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【改訂版】呪いを解いた代償は、恋人の心でした~神に反旗を翻します~【第二部】  作者: 七宮叶歌
第22章 晩餐会

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晩餐会Ⅰ

 夕刻には使い魔たち四人が会議室に到着した。パーティをするために、わざわざ駆けつけてくれたのだ。アリアとハグをし、緑の髪を撫でる。


「まさか、こんなに早く会えるとは思ってなかった〜」


「言ったじゃないですか。『数日後にまたお会いする気もしますが』と」


「そんなの、ただの勘でしょ?」


 当たった方が奇跡だと思う。二人で笑い合い、アリアの両手を握った。彼女の笑顔は撫で回したいくらいに可愛らしい。


「んじゃ、使い魔はキッチンに来てくれ。パーティをするには、やっぱ飯がねーとな」


 アレクは使い魔に指示し、肩慣らしの腕を回す。もう少し、再会の喜びを噛み締める時間をくれても良いのに。私が口をへの字に曲げると、アリアは口に手を当てる。


「すぐに戻ってきますから」


「うん」


 手を振り合い、一時の別れを惜しむ。先に行ってしまったアレクと駆けていく使い魔たちを見送りながら、小さな吐息をついた。

 残されたクラウ、フレアと三人でいつもの席に着き、オレンジジュースに口をつける。そういえば、アレクが世界旅行を打診してくれるという話だったな、と思い出す。まだ行けるかどうか決まってもいないのに、胸が高鳴って仕方がない。

 

「ミユ、嬉しそうだね」


 向かいに座るフレアは、私の表情の変化なんて手を取るように分かるだろう。

 

「うん。アリアにまた会えただけでも嬉しいのに、世界旅行に行けるかもしれないんだもん」


「世界旅行かぁ。想像したこともなかったなぁ」


 フレアもうっとりしたように遠くの方を見詰める。


「俺もだよ。そもそも海を渡ろうなんてことも考えてなかったし。でも……」


 隣にいるクラウはにこっと笑い、私とフレアへと視線を移した。


「皆が育った国を見られるのは嬉しいし、興味がある」


 クラウの言う『皆』の中に私は入っていないのだろう。それでも、感じたことは同じだった。


「サファイアは雪国でしょ? ガーネットは常夏でしょ? トパーズは……秋の国、だっけ」


「そうそう」


 フレアの返事を聞きながら、頭を働かせる。トパーズだけ、どういう場所なのか想像がつかない。紅葉が舞っていて、建物は――やはり分からない。思わず唸り声を上げてしまった。

 クラウは小さく笑う。


「分からないことが多い方が、旅行は楽しいよ」


「そうなんだけど~」


 観光名所くらい知りたいものだ。写真があれば良いのにな、とどうしても考えてしまう。


「旅行もだけどさ。俺、他にもやりたいことがあるんだ」


「何?」


 フレアと一緒に、クラウに首を傾げてみせる。


「ダイヤにタイムカプセルを埋めたいんだ」


「タイムカプセル?」


「何のために?」


 魔導師を辞めてしまっては、世界とは切り離されたダイヤには来られない。埋める意味はないように思われる。


「多分、今世では掘り起こせない。でも、遠い未来に……もし戦争が起きたとしたら、また魔導師が生まれるかもしれないじゃん?」


 戦争なんて起きはしない。そう言い切れない自分が悔しい。現実に地球では戦争が起きているのだ。地球と同じ道へと踏み出そうとしているこの世界だって、負の感情が集まれば戦争は始まるのだろう。何も言えないまま、視線を落とす。


「その時に、希望になる何か、平和だったこの時代の何かを残したいなって」


「来世のあたしたちに、戦争を止めて欲しいっていうこと?」


「うん」


 私は神に『戦争が起きたなら、私たちが止めてみせる』と言ってしまった。その実行力をタイムカプセルに託そうというのだろうか。

 しかし、来世の私たちはきっと記憶を失っているだろう。神が『戦争が起きたなら人類を滅ぼす』と言ったことすら忘れてしまう。そして、タイムカプセルのことも。


「タイムカプセルのことなんて、忘れちゃうよ」


「だから、塔の俺たちの部屋に手紙を書き残すんだ。それを来世の俺たちが目にするのかは分からないけど、何もないよりは良いかなって」


「……そうだね。伝えよう。来世のあたしたちに」


 フレアとクラウに同意して、三人で頷いた。もし忘れてしまったとしても、戦争を止めるという使命を果たせるように。私たちが止めなければ、止められる者なんていないのだから。決意を固めるようにして、もう一口オレンジジュースを飲み込む。

 アレクたちが戻ってきたのは、それから三十分ほどしてからだった。手に持てないほどの料理が、魔法で宙に漂いながら現れた。テーブルに置かれていくのはヒレステーキや鳥の丸焼き、サーモンのカルパッチョやホタテのマリネなど豪勢なものだ。肉の焼けた香ばしい匂いに涎が溢れそうになる。


「さぁ、食おうぜ。もう腹がペコペコだからな」


 使い魔たちもそれぞれが主の隣に座った。準備は万端だ。


「いただきます」


 小さな呟きがクラウと重なる。


「その挨拶は、やっぱりミユ様から教わったんですね。スティアにはない文化ですから」


 クラウの隣にいるカイルは、にこやかに笑いながら私とクラウを見比べる。私が教えたというよりも、彼が覚えたに近い。「う〜ん……」と唸っていると、アリアは私の前に置かれた皿に手を伸ばした。


「ミユ様、どれをお召し上がりになりますか?」


「最初はサラダとカルパッチョにする〜」


「分かりました」


 慣れた手つきでアリアは料理を取り皿に移し、そっと置いてくれた。サーモンにはキャビアらしきものが添えられていて、宝石のオニキスのようにキラキラと輝いている。


「改めて、オレらから使い魔に頼みがある」


 アレクはステーキを一口だけ食すと、早々に話を持ち出した。きっと世界旅行の話だ。使い魔たちは了承してくれるだろうか。アレクと使い魔たちの顔を見ながら片手で胸を押さえる。

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