表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【改訂版】呪いを解いた代償は、恋人の心でした~神に反旗を翻します~【第二部】  作者: 七宮叶歌
第23章 タイムカプセル

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

75/89

タイムカプセルⅠ

 小鳥のさえずりを聞きながら朝目覚めると、眼前には青の瞳があった。驚きすぎて悲鳴すら出ない。代わりに息を飲み込んだ。


「ミユ、おはよう」


「おはよう……」


 朝早くからどうしたのだろう。にこにこと笑うクラウに、首を傾げてみせる。


「世界旅行が叶ったよ。城だけだけどね。明日、行くことになった」


「えっ?」


 昨日、思い描いていたことが現実になるのだ。どうしようもなく嬉しい。寝起きでクラウに飛びつき、目頭を熱くする。


「これでありのままの世界を見られるし、氷像祭りにも、プールにも行ける」


「やったぁ……」


 本当に叶ってしまった。諦めなくて良かった。涙を零す私の顔を見て、クラウは小さく笑う。


「良かったね」


「うん」


 これで私の心が決まれば言うことはない。胸の内でガッツポーズを決め込み、使い魔たちと王たちに『ありがとう』と呟いた。


「それで、なんだけどさ」


 どちらともなく身体を離すと、クラウは端的に予定を口にする。


「今日はタイムカプセルを埋めるよ」


「中身は決まってるの?」


「決まってるものもあるけど、ほとんど決まってない」


 困っている素振りも見せず、クラウは呑気に話す。タイムカプセルと言えば、未来の自分に託す手紙を入れるのだろう。あとは、今の私が大事にしているもの――ペンダントにつけているカノンの結婚指輪や、日記、他には――。


「う〜ん、私が思いつくのは皆の寄せ書きとかかなぁ」


「寄せ書き、か。良いと思う」


 クラウはうんうんと頷くと、ちらりとドアの方を見た。


「とりあえず、会議室に行こっか。アレクとフレアも待ってるから」


「そうだね」


 クラウには部屋から出ていってもらい、手早く白い普段着に着替える。髪に櫛を通し、リップクリームも塗った。準備は万端だ。

 急いで部屋を出ると、待っていてくれたクラウと手を繋ぐ。二人の時間を満喫するように、足取りはゆっくりだった。


 * * *


 テーブルに色紙くらいの大きさの紙を広げ、羽根ペンとブルーインクも用意した。あとは私たちが言葉をしたためるのみだ。まずはリーダー格のアレクに筆記具一式を渡し、行方を見守る。


「寄せ書きとはなぁ。何を書けば良いんだ?」


 アレクは唸り声を上げ、口をへの字に曲げた。


「深く考えなくても良いよ。今のあたしたちのことと、未来への願いを書けば」


「未来への願いかー」


 フレアのアドバイスを受け、アレクは「んー」と思案しているようだ。真っ白な紙を数分見詰めた後、ようやく彼は筆を取った。丁寧にインクを浸し、何かを綴っている。

 私も何を書くか考えよう。今の私は幸せに暮らしていること、魔導師を辞めること、エメラルドの人たちも地震が起きようと懸命に復興に向けて歩んでいること。これからは負の感情が世界に溢れること、戦争が起きれば人類は神によって滅亡させられること、未来の私たちに戦争を止めて欲しいこと。こんなところだろう。


「出来たぞ。次はオマエな」


「うん」


 寄せ書きはアレクの手でクラウへと渡った。既に何を書くのか決めていたのだろう。クラウの筆は止まることなく、すらすらと進んだ。


「これで良し。次はフレアだね」


「分かった」


 フレアも笑顔で寄せ書きを受け取ると、真剣な瞳を落とす。一文字一文字丁寧に書いていくその姿は、気品さえ感じられる。


「うん、これで良いよね。最後はミユね」


 三人の思いが詰まった寄せ書きは、遂に私の元へと回ってきた。視線を落とし、三人が書いた内容をじっくりと見てみる。思わず笑い声が漏れてしまった。


「何で笑うんだ?」


「だって、皆考えること一緒なんだもん」


 今が幸せなこと、そして人類の歴史が続いていって欲しいこと、願いは全員共通している。私もありのままの今と願いを書き出そう。右下に残されている空間に、私の思いのたけを綴っていく。


「私も書けた!」


 寄せ書きをテーブルの中央に寄せ、四人で綴った内容を見る。

 

「ホントに似たり寄ったりの内容だな。誰かが代表で書けば良かったんじゃねーのか?」


「駄目だよ。四人全員が平和を望んでる。それを確実に伝えなくちゃ」


 アレクへ反論したクラウに、フレアと大きく首を縦に振ってみせた。

 

 * * *


 オレらはもうすぐ魔導師じゃなくなる。でも、不幸に思ったことはない。ただの人間になったとしても、オレはフレアに会いに行くし、この幸せは変わらないだろう。

 良いか? ぜってー戦争だけは起こすんじゃねぇぞ。戦争が起きれば人類は終わりだ。何が何でも、オマエが声を大にして戦争を止めるんだ。出来なかったら、オレがオマエを張っ倒しに行くからな!


 アレク・デュ・トパーズ



 この寄せ書きを見てる君、幸せ? この寄せ書きを書いてる俺は幸せだよ。こうやって、ミユの隣にいられるんだから。だから、その幸せを永遠に続かせて欲しい。

 そのためには、争いごとや戦争を起こしちゃ駄目だ。神に人類を滅亡させられるから。だから、もし、戦争を起こそうとするものが現れたなら、絶対に止めて欲しい。権力がなくても、声がなかなか届かなくても、諦めないで。きっと実は結ばれるから。


 クラウ・デュ・サファイア



 今、あたしはね、争いのない世界で幸せに生きてるよ。それもそうだよね、王様が負の感情を抑え込んでるんだもん。あたしだけじゃない。世界中の人たちが笑って生きてる。

 その負の感情が、あと二日で解き放たれるの。事件や争いが起きるだろうって言われてる。でも、戦争だけは起こさないで。戦争を止めて。幸せに生きたいのなら、尚更だよ。良い? 約束だからね。


 フレア・デュ・ガーネット



 この前ね、エメラルドで地震が起きたの。それなのに、エメラルドの人たちは逞しく助け合って生きてる。私も今は幸せに暮らしてるよ。まだ迷いはあるけど、二日後には決まると思う。

 あの笑顔を見たからこそ、人々の幸せを踏みにじっちゃいけないって分かる。戦争は笑顔を消し去るの。命まで無に帰すの。それどころか、神様は戦争が起きれば人類を消すって言ってるの。どうか、貴方たちの力で、戦争を止めてください。貴方たちなら絶対に出来るから。信じて。


 ミユ・デュ・エメラルド


 * * *

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