「セツは人見知りみたい、まだうちにしか心開いてないっぽい!」
(星瑠)「なんか嬉しそう、彩凪。……流石ショタコン。」
(彩凪)「特別感あってよくない?うちにだけって!……あとショタコンは余計ね?」
(セツ)「ショタ…コン……ってなに?」
(彩凪)「セツは知らなくていい事!」
そう言ってセツをなだめる彩凪。
(未望)「双子ちゃん達、星瑠に自己紹介してあげて!」
(メム)「あたいメム!」
(ハヤ)「オレ、ハヤ!」
(星瑠)「こっちもちっちゃい子だ。よろしくね?メムちゃん、ハヤくん。」
星瑠はふわりと微笑んだ。
(葵結)「軽い自己紹介がすんだところで、最後に羽唯様の儀式を致しましょうか。」
(羽唯)「はい!」
羽唯は紋章の様なものが描かれた床の上に立つ。
(葵結)『神よ___、力を欲する者に輝かし力を授けよ。そして彼女に神の御加護あらんことを___。』
先程と同様の呪文を唱え、紋章が光だす。
しかしその光は一瞬にして消えてしまった。
(羽唯)「あれ?」
(葵結)「……何かおかしいですね…。羽唯様少しお待ち頂けますか?」
(羽唯)「はい……!」
葵結は本殿に飾られた水晶を覗く。
(葵結)「異能保持済み……?……羽唯様、何処かで異能を授かった記憶は御座いませんか?」
(羽唯)「……えっ……無いと思います……。」
(葵結)「そう……ですよね……。しかし、こちらの水晶にはバツ印が映し出されています。これは既に異能を持っている者のみにしか表示されません。……羽唯様、こちらのコンパスを持って下さい。」
葵結にコンパスを渡された羽唯。
(羽唯)「これをどうすれば?」
(葵結)「こちらのコンパスは一般的なコンパスとは違い、方角を示すのではなく、自身の使い魔を探す為に使用されます。ですから、こちらのコンパスに全ての意識を集中させて下さい。そうすれば、羽唯様の使い魔を見つけることが出来ます。」
(羽唯)「分かりました、……とりあえずやってみます!」
葵結に言われた通り、コンパスを両手で持ちコンパスに全ての意識を集中させる。
するとコンパスが光り出した。
葵結が矢印の方向を確認すると…その方角にいたのはちゆだった。
(葵結)「時針がちゆ様を指している……。羽唯様、意識を戻していただいて構いません。」
(羽唯)「……はい。」
(葵結)「羽唯様の使い魔はちゆ様を指していました……。」
(羽唯)「えっ……!?ちゆちゃんが私の使い魔……!?」
(葵結)「コンパスで指されていた方角的にちゆ様で間違いないかと。羽唯様……いつ頃契約を結ばれたか……身に覚えはありますか?」
(羽唯)「契約……か……。思い当たる節があるとすれば……ちゆちゃんの手を握ったとき、心臓が1回だけ大きく波った時があったかも。……その動悸と共にちゆちゃんを握った手が熱くなった。」
(葵結)「左様でございますか……。色々と聞きたいことはございますが、私からの異能譲渡ができない限り、ちゆ様の持つ能力を使用するほかありません。……ちゆ様が一体何者なのか……こちらで1度調べてさせていただきます。ですので、その間はちゆ様の異能を上手く使いこなせるよう、精進していただきたいです。」
(羽唯)「分かりました…!」
(葵結)「……皆様方、異能譲渡の儀式は終わりました。……最後に一つだけ、皆様方に大切な事を伝えさせて下さい。……この世界に滞在出来る時間には限りがあります。……人によって滞在時間に差違はございますが、この世界に滞在出来る時間は12時間が限度です。12時間を過ぎてしまうと、現実世界にいる自身のお体が消滅し、魂だけが夢想世界に閉じ込められてしまいます。こうなってしまうと、もう二度と現実世界には帰れません。ですから、12時間を過ぎないよう、気をつけて下さい。」
