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【改訂版】呪いを解いた代償は、恋人の心でした~神に反旗を翻します~【第二部】  作者: 七宮叶歌
第22章 晩餐会

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晩餐会Ⅱ

「オレらが世界旅行に行くことを許可して欲しい」


 私が考えていた通りの言葉をアレクが放つ。途端に使い魔たちは表情を強張らせ、どよめき始めた。


「何言ってるんですか。城下町行きを許可しただけじゃ、足りないんですか?」


「アレだって嬉しかったさ。でもな、オレらが守ってきた民は自国の人間だけじゃねぇ。世界中のヤツらだ。オレらには世界中を見る権利があると思うぜ」


「ですが……」


 ロイは口ごもり、頭を抱える。


「城の中だけでも良いですか?」


 ロイに助け舟を出したのはカイルだった。アレクだけではなく、しっかりと私たちの顔を目で確認する。

 それでは、人々の生活は垣間見えない。首を横に振ると、今度はアリアが口を開いた。


「皆様が魔導師を辞めることは民に知れ渡っています。その中に飛び込めば……どうなるかは想像がつきますよね?」


 そうだ、そんな宣言もしてしまっていたのだ。魔導師を辞めないでくれと泣きついてくる民の姿は想像にかたくない。

 まんまと王たちに嵌められたようだ。唇を噛んでいると、クラウは大きな溜め息を吐いた。


「じゃあ、城だけなら許可は下りるの?」


「私たちが何とかしてみせます。ね、皆」


 カイルはアリア、ロイ、サラに目を配る。すると、その三人は大きく頷いてみせた。

 城にも行けず、ダイヤという檻の中で残り二日間を消費するよりはマシなのだろうか。私も深い息を吐き出してしまった。そんな私を見て、カイルは苦笑いをする。


「城の窓からも城下町を眺められますよ。それに、サファイア城では氷像祭りが開催されています。良い観光になるかと」


「あっ、もうそんな時期か」


 クラウは懐かしそうに目を細め、小さく笑う。


「俺の家も氷像作ってるからさ、案内するよ」


 思わぬ所でクラウの家族の一端に触れられるらしい。どんな氷像を作ったのだろう。少しだけ高まる期待に胸を膨らませる。

 フレアも氷像に興味があるらしい。僅かに身を乗り出し、クラウの方を見ている。


「氷像って、氷を削って作るんでしょ?」


「うん、そうだよ」


「綺麗なんだろうなぁ」


 フレアは目を輝かせ、ふふっと笑う。


「氷像も楽しみだし、プールにも入れそうだし」


「プール!?」


 私とクラウ、アレクの声が重なる。もしや、ガーネット城にはプールがあるのだろうか。楽しいに決まっている。


「ウォータースライダーもあった筈だよ。王族と貴族にしか解放されてないけどね」


「ウォータースライダーって、何だ?」


「大きくて、カーブがある巨大な滑り台だと思ってもらえれば大丈夫」


 フレアの返答に、サラは大きく頷き、クラウとアレクの顔が綻んだ。ウォータースライダーまで備えているなんて。楽しみが倍以上に増えたようなものだ。

 アレクは腕を組み、にやりと笑った。


「使い魔たち。ぜってー世界旅行の許可をもぎ取って来てくれ」


「はい! 任せてください」


 期待ばかりさせておいて、いざ蓋を開けてみれば世界旅行はなかったことに、なんて悲しすぎる。ロイの眩しいくらいの返事に、世界旅行が叶いますようにと願掛けするしかなかった。どうかこの世界を見るうちに、地球を選ぶのかスティアを選ぶのか、私の心が決まりますように――。

 心の中で唱えているうちに、食事は再開されていた。グラスには葡萄ジュースが注がれていく。


「カノン様と同じなら、ミユ様もお酒に弱い筈ですので」


 アリアは葡萄ジュースのボトルを手に、にこりと笑う。


「え〜? そんな所まで引き継がれるの?」


「はい。クラウ様とアレク様とフレア様も、しっかり引き継がれていますよ」


 確かカノンの頃は、彼女の歓迎会で酒を飲み、すぐに記憶が飛んだ覚えがある。同じく酒に弱かった過去を持つクラウはむっと膨れ、酒に強かった過去を持つアレクとフレアは小さく笑い始めた。


「神様も酷いよね。同じ分身なら、俺たちだって酒に強くても良いのにさ」


「サファイアとエメラルドが酒に弱ぇんだろ」


「良いもん。私十八歳だから、どうせお酒飲めないし」


「スティアは十八歳からお酒解禁だよ?」


 フレアの不意打ちに、喉が詰まる。クラウなんて、ステーキを一口放り込んだ。


「お酒なんて飲めなくても、どうってことありませんよ。会話で楽しみましょう」


 私とクラウを気遣ってか、呑気に言うアリアとカイルも葡萄ジュースを飲んでいる。テーブルを隔てて、酒を飲んでいる組と温度差が出来上がっていることに気付いていないのだろうか。

 とは言え、気にしていても仕方がない。私もステーキを皿に盛りつけ、口へと運ぶ。オニオンソースの香ばしい甘さと、バターの芳醇なコクが舌を満足させる。


「ミユ」


「何〜?」


 ステーキを飲み込んだ直後に尋ねてきたクラウに、ちょこんと首を傾げた。


「今日の夜も刺繍するの?」


「うん。出来るところまで進めたいの」


「そっか」


 何か夜に話したいことでもあるのだろうか。それなら刺繍道具を持って、クラウの部屋に行っても良い。そこまで考えたけれど、クラウは微笑むばかりだ。


「あんまり無理しないようにね」


「うん。分かってるよ〜」


 なんだ、あまり深い意味はなかったらしい。少し拍子抜けして、もう一口ステーキをいただく。


「そうだ、アレクにも相談があるんだけどさ」


 クラウは酒を飲んでも顔色一つ変えないアレクに、声量を上げて話しかけた。


「世界旅行に行っても、一日余るじゃん? だから、タイムカプセル埋めたいなってミユとフレアにさっき相談したんだ」


「タイムカプセル?」


 アレクは眉間に皺を寄せ、クラウを見る。使い魔たちも疑問を持っているような表情だ。

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