(ルイス)「俺からも1つ補足だ。……12時間が限度と言ったが、この世界に長く滞在すればするほど、精神が疲れ果ててしまう。……例えば1時間の滞在だと、現実世界の体にあまり影響はないが、6時間の滞在だと、現実世界の体に疲れが出てしまうんだ。場合によっては熱を出してしまったり、頭痛の症状が出たりする。……この世界は肉体ではなく、お前たちの魂だけがこの世界に来ているから体にダメージは無い。ただ、お前らの精神が徐々に削られていく。だから適度な休息は必要だ。毎日長時間夢想世界に居るのは、自らの寿命を縮めてるのと同じだからな。……この世界を救って欲しい気持ちはあるが、お前たちはまだ子供だ。……無理だけはするなよ?」
(未望)「はーい!」
(星瑠)「了解。……ところで私たちは今何時間ここに居るの?」
(葵結)「2時間程度ですね。」
(彩凪)「じゃあまだ居れるね!」
(藍)「あんた話聞いてなかったの?」
(彩凪)「ん?」
(セツ)「彩凪ちゃん……そろそろ帰った方がいい……かも……?」
(ルイス)「その身体に慣れるまでは、1,2時間を目安にした方が良いな。」
(琴乃)「それじゃあ戻る?」
(星瑠)「夢想世界の人達がそう言ってるし、帰ろっか。」
(未望)「帰りたいのは山々ですけどもぉ〜、どう帰れば?」
(ルイス)「着いてこい、晦冥界まで送ってやるから。」
(星瑠)「はーい。」
(琴乃)「シロナさん達は……?」
隣に並ぶシロナを不安そうに見つめる琴乃。
(シロナ)「私たちは櫻神社で待っているわ。大丈夫、貴方たちが現実世界へ戻ったとしても契約が切れることはないわ。」
(琴乃)「なら良かった……!」
(シロナ)「それじゃあね、琴乃。また会いましょう。」
(琴乃)「またね、シロナさん!」
(彩凪)「セツ、じゃあね……!」
(セツ)「バイバイ……彩凪ちゃん。」
(未望)「メム、ハヤまた来るからね〜!」
(メム・ハヤ)「「分かってるよー!まってるからね!」」
(羽唯)「ちゆちゃん、今日から此処でお世話になるんだよ?」
(ちゆ)「お姉ちゃん……帰ってきてくれる?」
(羽唯)「帰ってくるよ、必ずね?」
(ちゆ)「約束!」
(羽唯)「約束!」
2人は指切りを交わす。
(葵結)「藍様、黒竜は私に任せて下さい。」
(藍)「はい!……あ、この子の名前決めました!ロウ!……ロウをよろしくお願いします!」
(葵結)「ロウ様……いいお名前ですね。……行ってらっしゃいませ、藍様。」
(藍)「行ってきます!……ロウも行ってきます……!」
藍は葵結の腕の中にいるロウを優しく撫でた。
別れを惜しみながらも、また帰ってくると約束を交わし先ほどと同じ道を戻る。________________________________________
【晦冥界】
赤い大きな扉の先は暗闇の中。
私たちは一筋の光だけを目印に歩く。
(ルイス)「此処をくぐれば現実世界へ戻れる。」
来た時には存在しなかった青い鳥居。
(星瑠)「分かった。」
(ルイス)「夢想世界に来る時も、光を辿れば櫻神社に続く門が見えるから、いつでも来たい時に来ればいい。」
(星瑠)「ルイスが居なくても行けるの?」
(ルイス)「異能を授かったからな、1人でも来ようと思えば来れるぞ。」
(星瑠)「……それじゃあ、戻るね。」
(ルイス)「あぁ……。」
そう言って6人は現実世界へ戻る青い門をくぐった。




